剣士
ここは、何も無い、真っ白な世界。あるのは、黒い線一本だけ。
そこに、白に棒人間(以下白棒)が立っていた。
しかしこの棒人間、背中に何か背負っている。
2本の黒い線が十字架のように交差している。
そう、剣だ。
どうやら、この棒人間は剣士であるらしい。
そいつが、背中の剣を抜き構えた。
相手を発見したようだ。
白棒の前には、怪物がいた。
棒人間よりもずっと大きな体はまるでトカゲのようだ。
白棒はこの怪物を討伐するつもりらしい。
先に動いたのは、怪物の方だった。白棒に向かって真っ直ぐに突っ込んでくる。
迫り来る巨体に対し、白棒は剣を構えたまま動かない。怯えて動けなくなっているわけでは無いようだが、体が少し震えている。
武者震いというやつだ。
突進があたる直前、大きく跳躍し避け、背中に剣を突き立てた。だが、棒人間の軽い体重では怪物にたいしたダメージを与えることはできないようだ。むしろ怪物を怒らせてしまった。
暴れる怪物の背中から振り落とされ、白棒はしたたかに背中を地面にたたきつけられる。
大きくバウンドし、何度もはねながら吹き飛ばされてるが、再び突進してくる怪物を確認すると無理矢理体制を立て直し迎撃する構えをとった。
下突きでは対応できないと学習した白棒は、ひたすら後ろに下がり逃げ続けた。あの突進をまともにくらうわけにはいかない、逃げの一手だ。
だが、怪物が突進してくるのに対し、白棒はバックステップなので、どうしてもスピードに差がでてしまう。このままだと確実に避けきれない。
白棒は、一度怪物をやり過ごすために先程よりも大きく跳躍し、怪物の頭を飛び越えた。そこで、相手を見失いキョロキョロしている怪物が目にはいった。どうやら、この怪物、あまり頭は良くないようだ。こちらに無防備な背中に剣を繰り出していく。
大きく振りかぶり、斜めに袈裟斬り、返す刃で横斬り、縦斬りと、攻撃を重ねていく。
さらに五回ほど斬りこんだあと、ようやくこちらを振り返った怪物は、怒りにただでさえ恐ろしい顔をさらにひきつらせ、荒い呼吸を繰り返している。
危険を感じて、白棒はその場から退いた。
瞬間、白棒の足下の地面が剥がれ、岩となって飛んできた。ひとつやふたつじゃない。
必死になって岩を避ける、避けきれないなら剣で斬るというように岩を避けるが、飛んでくる岩の量もスピードも上がってきて、どんどんきつくなっていく。被弾する回数も多くなっていく・・・。
そうこうしているうちに、岩が飛んでこなくなった。岩によって発生した土埃が止んだあと、白棒は顔をあげ━━━
驚愕した。なぜなら先程までいた怪物が姿を消したからだ。白棒は、空を見上げた。そこには。
龍、としか表現できないものがいた。
普通、龍になるのは蛇だというのが定説なのだが、この世界では常識など通用しないようだ。
白棒は、覚悟を決めた。
この"剣士"は、もうしばらく続きます。気が向いたら、続編を書くかもしれません。