昔話の妖怪
ちょっとスピードアップ!恐らく!やっと物語が進む気がします!! それでは!不老伝続きです!!
その男見た瞬間、体が動かなくなった....
いや、動けない....そういう表現の方があっているかもしれない....
とにかく俺は、異型の手の妖怪の頭を掴み、口を三日月に歪ませている男を見て、全身が硬直してしまった....
『....ん?どうやら、羊が1匹迷い込んだようだな....』
そう言って、その男は妖怪を投げ捨て、俺の方へ顔を向ける。
正面を向いたことによって、より男の姿が見えるようになる。
その時、俺はその男の二つの部分に目がいってしまう。
男は少し長い黒髪で、和服を着ている。しかし、目が普通じゃない。
通常の白目、黒目が逆の反転しているような目だった。
それによく見れば和服もおかしい部分がある。
肩や袖等、和服の端が炎の様に揺れているのだ
いや、でもアレは炎じゃない....もっと禍々しいような....
「小僧、貴様どこから来た?」
「ッ!?」
気がつくと、その男はかなり近くまで来ていた。 この男は危険だ。本能がそう言っている。
俺は固まっていた体を無理矢理動かし、後ろにステップして刀を構える。
「ほぉ....危険察知はなかなかのもの....人の子が一人でこんな所にいるとは....珍しい
ーだがー
ドゴォンッ!
一瞬にして景色が飛ぶ
「ガッ....!?」
木に直撃してわかった。吹き飛ばされたのだと
それ程男の攻撃は恐ろしいほど早かった....
「やはり、人ではこんなもの....さて、このまま都市まで貴様を送ってやるほど俺は親切ではない。ここで、【殺す】としようか」
「なっ!?」
初めて言われる、本気の【殺す】....重みが全然違う。故に体中が震える
「くっ....来るなぁ....!」
精一杯力を振り絞り、拒否の意を見せつける。必死で逃げようとする。しかし、さっきの衝撃で肺の中の空気が全て外にたたき出される、声も掠れ、体も思うように動かない....
男がゆっくりと近づいてくる
「そう案ずるな、俺だって鬼ではない....一瞬で死ぬ。痛みはないさ....」
「やめろ...」
(クソ!.....なんでこんなこと....に!)
必死に頭の中で考える
どうすれば!生きられる!?誰かに殺されるなんて死んでもやだ!....俺は普通に死ぬんだ....!!
どうすれば!どうすれば!どうすr
「もう逃げ場は無いぞ?小僧」
「グッ!?」
男は俺の首を掴み、顔を近づかせてくる
あの反転目がより鮮明に見えてくる。なんて禍々しい色だ....見てるだけでおかしくなりそうな....
また意識が遠のいていく....
今日で意識なくなんの二回目かよ.....ついて、ねぇな....
もうダメだ、そう思った時だった。
「......貴様、その目は....フフフ....なるほど、この小僧を選んだというわけか....」
男はそう呟くと、俺の首から手を離し、一歩下がり始める。
(たす....かった....?)
「フム、今ここで実行してもいいが....一つ、賭けてみるか。成功すれば、俺の利益にも繋がる....」
男が俺の前に手の平を見せる
「小僧、今回は見逃してやる。貴様が死ぬか生きるかは....貴様次第だ....」
もう消えそうな意識を保ちながら聞こえてくる声。その直後、激しい歪みが俺を襲う
(なっ!?なんだ...これ....!?こっ、声が出ねぇ!?)
口が開く感覚はあるが、声が出ない。それに視界が狭くなっていく気がする
(やっべぇ....もう、耐えきれ....ねぇ....)
ギリギリ保っていた意識は一瞬で、また深い暗闇へと堕ちてしまった。
「人の子とは....また随分と軟弱な.... 貴様がどちらに傾くか、賭け事は久々だな」
静けさだけが漂う森の中、禍々しいという言葉が似合う男は、ひっそりと笑みを浮かべていた
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....る....
頭痛が酷い....
吐き気もしやがる....
....たる....
誰かの声が聞こえる....?
ほた....
ここは....一体...
「蛍!おい!」
「うわぁァァ!!??」
気がつくと、俺はベッドに横たわっていた。
何がなんだがわからない俺の耳には、千景の声が響いていた。
「おい!蛍!目ぇ覚ましたか!?良かった....!」
千景は起き上がった俺を見て、ホッと、胸をなでおろす。しかし、俺はまだ状況が把握出来ていなかった
「あ、あぁ....ここはどこだ....?」
「ん?あぁ、ここは軍事基地の一室だ」
「一室....? 俺....確か森の中にいたんじゃ....」
「覚えてないのか?お前、別の場所に出撃してた偵察部隊が草むらの中で気を失ってるホタルを発見して、ここまで連れてこられたんだぞ?」
そうだ....たしか、俺は崖から落ちて.....!!
「黒い男!!」
「うわぁ!!びっくりした....急に大声出すなよ」
俺の声にびっくりした千景が、文句を言ってくるが、俺はそんな事を気にしている場合ではなかった。
アイツは一体何者だったんだろう....今回は見逃してやる、と言っていた。助けてくれたのはあの男か....? いや、でも
「痛ッ...!」
しかし、頭痛が酷く、考える事も辛い....
「お、おい。大丈夫か?まだ寝ててもいいんだぞ?」
「いや、もう大丈夫だ....」
本当はもっとゆっくりしたい。最近していない散歩もしたいとこだ。ポン酢料理も食べてぇし....でも、妖怪の中にもあんな奴がいんのか....
自分がどれだけ弱いか知らされた感じだ....
このままじゃいつか殺されちまう。
時間がもったいねぇな....
「千景、今から綿月家の道場借りて練習するぞ」
「え?でもお前まだ体が....」
「そんな事言ってる暇ねぇっつうの、俺の体はもう大丈夫だ!ほらもたもたしてっと置いてくぞ?」
「おっおう!」
計画執行日まで時間がねぇ....取り敢えず、死なねぇぐらいには強くならねぇと....
子供まで戦場に出るたぁ、物騒な世の中になったもんだな....
俺は、少しでも力を上げるため、すぐさま綿月家の道場へと向かった
場所は変わって、綿月家の道場
俺は、組手をしながら千景に今日の出来事を話していた。
「その男って....呪いの妖怪の事じゃねぇか?」
「呪いの?あぁ、今日出撃する前に言ってたやつか。アイツが呪いの妖怪....」
あまり聞きなれない妖怪だ....そこまで有名なのだろうか?
「千景は何か知ってんのか?その妖怪の事」
「いや、そこまでだぞ?有名でもないし....なんつうか....昔話みたいなもんだよ」
そのまま千景は俺と少し距離をとってから休憩を勧めてきた。丁度疲れていた所だし、俺もその意見に賛成して道場の端の方で並んで座る。
すると、千景がさっきの続きを話し出した。
「なんでも、その妖怪は天照様というか....この世界に神様が生まれてから少しして生まれた妖怪らしくて、他の妖怪に比べりゃずっと長生きだって話だ」
「へぇ....大妖怪のレベルを遥かに上回ってんのか....」
妖怪は、長生きすればするほど力が増して長寿な妖怪は【大妖怪】と呼ばれる。 でも、神様と同時期に生まれたとなると、そりゃあもう長生きだ....考えただけでも恐ろしいこった
「でもまぁ、ただの伝説だよ。本当は強ぇ大妖怪なだけかもしんねぇしな」
そう言って、千景は横で笑い飛ばす。
俺の見たあの光景....伝説、という言葉で片付けて良いのだろうか....
しかし、アイツがその呪いの妖怪だとしても、そうじゃなくても、あのレベルの妖怪は実在するって事だ....
「なぁ、蛍」
俺が男の事を思い出していると、不意に千景が名前を読んでくる。
「ん?なんだ」
「お前さ、今日外に出て何か感じたか?」
そう言う千景の顔は、いつもの様な無邪気な笑顔ではなく、何か決心したような....そんな顔をしていた。
その顔の理由を知りたくて、俺は先に千景の意見を聞いた。
「お前はどうなんだよ」
「俺か?俺はなぁ、思い知らされたよ....」
「....何が?」
「中と外の違いってやつだ....」
千景は顔を少し上げて、更に語る
「今まで、のうのうと中で暮らしてきた。軍隊だって、最初は体を鍛える為って永琳さんに勧められて入った....戦場に出るなんて、あってもまだ先の事だと思ってたよ」
「.....」
「でも、月移住計画ってのが始まるせいで、子供の俺達まで戦場に立つことになったろ?だから、今日戦場に慣れるために外に出た」
確かに、俺達子供がいきなり戦場に立たされる事なんて想定もしてなかった。悪く言えば、お偉いさん方のワガママで始まった計画で、お偉いさん方が生きる為に俺達が駒となっているわけだ....全く、キッつい話だ。
「外は怖いな」
「....まぁ、そだな」
「中とは違っていつ死ぬかわかんねぇ。雑魚でさえも俺達二人係でやっとだ....殺される事もあるよな」
千景の言っている事は全部あっていると思う。俺達子供が一番死ぬ確率は高いだろう....
でも、俺は死にたくねぇ。誰かに殺されるなんて一番嫌な死に方だ。
取り敢えず、悲しそうな顔をした千景を元気づけようと声をかけようとしたその時、千景が顔を大きく上げ、口を開く。
「だからこそ!もっと強くならなくちゃいけないって思ったんだよ! やりてぇ事だっていっぱいあるしな、こんな所で殺されるなんてたまるかっての!」
その言葉を聞いた瞬間、俺は心が ホッ と落ち着いた気がした。 千景も同じ気持ちだった。
コイツとは、こういうところでよく気が合う
流石は千景だ、わかってんな
「俺もそう思うぜ、やりてぇ事も沢山ある。だからこうして今日も無理して練習してんだよ」
「あっ!やっぱりお前無理してたのか!」
「ん?別にいいだろ?こんなもんすぐ治るっての」
「別にいいけど、無理してると永琳さんに注射とか刺されるんじゃねぇの?」
「それは....やだな」
「「....ププッ...アッハハハハ!!」」
二人の笑い声が道場に響く。久しぶりに千景とゆっくり話せた気がした
俺達はその後も夢中で喋っていた。友達と喋るのは楽しいもんだ
「それで?千景がやりてぇ事ってなんなの?」
「俺?そうだなぁ....月見酒ってのをやってみてぇな!」
「あぁ、あの酒になんか、月を写して飲む....みたいなやつ?」
「そうそう!酒飲めるようになったらやってみてぇよ!」
「お前は....酒を飲むっつうか、酒に呑まれるっぽいよな」
「なんだとぉ!お前こそ....お前は強そうだな。酒に」
「なんでだよ」
「なんとなく?」
「なんだよそれ...フッ...」
「おい笑うなよ!....ププッ...あっそういやさ......
.........................
しばらくして、道場の扉が勢いよく開く
「ほったるぅぅぅぅ!!!!!輝夜様が迎えに来てやったわよぉ!!」
「輝夜ちゃん、わざわざ屋敷を抜け出してきたのよ〜」
入ってきたのは輝夜と豊姫、そして後から二人を追うように依姫が入ってくる
「待ってくださいよ!姉さん!輝夜ちゃん!」
どうやら、永琳に蛍を帰らせるように頼まれた依姫と豊姫が迎えに来たようだ。
しかし、肝心の蛍の返事が帰ってこない。
それもそのはず、
「あらあら....」
豊姫の目線の先には、壁にもたれながら並んで座りながら寝ている千景と蛍の姿があった。
「蛍寝てる!」
「こんな所で寝ては風邪をひいちゃいます!私、毛布を取ってきます!」
「輝夜ちゃん?二人とも寝てるし静かにしてあげてね」
「はーい」
そう言って豊姫はしゃがんで寝ている二人の顔を除く
「可愛い寝顔しちゃってまぁ....蛍君も悪口なんて言わなければもっと可愛いのに....ま、悪口言う蛍君もまた可愛いんだけどね♪」
そう言って豊姫は母親の様に二人の頬にキスをする
それと同時に依姫が毛布を持ってくる
「何やってるんですか!姉さん!キ、キスなんて....ハレンチです!」
「あら?いいじゃないのキスくらい。それにほっぺたなんだし」
「とっ!とにかく!もう二人を起こすような事はしちゃダメですよ!」
そう言い、依姫は二人にかかるように毛布を体にかける
「はいはい、じゃあ私達は先に戻っておくわね〜」
「じゃあね〜蛍〜」
そう言って二人は道場から去っていった。
「.........んっ」
少しジッとしていた依姫も、こっそり二人の頬にキスをして立ち上がる
「良い夢を見てくださいね」
そう言い残し、依姫も道場から去っていった。
「.....あんだけ騒いでたら起きるっつーの....」
ったく、人が寝てる間にキスなんかしやがって....今から洗いに行くのも面倒だし、もう一眠りくらいすっか.....
俺は頬に感触を忘れるためにまた眠りについた。
早く忘れてぇ....
いろいろと
end
さて、次くらいには物語進展出来そうですかね....!!
今回は初めて挿絵を入れてみました!下手ながらも!
ちなみに起きてる左の方が蛍で、寝てる右の白髪が千景です!