止まった時計9
そっと食器棚に張り付く時計を見上げる。
10時10分。
まるで眉を吊り上げて怒っているかのよう。
私はそっと息を吐く。
いつの間にか増えたがらくたを寄せ集め、要不要を分けていく。
そっと、時計を見上げる。
捨てたりしない。
ただ、ニセモノのヒイラギの葉っぱ飾りを貼り付ける。
使ってない食器を始末しようかしら?
電話は数ヶ月鳴ることを忘れてる。
部屋で動くのは私だけ。
インスタントコーヒーと牛乳。
このふたつでしばらくは生きていける。
おかたづけ。
増えたものを捨てればいいわ。
新しいゲームも続けられない。
文字もただ流し読む。
動けない動かない。
そんな時間を過ごしてる。
カチリとあり得ない音が聞こえた気がした。
見上げても、10時10分。
私を見下ろす時計の表情は変わらない。
カタカタとベランダへ向かうガラス戸が風で揺れる。
今日も何も変わらない。