俺は異世界冒険譚でまともなゲイムをしない
「みんなー、突然だけど王様ゲームしない?」
日本出身+宴会大好きな俺としては王様ゲームを一度でいいからしてみたいんだよね。
「王様ゲイム?」
今不思議そうにおうむ返しをしてきたのはアルゴ。
ほかのメンバーも紹介しておこう。
「アルゴ、王様ゲイムではなく王様ゲームよ。ルールはソラが卑猥なことをするゲーム」
「ええ、姉さまの言う通り・・・とは言えませんが王様の言うことは従わないといけないゲームらしいですよ。だから、大半は姉さまの表現であってます」
「あってないからな!?」
この姉妹そろって俺の心に傷をつけてくるやつらはアカとアオだ。
そして
「やっぱ王様ゲームと言えばポッキーゲームだよな」
「いや、一日アミさんとデート」
「しませんよ」
「冷静に返すのはやめてやれ」
変なことを言い出したのは元同級生のジン、自分の願望を丸出しにしたのが常連のロン、それに冷たく反応したのは幼馴染のアミだ。
今回は俺も含めたこの7人で進めたいと思う。
「それじゃあ行くぞ、王様だーれだ」
俺は、1番か。
「あ、私一番」
と言いながらアルゴが手に持っている割り箸をみんなに見せた。
そうか、最初はアルゴか。
「それじゃあ、1番の人が4番の人を殴る」
・・・・・・・・・
「「・・・・・え?」」
反応したのは俺とロン。
そうか、ロンか。
なら好きなだけ殴っていいかな?
覚悟を決めた俺はゆっくりとロンのほうに歩いていく。
「お、おい・・・冗談だよな。なんで笑ってるんだ?しかも超楽しそうだぞ!?おい、やめれー」
「くたばれっ!」
思いっきりみぞおちにパンチ。
ふう、こんなにすがすがしい気持ちになったのは何年ぶりだろう。
それじゃあ2回目。
同じやりとりはすっ飛ばすな。
「私ね」
割り箸を引き終わった後だ。
今度はアオか。
ん?アオの眼が少し変わった?
まさか、透視してるとかじゃないだろうな。
・・・ないよな。さすがに魔法がある世界だからって透視能力は卑怯だもんな。
「2番と6番が握手」
・・・俺の番号何番だっけ?
え~っと、そうかそうか9番か。じゃあ平気だな。
「姉さまとソラのはずよ」
「なんでわかるんだよ」
「なんでこんなことをするのかしら」
アカと二人でアオに近づく。
これは事情聴衆が必要だな。
「そのことについてはあとで話しますので握手をしてください。ゲームが続きません」
なぜかすごい嫌そうな顔をするアカと渋々握手。
さすがに俺でも傷つくよ。泣いていいかな?
というわけで3回目。
「俺だな」
やっと王様になれた。
さて、どうしようかどうしようか。
『緊急避難警報、緊急避難警報、村の近くにシュタインベルクが現れました。冒険者、または戦闘能力に自信のある方は討伐に向かってください』
「・・・行きますか」
「行くしかないだろ」
あれ?みんな行くみたいな空気になってるけどゲームどうするの?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・仕方ない、ちゃっちゃと終わらせるか。
シュタインベルクっていうのは犬型モンスターシュタインの亜種だ。
体の大きさや凶暴さが以前とは比較にならないくらいに上がっているから危険モンスターとして言われている。
実際に強いし、魔法効かないし、俺一人じゃ勝ち目ないんだよね。
ちなみに今の状況を実況しますね。
えー、アカとアオが突撃してます。
お、二人が取り出したのは鎖鎌。
シュタインベルクの前足、後ろ足が切り落とされました。
ふむ、動けなくなってますね。
ジン、ロンが追い付きました。おや?二人とも剣を抜かずに話してますね。あ、アオに殴られた。何やってんだあいつら。
「なにやってるの?あれは」
「さあ、何をやってるんでしょうか」
アルゴとアミは俺の隣で戦いを見ている。
アミは魔女と呼ばれる魔法を専門とする種族だから戦えないのは仕方ないけどアルゴは行けよ。
あ、そうだ。命令しよう。
「アルゴ、王様命令だ。貴様も戦え」
「え~?しょうがないなー」
あれ?なんかうれしそうだな。まさか、こんなもので喜ぶMだったのか?だとしたらもっとひどいことをしないといけなかったか?うん、どうでもいいな。
・・・あ、貴重な命令無駄にしちゃった。
どうでもいいけどシュタインベルクはアルゴが着く前に討伐されました。
そして後日談。
俺が王様ゲームで王様を引くことは一度もなかった。