囮と人質と木々の犇めき
昨日更新する予定が大幅に修正して1日跨ぐことになるとは...
相変わらず文力の進歩はないのですが、どうぞ見てやってください!
「捕まるって、初めての経験だなぁ」
身体を少し揺らせばブランブラン....と左右に揺れる体。空を飛ぶってのはこんな感覚なのかな
いや、違うな。空を飛べたんならもっと自由だろう。自由の翼だろう
「おい静かにしろテメェ!」
自由だったらこうして怒鳴るやつもいないし
そう、つまり自由の反対。拘束。今、俺はそんな現状にうんざりしていた
しかも見張りが二人も
「俺何にも喋ってないんだけど。どのへんを静かにすればいいの?」
「そのブランブランをやめろと言ってるのだ!それやったら縄の擦れるギリリリ....って音がするだろ!目障りだ!」
完全にこっちが不利なのにいらいらする必要もないだろう。だいぶ神経質だな
「にしても、妖怪なのに大層なところに住んでんなぁ。俺なんか洞窟なのに、年季の入った木で出来てらこの建物」
それに今は、命の危険を何故か感じられない。囮と言われたからだろうか、他にお目当てが....万紅が来るまで俺は多分死なない。傷つけられるかはどうかは別として
単なる子供の屁理屈かも知れないけど....
それにしても暇だ。人型の妖怪の知能がどれほどなのか試してみようと思う
「目障りって....今俺アンタの高みから見下ろしてるんだけど、俺が目障りなら
俺を見上げるのやめてずっと自分の足元見てたらいいんじゃないの?」
何も出来ないようにと、足を地面につかせないように天井の木に括って吊らされて拘束されてる今の現状を挑発の材料に使ってみる。まぁ、こんな見え見えなのに引っかかるわけはないと思うが
「あぁ?てめぇナメてんのか?俺がジャンプすりゃ俺はテメェを超えられるんだぜ?だがお前はどうだ?もうそれ以上上には行けねぇだろ?つまり俺の方が上だ調子のんな!」
その時、俺は多分いいおもちゃを見つけたような顔をしてたと思う
久々にストレス発散できそうだ
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その頃、万紅達は草むらの中に身を潜めていた
(なんか、忍者みたいでドキドキすんな)
(ニンジャ?よくわかんないけど美味しそうな名前ね)
(なんでも美味しそうっていうよなお前は)
コソコソと会話をしながら少しずつ進んでゆく二人
(そうでもないわよ?現に、この....えっと、名前なんだっけ?マザコン?)
(雅彦だよ!)
(そうそう、貴方は美味しそうに見えないんですもの)
二人...いや、三人は着々と妖怪達の縄張りの中心に近づいていた
(あー、また見張りが5人もいる....)
(割とあれよね。数は多いわね。取り敢えずあの他と離れてる男から行きましょうか)
(だな)
最初の標的を決めたルーミアと万紅は身構える
ルーミアは小石を広い、指を弾いて敵に見えないように低空飛行で飛ばす
見張りの妖怪達を跨いで反対側の木に直撃し、少し大きな音を立てる
「うおっわッ!?びっくりしたぁ!」
「なに!?何事!?」
先程まで静けさがあった分、急な物音に五人全員の目線が一瞬そこに向く
(ナイス!)
瞬間、四人から少し離れた一人の妖怪に万紅が近づき、トントンと、肩を叩く
「あ?誰だッ.....かはっ....」
妖怪が振り返る途中で刀の柄の端を横腹に勢いをつけて当てて攻撃する
そしてそのまま倒れてくる妖怪の手をもち、背負投げのように茂みの方に投げ、万紅もそこに飛び込み、身を隠す
(ふぅ、気付かれそうになったぜ)
手の甲でかいてもない汗を拭う振りをする万紅。それをみてルーミアは呆れ顔で答える
(そりゃ肩を叩いたら気づかれそうになるでしょうね)
(いやぁ、行けるって確信してたけど流石に不意打ちは武士道が抵抗を....)
(不意打ちよりタチ悪いと思うけど)
さらに不思議なことに、どういう理由か見張り達は一人いなくなったことに気づかずまた立ち位置に戻る
(あいつらほんとに頭良いのか?気づいてないっぽいぞ)
(同じ妖怪として恥ずかしくなってきちゃうわね)
その現状に流石の二人も呆れていると、雅彦が口を開く
(コイツは....俺らの中で一番影が薄いんだ....でも、いつも目立とうと頑張って、よく頑張ったな....角田)
(......あ、あぁ....そうなのか)
こんな現状でこの微妙な空気
どう返したらいいのだろうかと、二人は思った
そんな二人のことを気にせずに雅彦は続ける
(なぁ、頼む!さっきのめっちゃ痛そうだったから、出来れば痛くしないでやってくれないか?俺ちゃんと道案内するからさ!)
(よし、わかった)
(そこをなんとか頼....え?わかったの?)
(おう!お前、思ったよりいいやつだな。仲間想いなのは嫌いじゃねぇよ。どうにか痛くせずに落としてみせる!)
(あぁ....ありがとう!旦那こそいいやつだな!)
敵陣地の敷地内で見張りから身を隠して茂みの中で繰り広げられるひとつのドラマ
いい事を言っているはずなのに、和解していい感じの空気のはずなのに
うつ伏せ状態の人間としゃがみ状態の妖怪を見て、ルーミアは何も言えることはなかった
(なにかしらこの現状)
流石にこの空気に耐えきれなくなったルーミアが、突然立ち上がり大声をあげ、見張りの方へ進んでいく
「あぁ!もう私にいい方法あるから!早く進みまくるわよ万紅!」
「ばっ、ばっかお前そんなデケェ声出したら....!!」
そう言って万紅も立ち上がり、進んでいった方を見ると、そこにはもう闇が広がっていた
そこから聞こえてくる悲鳴、悲しそうな声、エトセトラ.....
よくはわからないが何かしらやばいことが起きている事は万紅にも、雅彦にもわかった
そしてその闇が消えていき、見張り達は立っていた場所から動かず、そのまま倒れていく
「はい、完了完了!最初からこうしときゃ良かったのよ!多少強引だけど」
清々しい顔をして先程の万紅と同じようにかいてもいない汗を手の甲で拭う振りをする
(なにやったんだルーミア....!!)
(なにやったんだこの闇妖怪....!!)
寧ろ汗をかいていたのは男二人の方で、ルーミアが一体何をしたのか気になるが、聞くのが怖くて固まっていた
「あ、あのー、ルーミア?」
「ん?なぁに?」
「妖怪さんたちに、何したの?」
好奇心には勝てない
万紅は恐る恐るルーミアに聞いてみる
そんな万紅を見て雅彦が「すげぇっっ!聞きやがった!」みたいな顔をしていた
そしてそれに対する答えを、ルーミアは笑いながら答える
「どんな生き物も捕食者の前ではああなるのよ」
それを聞いた万紅は静かに気絶した妖怪立ちに憐れみの目を向けた
「お、おい闇妖怪!出来れば怖い思いもさせないでy」
「貴方は食べてもいい妖怪なのかしらね....?」
「すみませんでした姉さん」
(これが、妖怪社会で上下関係が決まる瞬間なのか.....こぇぇな)
万紅は妖怪達の世界が少し見えたような気がした。大変だな と思った
こうして、立場や関係がいろいろ変わった三人は順調すぎるくらいに着々と蛍の場所へ進んで行くのだった
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「んな事言っても俺結構天井間近だよ?思いっきりジャンプしてもアンタじゃ無理なんじゃないかなぁ」
「んだとぉ!?ならテメェに絶望を見せてやるよ!いぐぞこらぁ!!! ウリャァァァァァッッッーー!!!」
【バゴォォンッッ!!!】
万紅が進行し始めた頃、蛍を監視していたうちの一人が丁度天井に頭を突き刺していた
「あ、あわわわわ」
「フッ...」
あの後、見事蛍の挑発に乗せられて偉そうな妖怪が思いっ切りジャンプし、天井に直撃。
そのまま妖怪は頭から上が天井にハマって見えない状態でブランブランとぶら下がって気絶。そのまま落ちることはなかった
「はい、お望み通り俺より高いところから見下ろせてよかったねー。あ、でも高すぎて顔見えないやぁどんな顔してんだろぉ」
負けた様な言いぐさとは逆に、蛍の顔は完全に勝者の顔をしていた。
これが子供のする表情なのか、少し臆病な性格のため、見張り役として仲間に置いてかれた片方の妖怪は、自分の先輩の哀れな姿と蛍を見て怖くて震えていた
「おっ、おい!....人間!もう少しえっと、おとなしくできないのか...」
勇気を持って蛍に怒鳴る妖怪
しかし、相手が悪かった。
人間、しかも子供が吊るされて何も出来ない状態でも怖くて怖気づいてしまう程の臆病さ
だが、自分の生まれながら持つもので、この人間の子に対して、蛍は更に強く当たるだろう
うるうるとした瞳。綺麗に靡くさらさらとした肩くらいまである髪の毛。そして強調される胸。甲高い声
その妖怪は、魅子は女の子だった
「俺はテメェだけは許さねぇ」
「なななんでなのっっ!?」
更に震えが増し、振動している魅子
蛍は今すぐに距離をとりたかった。だがしかし、現状がそうはさせてくれない
縄はしっかりと結ばれており、手足も自由に動かせる状態ではない
蛍は彼女の方から遠のいてもらおう。いや、遠のかせようと思った
「早く俺の視界に入らないというか俺の半径50mには入ってくんな....さもなくば化けてでるぞ」
「ひいいっ!!え、ば、化けないで....」
肩を震わせて目に見えて怖がる様子を見せる。どうやら怖いものが苦手なようだ
それに気付いた蛍は思いつく
人とは、悪知恵がよく働く生き物だ
そして、その悪知恵がどれだけ恐ろしいものか...
「ひ、ひぃぃ....!」
妖怪の少女は知ることになる
「これは実話なんだけどよ....ある夜の日の事だった.....」
震えが更に激しくなり、もはや人の成せる技ではない。妖怪だが
「そう、ある男がひとりで、人気のない夜道をトコトコと歩いt『いいいいいいぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーッッッ!!!!!』うおおおぁぁっっ!!......るっせぇ...」
魅子の叫び声は綺麗な程に響き渡る。木々も振動して、耳を塞げない蛍は気絶するかと思う程に
「るっせぇぞ!魅子ッ!!集中出来ねぇだろ!」
やっと叫び声が静まったと思った所にまた別の怒号が聞こえてくる。
それと同時に、部屋の中に男が入ってくる
「ちゃんとポン酢派君を見張っとけっていったろ!誰が叫べっつったんだ?あ?」
「だ、だってぇ....総長ぉ...えっぐ、ひっぐ」
(あ、コイツ)
そう、先ほど蛍を背後から気絶させた妖怪の男だった。その男は《総長》と呼ばれていた
総長は魅子が泣き、もう一人の見張り役が天井に突き刺さっているこの現状。縛られている人間の子供の方が上から見ているようなこの現状に、動揺を隠すことは出来なかった
「なんだこれ」
そう呟いた総長は蛍に睨まれている事に気が付き、目線を移す
「貴様かポン酢派君。大人しくしてりゃ別に死なずに済んだのによ....まだ必要だから抵抗できないくらいに少し痛めつけるとするか...」
「おやおや、沸点が低いねお兄さん。なんかイライラしてんのかな...それかなんか焦ってるとか?」
『焦ってる』....その一言に少し眉を動かせる総長。そしてそっと片腕を上げ、鋭利に尖った爪を構える
「取り敢えず、黙らせるか」
そしてそのまま腕を振り下ろし、爪が蛍を引き裂こうとした瞬間だった
「ちょッッと遅ぇよっ」
《ボギッ》
それと同時に蛍を縛っているロープが括りつけられている天井の柱が折れ、そのまま落下し、攻撃を上手く回避する。
「なッッ....!?」
総長は驚いた顔をする。蛍は少し冷や汗をかきながら上手くいったという顔をしていた
蛍は落ちた時に尻餅をつき、痛みが走るお尻に手を当てながら起き上がりながら口を開いた
「痛ぅ....危ねぇ...年季入ってる木で出来てるから一か八かだったんだが....ギリギリ折れてくれたな....ずっとブランブランしながらギシギシいわせてダメージ与えてて良かったよ」
「ぐっ....」
「わぁぁ.....すごい...!」
「俺が大人しくしない理由がわかったろ。クソアマ」
敵という立場であるはずの魅子がキラキラと目を輝かせる。それに呆れながら馬鹿にする蛍
しかし、動けるようになっただけで、蛍はまだロープで縛られていて両手を自由に使えない。更に、折れ柱が重りとなっている状態だ。まだ妖怪側の方が明らかに有利のはず
しかし、総長は何故か焦っていた
(まだ奴は来ていない....現在地が特定出来ない.... )
汗が頬を伝う感覚を感じた総長は、ゆっくりと深呼吸をする。
「そういやよ、アンタ。何で片目瞑ってんの?俺襲った時両目開いてたよな?」
蛍の言う通り、総長はこの部屋に入ってきた時から片目瞑っていた。
何気ないその質問に答える気はなく、ぶっきらぼうに返事をする
「教える必要が無いな。とにかく、もう少し大人しくしてもらわなければ困るんだがな...」
はぁ...と溜息をつきながら頭を搔く総長。
そしてゆっくりと片目を開き、蛍を視界に捉える
「こっちだってもうちょい時間稼ぎしなきゃいけないんで」
お互い睨み合い、沈黙が続く
少しの木の犇めきが聞こえてくる
風の音も良く響き、それ以外はなにも動かなかった
強いて言うなら、魅子が静かに慌てているくらいだ
一瞬
空気が動き出す。先に動き出したのは蛍だった
総長の右側、つまり閉じている目の方の死角に蛍は回り込む
「くっ...のガキ...!!」
咄嗟に右に向き直すが、その時既に蛍は総長の背後を取っていた
更に蛍の重りになっていた木片を遠心力でぶつけ、折れ目が総長に突き刺さる
「ぐがッッッ....!!!」
「さっき思いっきり殴られた仕返しがやっとできた気がしたよっ....!!」
深くは刺さらず、少しの血が総長の脇腹から流れる
しかし、みるみる傷は癒えていった
「甘いなっ...少しはしゃぎすぎだッッ...!!!」
《ドガッ!》
完治した瞬間に総長は高速回転し、蛍を視界に捉え、片腕で蛍の首を掴み、そのまま壁に押し当てる
「がッッ...!!!?」
「貴様ほんとに子供かぁ....!? 年相応に見えない程よくやる...!!」
ギリギリと、強く首を捕まれ、
苦しそうに踠く蛍。しかしそれでも笑い、余裕を見せる
「さぁて....何歳、で、しょう....ぐッ..!!!」
蛍の態度が気に入らない総長は更に首を絞める
「ふっ、まぁいい....ここで意識を落として、静かにしてろクソガキ...!!」
「あわわわ苦しそうだよ!?この子大丈夫なの!?」
「お前はどっちの味方だ!?ちょっと黙ってろ!」
思いのほか蛍の味方のような発言をする魅子に一喝し、どんどんと手の力を強めていく
もう息が上手く出来ず、話す事も辛いはずの蛍が、掠れ声で囁く
「ま....もう出来ることは、した...し....大人しく....してるさ....」
そう言って、蛍は目を閉じて気を失おうとした。が、その言葉の意味を理解出来なかった総長は、手の力を緩め、尋問を始める
「急に素直になったな....出来ること?何をしたか知らんが、ここは森の奥深く....仲間の助けは諦めろ。頂上にあるわけでもない小さな小屋をそう早く見つけられるわけがない」
「俺がやったのは、現在地知らせたのと、時間稼ぎだな...」
蛍は魅子の方を向き、ニコッと笑う
「テメェの声よく響くよな。あれくらいなら森の中じゃいい目印になったさ。ご苦労さん」
「え、あぁあありがとう...///」
「何で嬉しそうなんだこら」
貴様はほんとにどっちの味方なんだ。と怒鳴る総長。
彼は焦っていた
閉じている片目に映る景色を見ながら
(まだ場所を特定出来ていない....完璧に奴の行動を捉えないと....! 魅子の声で今来られると.... )
ふぅ、と深く深呼吸し呼吸を整える総長
そしてまた、手の力を強めていく
「かッ....!!」
「どうであれ、貴様の意識は落とさせてもらう....囮として、もう暫く静かにしてろ...!」
壁に押し付ける力を強め、小屋の木々がキシキシと音を立てる
そんな中、魅子は不思議そうな顔をしていた。総長の言葉に疑問を感じたのだ
そしてその疑問を口に出そうとした
「囮....? 私が聞いたのって、人じ「おい」
その時、魅子の言葉を遮るように、蛍が押し付けられている壁の外側から声が聞こえた
「蛍の意識『落とす』前に、俺がテメェの首を『落として』やろうか?....なんてな」
直線、数本の斬撃がまるで図形を描くように壁に刻まれる
瞬間、その部分の壁は外に倒れ、砂煙が宙に舞う
外から、オレンジ色の括った髪の毛と黒い布が靡いている
状況を理解出来ていない妖怪ふたりを置き去りに、蛍は口を開いた
「よく聞こえたろ?ちょっと遅ぇぞお師匠さん」
その言葉に対し、煙から出てきた目に傷が入った男....万紅は答える
「あぁ。途中でナビも拾ったおかげで、
迷わず来れたぜ....!!」
ニカッと笑い、剣を掲げる万紅
彼の元気な声が今日も森に響きわたる
end
最近話の終わりの着地点を見失うことがよくあるので更にグダグダに!
でも、頑張りますw




