表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/12

三章以降


【リョクさんのいちだいじ】


「騎者どの、一大事である」

「なにが起きたの」

「いつも我輩に甘味を分け与えてくれていた、馴染みの菓子店が閉店していた」

「(こいつがタラしこんでる人間界隈の食料品店は多いんだよな)へー」

「なぜだ。大変美味なる甘味を製作する二本足が営む名店であったのに」

「最近不景気だかんな。そんなとこにまで余波が……」

「不条理である。あれほど親切且つ寛大な店主もいなかった。茶請けの時間に立ち寄るといつでも惜しげもなく売り物を無料で分け与えてくれていたのに」

「んー、人間さまの世界ってのはお人よしだけじゃ生きてけないかんな。要はやりくりじょうずになんなきゃ、店の経営は困難ってこと」

「く……これが人界の世知辛さか」

「まあまあ。リョクが悔やんだってしゃーないだろ」

「請われるがままに店に脚を運び、収益たる物品を貪取していたことが、我輩の落点である。無知は恥とはよく言ったものだ」

「(こいつの場合、人間側が進んでタラしこまれたがるのがタチ悪いんだよなー)まあまあしょうがないよ。知らなかったんだろ」

「我輩の更なる落点として、経営状態が悪いとも知らず軽口を叩いていたことも恥じるべき箇所である」

「軽口?」

「己の無神経さがつくづく悔やまれる。なんの気なしに零した言の葉が、如何に彼女の心を抉ったか」

「(やっぱりっちゅうか、店主は女かよ)どんなこと言っちゃったわけ?」

「あまりに美味だったゆえ、食するたびに少々大袈裟に褒め称えたのだ。我輩がもっと早く店の窮状に気づいていれば、まんじゅうの美味さに舌鼓を打ちつつ『これほど美味ければ次来るときにはいちどに百個ほど食したい』と零さずに済んだものを……!」

「あのさ、もしかして店潰れた原因、お前じゃね?」



※いくらとってもイケメンな霊獣が訪ねてきたとしても、お店の経営者としてタラしこまれすぎてはいけません


----------


※Twitterに載せたネタ



【エイプリルフールの騎者と騎獣】


「騎者どの、我輩は決意したぞ!脚についた贅肉を落とすため、しばし甘味は控える!!」

「ふ~ん。がんばれば」

「うむ……(´・ω・`)」

「自分のついた嘘に自分で落ち込むなよ」


---------



【もしリョクが甘党じゃなかったら】


第一章

「土産は皇柘榴がいいと、俺は思う」

「我輩は思わない。あの甘みと匂いは好ましくない」

~終了~


第二章

「食べてみる? 卵は入っていないみたいだし」

「結構だ」

~終了~


第三章

「せっかく買ってきてやったのに食べないのかよ」

「我輩はかのような目的で人界にいるわけではない。くだらぬ目先の愉しみなど不要」

「そですか」

~終了~


第四章

「おい、お前のせいで喧嘩になってるのに止めないのかよ」

「甘味になど興味は無い。それに人間に欲情されたとて意味は無いこと。我輩は(略」

「ソデスカ」

~終了~


第五章

「そこの胸部のみ無駄に膨らんでいる人間、同族に逢わせろ。それ以外に用は無い」

「嫌です」

~終了~

⇒第六章に続かない



「……うっわ~想像したらめっちゃ腹立つわ。リョクがお人よし且つ甘党でホントに良かった」

「騎者どの、先ほどから何を考えこんでいるのか。それよりも新作甘味を食そうぞ。売り切れる前に手に入れられた限定品ゆえ、きっと美味である」




本作は、主人公が甘党&甘ちゃんじゃないと進まない物語です



--------


【人界でのリョク】




 人間の界隈では、ほぼ代償無く食物を調達し得る。

「感謝する、娘御よ」

「あらやだ上手ね~~~も~~これもオマケしてあげるっ!」

「良いのか。娘御は至極優しき人間であるな。心より感謝する」

 我輩の人型外見が人間の雌と相性が良いのはどこの地域でも同様で、尚且つ霊獣に親切なものも探せば多い。素顔を晒したまま大きな集落内を歩くだけで人間は、特に雌はおのずと寄ってきた。その中で性交渉を望むものを断りつつ善意の種類を選り分け、その施しを受ける。心からの感謝を伝えるだけで大抵の雌は満足してくれた。特に、つがい持ちの雌ほど、食物を気前良く分け与えてくれる。「旦那とは別枠で若いイケメンは目の保養」とのこと。我が騎者どのは厭う傾向にあるが、一般的にはそう悪くない呼称のようだ、いけめんとやらは。

「娘御の作った加工食物は美味なる糧である、機会があらばまた訪れたい」

「本当、お上手なんだから~」

 そして人間で言う年配の雌ほど、娘御という呼称を喜んでくれる。我輩は特段気を遣っているわけではないのだが、彼女らからするとそういう言の葉が嬉しいらしい。



 我輩は一介の騎獣であるので「かね」は持たぬし施しを受けることに恥は無い。騎者どのに迷惑をかけず、人界で易く過ごせるよう、使えるものはなんでも使おうと思う。まして、人型は本性と違い腹を下すこともざらにあるのだ、自然区域内の食物だけではとても補給に及ばない。

(この世界は食肉の気配にさえ気をつけていれば、いずれも美味なるものが容易く手に入る。具材、調味料、工程が絶妙に組み合わさったものを食した際の感動は、良質の果物を綿密な算段のうえに採取し、ゆっくりと食する心地に似ている)

 達成感と満足感、双方を満たしてくれるものは偉大だ。やはり、一言に尽きる。


「人界の加工食物(甘味含む)万歳……!!」


 そんな我輩は騎者どのに言わせると

「おばさまキラーなタラシ且つ肉食な顔して草食なことやってる手作りマニアプチグルメなので主婦相手のヘルシー料理教室開けば儲かる系のタレント」

……なのだそうだ。意味はわからないが。





※リョクは百歳以下の雌はみんな『娘御』だと思ってる

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ