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東方不老伝 ~呪いを解く物語~  作者: ゼノマル
月移住編
14/19

負の永遠が始まる

シリアス好きだよ!好きだけど苦手、悲しいね

それではごゆっくりー

初めての事というのは、どうしても直ぐに受け入れる事は出来ない


嬉しい事でも、悲しい事でも、必ず戸惑ってしまう

そしてそれを受け入れるか、否定するか、それによってその後の行動が左右される




人は嫌な事があると、殆どが『否定』を選び、心に余裕が出来てから『受け入れる』


しかし、殆ど。と言ったように例外もある









静けさ。そんなものこの世に無いと言い張るような雨の音。地面は泥に変わり、落下した雨が飛び散って出来た水飛沫で視界が見えづらい。


そんな悪天候の中、蛍は目に水が入ってくる事をも無視して、目の瞬きをしていない。というより、忘れている



その前には、この土砂降りの中、服や髪が全く濡れてない異質な存在感を放つ妖怪がいる。

いや、濡れてはいる。しかしそれは雨ではなく、赤い血の色。それがさらに存在感を引き立たせる




「来たか、同胞よ」




もう既に身体を抉られて心に直接息を吹きかけられたような、真に来る声。


蛍はゾッとした寒気さを感じた。雨の冷たさではない。鼓動も早くなる。身体が言っている。血を巡らせ全速力で逃げろと


しかし、蛍はどうしても、逃げたくはなかった。どうしても確かめたかったからだ。

その、妖怪の前にある....見覚えのある服を....



こういう時、普通は落ち着いて喋らなくちゃいけないんだろう....だが、落ち着く事なんて、できるわけが無い



蛍は虚ろでありながらも妖怪を睨みつけ、震えた口で、「それ」を否定する為の言葉を聞くために....声を出した



「その服、誰の....」



そっと、しかし雨音に負けない怒りの篭った声が妖怪の耳に届く


妖怪は手を顎に当て、少し考えたような表情を浮かばせる。そしてすぐに口を歪ませ、静かに告げる




「白髪の小僧だ」




理解。そんな残酷な言葉と共に蛍の視界が霞んでいく




「ぅあ....あっぁ....ああぁぁああぁあぁあ.....!!!!」




辺りの音を一気に呑み込みかき消すような声を喉が壊れるほど震えさせながら無我夢中で出し続ける


蛍には分かった。『白髪の小僧』が 千景 を指すことを....



「雨音に負けず劣らずの怒号....というところだな。それが虚勢でなければいいがな...白髪の小僧のように」



ニタァ、と笑みを浮かべ更に追い打ちをかける妖怪

黒い眼差しが不気味な視線を蛍に送る



「嘘だ.....」



掠れた声が聞こえる。



「千景が....千景が死んだ.....なんて....」



ゆっくりと立ち上がり、歯を食いしばる蛍。その手には天斬を持ち、不器用に光を反射させる


まるで、蛍の心を映し出したようなその光は




「嘘に決まってるッッッ!!!」




一瞬、光を失って敵だけを見ているように、地面に線を描きながら妖怪へと向かっていった










_____________________



上層部には、既に何人かの兵士が帰還しており、遠距離での援護をしている。


まだ帰ってきていないのは南東側と、北側と、東側の数名だった


教官長は焦っていた。【呪いの妖怪が近くにいる】 それだけで戦線放棄をするのに十分な理由だ。そんな相手がいるというのに、まだ月へと発射できない事。それに不安を覚えていた



「只今帰還しました!南東側部隊です!」



そこに丁度南東側部隊が帰還してくる。教官長は不安が一つ減り、ほっとした。しかしそんな気持ちは完全に表に出さず、勇ましく、兵士が迷わぬように次の行動を的確に指示する



「お前達!良くやった。お前らは特に辛い戦場だったろう、ここからお前達も援護に回れ!残りの方角を担当している兵士が無事帰還できるようにな!」



「サーイエッサー!」



現状で有利なのはこちら側。このまま順調に進めることが出来れば問題なく月移住計画が終わる。しかし、教官長は気になっていた


北側で、呪いの妖怪の進行が止まっていることを



「ねぇ、蛍と千景は?」



ふと横を見ると、不安そうな顔の輝夜姫が一つの疑問をぶつけていた。


何故蓬莱山の姫様がこんな所にいるのか、すると前からは永琳が近づいてくる



「なっ、何故貴女方がこんな場所に!?早く月へ「そんな事はどうでもいいの。蛍と千景君が帰ってきてないのだけれど」



少し焦ったように永琳が問いかける。千景はまだ帰ってきていない北側。呪いの妖怪の事で気になるが....

そして蛍。蛍は南東側の部隊にいた。しかし、既に帰ってきている南東側に蛍の姿はない


教官長は南東側の隊長を問い詰める




「おい!南東側部隊!お前らの中にいた清瀬はどうした!?」




すると男は言いづらそうに口元を歪める。

何か言いづらい事が起きたのだろうか?なら尚更すぐに言えと、怒鳴ろうとしたその時、輝夜がもう一度質問する



「ねぇ、蛍はなんで帰ってきてないの?」



その姿に罪悪感を覚えたのか、男は口を開く



「清瀬のやつは、多数の妖怪が出現する少し前に、転送装置を使ってなかったので恐らく....北側に行きました....!」



「北側!?何故だ!あそこには呪いの妖怪が....! はっ! ヤツが進行を止めたのと何か関係が....」



悪い予感がする


教官長の悪い予感はよく当たる。今回もそれではないのか、それを確かめるために全てが分かる【北側】に連絡を取ろうとする



「取り敢えず蛍と、北側に無線を繋げろぉ!」
























あれからどれだけ進んだだろう....


蛍は何度も何度も刀を握りしめ前に走る。しかし妖怪の余裕の笑みを表すように足元の影が武器となって何度も吹き飛ばされる





「ガッ.....ああぁぁあぁ....」


「目が虚ろだな。必死が強さにつながる訳では無いぞ」



そう言ってまた影を自分の足元へと戻していく



蛍はボロボロの体を必死に立ち上がらせようとする。深い傷口からブシュウッと不快な音をたてながら赤い血が吹き出す。しかしそんな事も気にせず妖怪だけを見る



【ブブー!!】


「ッ!....」



突然、近くからバイブレーションのような音が聞こえる。その音で蛍は正気に戻る


当たりを少し見回すと、近くに誰かの無線が落ちていた。蛍は咄嗟にその無線に出た



「もし...もし...」


【蛍か!?お前どこにいるんだ!】


「北側っす....」



教官長の声を聞くも、心が無いような冷たい応答をする蛍。しかしそんな事は気にせず教官長は蛍に問う



【今の現状を報告しろ!直ぐに転送装置を作動できる状況か!?】



蛍はその言葉に従うように、ゆっくりとあたりわ見回す



「血だらけで....5人死んで....て....千景が....千...景が....」


【もういい!落ち着け!もう分かった....誰か生存者はいないのか?】



蛍の言葉で何があったのかを理解した教官長は、蛍を落ち着かせようと話を切り替える


近くに倒れている定想隊長を見て、更に心が暗くなる蛍。しかし、微量ではあるが呼吸の音が雨音に紛れて聞こえる。


それは定想から聞こえたのだ



「いや....もうみんな....あっ、生きてる....定想隊長....まだ息、あります」


【本当か!?なら転送装置は無事か!?】



教官長は定想の転送装置が壊れていなくて、二人とも帰ってこれる方にかけたが、それは無残にも散る。倒れている定想の近くには粉々になった転送装置の破片が散らばっていた。




しかし、蛍は嘘をついた





「あります...転送装置」



【良し!なら早くそれを使ってお前らも帰ってこい!】



そして蛍は教官長に言われた通り【自分の】転送装置を作動させ、定̀想̀だ̀け̀を̀転̀送̀さ̀せ̀た̀



定想だけが転送されてきたことに疑問を抱いた教官長は蛍に問う



【どうした...? 早くお前も帰ってこい!直ぐに月へ「行きません」....は?】



「俺には転送装置はもう残ってません....もう使いました」



一瞬、蛍が何を言っているのかわからなかったが、それをすぐに理解する



【お前....馬鹿野郎ッ!!何やってんだ!! 自分のを定想に使ったのか!?それではお前が帰ってこれないだろう!!!】



無線から聞こえてくる懐かしいクソ教官の怒鳴り声。蛍にはそんなものはどうでも良かった



【もういい!とにかく走ってでも帰ってこいッ!!お前じゃ呪いの妖怪は倒せんっ! 幸いにもまだ死人は数名だ!お前まで死ぬんじゃない!】



「うるせぇ....」



蛍は覚悟していた。

何もかも捨てる事を


無線に向かって蛍は叫ぶ



「うるせェクソ教官!!生きてる方が多いからって幸いとか言ってんじゃねぇ!! 人が死んでんだぞッッ!! 五人だろうが何だろうが死んだ事には変わりねぇんだッッ!!!大丈夫なわけねぇだろ!!!」



【ッ......】



初めてなのかも知れない。直接《クソ教官》と呼ぶのは....

蛍の怒号は、上層部にいる永琳や輝夜にも聞こえるほど大きかった



【蛍?何をやっているんですか!?一体そっちで何が....!】



無線から依姫の声が聞こえてくる



【蛍!!ずっと待ってるんだよ!早く帰ってきて!】



輝夜の声も



【話は後で聞くから、今は逃げる事だけを考えなさい!】



豊姫までいんのか....

何で俺を待ってるんだか....


でも、無理だ



【蛍、みんな待ってるのよ....? 早く帰ってきて】



永琳もいる。皆が帰ってこいって言う....



「変わって」


【....え?】


「教官に変わってくれ....」



永琳はその言葉が何を意味するのかもう分かっていた。だから、変わりたくなかった。しかし、教官長は永琳から無線を取り上げ、落ち着いた声で話しかける



【蛍....すまなかった。お前は、決めんたんだな】


「.....はい」



【ちょ、ちょっと....何言ってるんですか?】



依姫が話の意味がわからず、戸惑っている。しかしそんな事を無視し、会話は続く



【お前は最後まで似ている。兵士としても、人間としても、自分で決めるのは....いい事だ】


「ありがとうございます」


【クソ教官か....憎らしい呼び名だ....なら、後は任せたぞ】


「ロケットを....発射させてください」



蛍の言葉を聞いた永琳達は焦った。今すぐ教官長から無線を取り上げて、蛍を説得しようとした。しかし、教官長は渡さなかった



【たった今、他の部隊が帰ってきた。すぐに出発する....健闘を祈る!】



それを最後に、無線は切られる。そして後ろからジェット音が聞こえてくる。後ろを見ると乗るはずだったロケットがゆっくりと地球を離れていく光景がそこにあった



「自分の命を捨てて他人を助ける....実に人間らしい考えだ」



前を見るとすぐそこに妖怪はいた。



そうだ....俺はコイツを殺す...じゃないと、そうじゃないと 【安心して死ねない!】



「俺は人だ....だから、仇を取るんだ...!!!」



そうしてもう一度刀を振るう。しかしさっきと同じように影が起動を塞ぐ



「そんなナマクラで何が出来る?....ッ..貴様目が」



一瞬妖怪が驚いた様な顔を見せる。その瞬間、刀が影を超える感覚を実感した。蛍はそのまま勢いに任せ刀で斬り掛かる



「なっ....」



それは見事に妖怪の顔に切り傷を付けることに繋がった


このまま押し切るッ!!


自分の刀が通用する事が判明した事に勝機が見えた蛍はもう一度刀を横に薙ぎ払った





しかし、それは逆だった

刀を振るった逆方向に蛍は吹き飛んでいた



そのまま木に叩きつけられる



「ガハッ!?...あぐぁ...」



直ぐに立とうとした蛍。しかし立ち上がれなかった

さっきまでは打撃の痛みだけだった。だから直ぐに立ち上がることが出来た


しかし今度は別の痛みが襲ってくる

蛍の腹部が横に一直線に裂かれていた


そこからドプドプと、大量の血が流れていく



「あっ...あぁぁアァああぁぁぁあァぁ!!!」



想像以上の激痛。気を失った方が楽だと思うくらいの、直接火で炙られているような熱い痛みが襲ってくる



「それが血だ、そこの五人はそれをいっぱい流して死んだんだ.....わかるか、それを流してる貴様にも近づいているということだ。死の時が...フフフ、まさか人の子に切り傷を付けられるとは思わなかったぞ....」



蛍に比べるとちっぽけに見える顔の切り傷。そこから滴る血を指ですくい、舌で舐めなが妖怪は言う



「フム....流石は、と言ったところか....面白くなった。俺が賭け事が好きで良かったな。もう一度だけ、掛けてみることにするか」



蛍は激痛に耐え、妖怪の言葉を聞きながらも抵抗しようと、うつ伏せのまま、片方の手を伸ばす



「少し動くな」



妖怪が蛍の刀を拾い、そのまま伸びた手の甲に、地面に釘を打つように刺す



「あがっ....がぁあぁ....!!!」


「その精神力、人かどうか疑ってしまうな....」



妖怪の手には黒い煙の様な塊が出来ていた。そしてその手でそのまま蛍の頭を掴む


瞬間、頭が押し潰されそうな頭痛が蛍を襲う。



「いっ、痛い痛い痛い痛い痛いッッッ....あぁ!...」


「なに、ちょっとした隠し味だ。俺は味にはうるさくてな。【不老の呪い】をかけさせてもらった....」


「不....老....?....て、テメェ....」



蛍にとって最悪の言葉が聞こえてくる。戦いで勝てなくても、必死に言い返そうとするが、痛みで声が出ない



「貴様の両親は不味かったからな....念の為だ」


「りょ....両親....!?」



自分の親を殺した妖怪が目の前にいる。更に怒りがこみ上げてくる。殺したい、殺さずにはいられない


だが、段々と視界がぼやけていく。



「では最後に、貴様のこれからの人生を決める事になる【貴様自身】の事を....教えてやる」



そう言言って妖怪は背を向け、口を開いた




「貴様の祖先は俺と同じ《呪概妖怪》」




「.......ッ!?」




「そして、俺の名は、《八咫》だ....」






自分の名を名乗り、その妖怪....八咫は灰が散っていくように姿を消した



残ったのは、崩れた都市と蛍だけだった



蛍はまた泣いていた。今度は、泣きやもうとしても止まらない厄介な涙だった。


悔しい、絶望、不幸、そんな感情が埋めく中、蛍は思った


それを俺に言ってどうしろってんだよ.....殺しに来いって事かよ..... 言われなくても、俺は、




絶対に....殺しに行く....



「八咫......ァ....」







そのまま、俺の意識は暗転に落ちた














こうして、後に【人妖大戦】と呼ばれる大きな戦いは、一人の少年を地に残し、人間の勝利という形で幕を降ろした












月移住編 end

うーん、やっぱり文力が悲しい....これからとは頑張って少しずつ上げていきます!だから、暖かい目で見守っててください

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