第5話 その2
いつも割とそんな感じな気もしますけれど、最初と最後以外ストーリーに殆ど関係ないので読み飛ばして貰っても結構です。まぁこの小説、ノリが全てなんでストーリーとかどーでもいいんですけど。
部屋でわたしを待ち構えていたのは、茶髪でアンバーの瞳を持つ少女と、金髪ツインテの童女と、そして黒髪ぱっつんの幼女でした。
「……む。何故かこの世の理不尽を感じる」
「いきなり変な事を言いますね。厨二なのですか?」
「……私は高1。中二じゃない」
「あ、はい」
そういう意味ではないのですが……。というか、まさか年上とは。
年上幼女ですか。
いい響きです。
「ちょっと、抜け駆けするんじゃないわよ! 雑談なら自己紹介の後でしなさい。という事でアリス、お願い」
「うん、分かったよ。初めまして、あたしは七城アリスって言うの! 日本人とアメリカ人のハーフで、死んだ時は14歳だったかな。だから、今のあなたと同い年だね。ちなみに、死因は一家心中だったの……」
「で、私がジゼル=ド=ブルゴーニュ。フランス人よ。死んだ時は13歳で、死因は、その……。ギロチンだったわ」
「……私は霞野すすき。日本人。図書館に居たら地震が起きて倒れてきた本棚に潰されて死んだ。本望だった」
「あ、はい……」
自己紹介が重い。ちょっとわたしには返球出来なさそうです。
デッドボールで退場したいのです。
ちなみに、一応言っておきますと、茶髪の少女が七城アリス、金髪ツインテがジゼルなんちゃら、そして黒髪ぱっつんが霞野すすきというラインナップになっております。
「というか、何故自己紹介で死因なのですか……。趣味でも好きな食べ物でもなく」
「だって、死因って私たちのアイデンティティみたいなものじゃない?」
「性別、国籍、そして死因が、あたしたち亡者の三大アイデンティティと言われてるね!」
「誰が言ったのですか、それ……」
「でも、ほら……。何か凄い死因を持つ亡者だと、やっぱり尊敬しちゃうじゃない」
「恋人を通り魔から庇って死んだとかだと、こう、キュンとくるものがあるよね」
「……私は笑われてばかり」
「あら、いいじゃない。面白くて」
「……このロマンを理解出来ないとは」
「何がロマンよ、この変態」
「……む」
「……ぐふ」
「何であなたまで反応してるのよ……」
「い、いえ……」
我々の業界ではご褒美です、なんて思ってる訳では無いのですよ決して。
「でもたとえ死者の間で死因が重要視されているのだとしても、ぶっちゃけまだ生きてるわたしがにはどーでもいいので、趣味とかスリーサイズを教えて下さるほうが助かるのですが」
「しれーっとセクハラ発言してんじゃないわよ……。で、えーと、趣味? そうねぇ、生前は跪かせたメイドの頭に大量の金貨をぶっかけて必死に金貨を拾い集めるメイドを足蹴りにしながらぶどうジュースを飲む事が趣味と言えば趣味だったわ」
「見事なまでの成金貴族っぷりですね……。ワインじゃなくてぶどうジュースな所で子供らしさを演出して邪気を薄めている所が憎めないのです」
「あたしはニセ札を大量に印刷してそれらを慈善活動のフリをしてホームレス達に配って、後にホームレス達が警察に逮捕されたというニュースを見て自室でほくそ笑むのが趣味だったかな!」
「おぅふ……。これはフォローの仕様がない程の外道なのですよ。この流れで行くと、すすきはもっと酷い趣味を」
「百合小説」
「……お?」
「百合小説」
「……ほう。ちなみに、好みの作者は居ますですか?」
「……中山可穂。あの人の小説は、何というか、熱量が凄い」
「ふむふむ。中山可穂ならば、わたしは弱法師という短編集に載っている『浮舟』という小説が一番のお気に入りなのですよ。文章から漂う冷たくてダウナーで、それでいてどこかロマンティックな雰囲気が堪らないのです」
「……ん。重々しいけど否応無しに惹きつけられる。まさに麻薬」
「然り。あなたとは何だか気が合いそうなのですよ。これからどうぞ宜しくなのです」
「……ん」
がしっ。
「て、あれ? 佳代ちゃんのパートナー、いつの間にすすきちゃんに決まってない?」
「ち、ちょっと、早過ぎよ!! 私達、まだ出会って10分も経ってないのよ?!」
「別に、そういうつもりで言った訳ではないのですけれど。というかそもそも、皆さん何でわたしのパートナーになりたいと思ったのです?」
「だって、楽しみたいじゃない。学園生活。あたしが生きてた頃は、まだ学園なんて存在しなかったし」
「私も、前世ではまともな学園生活を送れなかったしね。その、虐められてて……」
「そ、そうなのですか……。ならば、すすきはどうなのです?」
「……百合の波動を感じる」
「なるほど」
「なにが『なるほど』なのよ……」
「で、でも、実際どうなの? ほら、昔のエス小説みたいな、スール制とか、『ごきげんよう、お姉さま!』みたいなアレとかって実在するの?!」
「残念ながら、今やそれは二次元の産物に過ぎないのですよ。今の女子校と言えば、形だけは女の子のオッサンが堂々と跋扈しているものなのです。パンモロだって何のその、なのですよ」
「うわぁ……」
「お主だったら、『我々の業界ではご褒美です(キリッ』とか言いそうなもんじゃがの」
「居たのですか、リヒテンシュタインさん」
「今話の初めからずっとおったわい……。ただ、お主達の会話に入れそうになかったから様子を見ておっただけで」
「若者の会話についていけずただ愚痴を零すしかない老人の図」
「お主なぁ……!」
「は、はいはい、皆さん落ち着いて」
入り口付近で所在なさげに突っ立っていたクソガリ鬼畜メガネが、ここぞとばかりに場の収拾を謀り始めました。一度話の流れをぶった切ったリヒテンシュタインさんに便乗してしか場に介入出来ないビビり野郎め。地獄を束ねる筈のこいつがこんな体たらくとは、わたし様ほんとにがっかりです。
「……何か、僕に対して当たり強くなってないですか?」
「仕様なのです」
「は、はぁ……。ま、まぁそれは置いといて、自己紹介と終わったようですし、次の企画に移りましょうか」
「次の企画、です?」
「ええ。題して、『私をパートナーにしたらこんなにいいコトがあるのよ? 見ててね、未来のご主人様☆』企画〜! ど、どんどん、ぱふぱふ〜!!」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……泣くくらいなら言わなければいいじゃろうに」
「さ、作者様からのご命令ですし……」
「……まぁ、何じゃ。元気出せ」
「……ぐすっ」
ぐするクソガリ鬼畜メガネをリヒテンシュタインさんがあやしている光景を見ながら、野郎の涙に価値は無いんだなぁとあはれに思ふわたしなのでした。
どこからか持ち込まれてきた移動式のホワイトボード。その前に何故かレディーススーツと黒縁眼鏡を装着したジゼルがマーカーを握り締めながら立っています。フォーマルなスーツはわたしより更に年下のジゼルには全然似合っておらず、子供が精一杯背伸びしている感じが微笑ましいというか、身ぐるみ全部剥ぎ取って押し倒せばもっと恥ずかしそうな様子を見せてくれるのかな、とか。……おっと、つい心の声が。
ちなみに、服装は念じるだけでコンマ1秒で切り替わっていました。着替えというお色気シーンを剥奪するとは、作者は頭がイカれているのでしょうか?
「……それではジゼルさん、お願いします」
「ええ、分かったわ。私をパートナーに選んだ場合のメリット、よね? そんなの、決まってるじゃない」
そう言って、脚をちょっと広めに開き、左手を腰に当て、右手に持ったマーカーをビシッとこちらに突き出してくるジゼルさん。俄然ツンデレっぽさが増しました。やはり金髪ツインテはこうでないと。
「こんな美少女をパートナーに出来るのよ? ご褒美でしかないじゃない」
「……」
「……えっ、終わりですか?」
「ふむ、真理ですね」
「お主?!」
「だが、まだ少し押しが弱いのです。もっと追加のオプションを希望するのです!」
「踏んであげるわ。素足で」
「もう一声なのです! ちょっとツンデレっぽさを混ぜる感じで!」
「なら、言葉責めも混ぜてあげるわ。そうね……。『あら、私に踏まれて喜んでいるの? とんだ変態ね、あなた。そんなあなたを外の世界に出すのは可哀想だから、私がここで飼い殺してあげるわ。感謝しなさい? 私に対する感謝で咽び泣きながら、私の御足を舐めなさい? ……ふふっ、それでいいのよ、所詮あなたは家畜以下の存在なの。そうやって地べたに這いつくばって私の足に縋るのがお似合いだわ。あら、勘違いしないでくれる? 私、あなたの事なんて何とも思ってはいないのよ? ただ、そうね……。あなたがもっと私に遜れば、誠心誠意私に屈服して仕えれば、ちょっとだけあなたを可愛がってあげない事もないわ。まぁ、せいぜい頑張りなさい?』こんな感じで、どう?」
「お、おおおおお、いい、いいのです!! わたしの世界がまた広がりそうなのです!! ……ち、ちなみに、ちょっとだけ可愛がるって、どんな感じなのです?」
「そうね……。逆に、あなたは何をして欲しい?」
「そ、そうですね……。まず、わたしの両手を雁字搦めに縛って下さい」
「……それで?」
「そして、わたしの脚を少し開いた状態で固定した後、あなたの脚を脛から膝裏、そして太ももへと徐々に這わせていって……」
「最後に、あなたの××××になった×××を×めてやればいいのね?」
「あああああああ、そ、そんなの、そんなの……っ!!」
「うふふ、安心して頂戴」
ジゼルがわたしの耳元にぐいっと顔を近づけて、熱い吐息を吹きかけながら言いました。
「あなたのその願望、私がぜーんぶ叶えてあげるわ」
「あ……あ……あ、あ、あ(パタリ」
わたしはそのまま意識を失いました。
「って、おい、お主?!」
「いい笑顔で気絶してますね……」
「というかここ、どっかの風俗店じゃったっけ?」
「一応地獄、なんですけどね」
第1話者、ジゼルのプレゼン。主人公の脱落により、敢えなく終了!
〜30分後〜
「……アリスさん、お願いします」
「う、うん……。えっと、あたしをパートナーに選んだ場合のメリット、なんですけど……」
「なんですけど……?」
「……ぶ、ぶっちゃけ、分かりません!」
「「えっ」」←野郎&老婆
「ほう?」←わたし
「だ、だってあたしなんて所詮何の取り柄もないゴミカスだし、そんなあたしが佳代ちゃんにしてあげられる事なんて何も思いつかないし、寧ろあたしなんか佳代ちゃんにメーワクばかりかける事になりそうでデメリットの方が大きそうだし、でもそんなあたしでもいっぱしの学園生活を送りたいという欲望は持ってるもん。けどそもそもこんなゴミクズがいっぱしの欲望を抱いてしまう事がそもそもの間違いなのかなぁ? わたしはやっぱり誰にもメーワクをかけないようにひっそりと隠れながら暮らしてゆくべきなのかなぁ……?」
「……ア、アリスちゃん?」
「お、おい……?」
「でもあたしだって幸せになりたいもん。ゴミクズにだって幸せを願う気持ちもあるもん。でも人間って不平等だよね。所詮あたしが異端だったんだ。あたしだけが悪かったんだ。だからみんなあたしを虐める。あたしを殴って、唾を吐きかける。あたし自身に原因があるって事は分かってた。でも、それがどうしようもない、変える事の出来ない現実だって事も分かってたの!! ねぇ、あたしはどうすれば良かったの? 全てを諦めてしまえば良かったの? でも、でもね……。そんなの、絶対嫌だったんだよぉ……」
「……アリス」
「ふぇっ?」
わたしは静かに泣きじゃくるアリスを、黙って抱きしめます。
「別に、わたしはアリスにメーワクをかけられても怒らないのですよ?」
「えっ?」
「というか寧ろ、わたしの性癖のせいでアリスの方にメーワクばかりかけてしまいそうですしね。なにせわたし、あのアンタッチャブルの実の娘なのですし」
「……あはは、そうだったね」
「わたしの家庭はどう考えても普通の家庭とはかけ離れています。且つわたしの性格も、極端に場の空気が読めないかったりするし、あとレズビアンですし、わたしはどこに行っても偏見に晒され続けました。そんなわたしに友達が出来る筈もなく。わたしはいつか、周りの人間全てを見限り、徹底的に無視するようになっていたのです」
「……」
「……あれ、儂には割と普通に接しとらんかったか?」
「だって、どう考えてもあなたはかなりの変人枠に収まる人間でしたから。同類なら、遠慮する事はないかなと思いまして」
「ど、同類……」
リヒテンシュタインさんは何やらショックを受けているようでしたが、わたしは気にせず続けます。
「でも、わたしだって友達が欲しかったのですよ……。同年代の、一緒に遊んでくれる友達が。クラスで楽しそうに騒ぐ他の子たちを見るたびに、もう哀しくて、寂しくて」
「……うん。分かるよ、それ」
「だから、アリス」
「ふぇっ?!」
「わたしは、アリスがわたしの友達になってくれたら、それだけで嬉しいのですよ」
「う、うん……」
「ねぇ、アリス」
わたしはアリスから一度身体を離し、アリスのアンバーの瞳をじっと見詰めます。見る角度によってほんのり色合いを変えるその瞳は、まるで宝石のように美しくて。
「……アリス、わたしと友達になってくれませんか?」
「……うん、うんっ!」
アリスはわたしの身体に勢いよく抱きつき、そのままわたしの胸の中でぐずり始めます。涙目やら何やらがわたしの服に染み込んで少々不快感がありましたが、まぁいいかぁと嘆息。左手で彼女の背中を撫でながら、もう片方の手でアリスの頭をぽんぽんと撫でます。
……ふふふ。これで、もう友達ですね。
「……イイハナシダナー?」
「……いい話、なんでしょうけど」
「何か、釈然としないのう……」
〜更に30分後〜
「……次、すすきさん」
「何か、どんどん紹介が雑になっとらんか?」
「気のせいですよ。では、どうぞ」
「……ん。では最初に、佳代」
「はい、なんでしょう」
「あなたにとって、百合とは?」
「……ほう、わたしに百合談議を仕掛ける気なのですか? いいでしょう、受けて立つのですよ。わたしにとって百合とは、神聖不可侵なこの世の大原則なのです」
「……ふむ、それで?」
「わたしにだって百合よりヘテロの方が一般的だという自覚はありますから、ヘテロそのものを貶め否定しようという気は毛頭ありませんし、百合作品に男が介入する方が寧ろ自然だとも思うのです。それでも、最後は何があっても女同士が結ばれるべきだ。だってそうじゃないと、それは百合とは呼べませんから。百合要素があるにも関わらず最後はヘテロ同士が結びついて終わるような作品は、ただの一般作品なのですよ。百合作品とは呼べないのです」
「……でも、そもそも百合作品に男というファクターを持ち込む必要がある?」
「と、いいますと?」
「小説というものは現実ではない。作者の思い通りに登場人物も世界観も構築出来るの。だからストーリーに男というファクターを登場させる必然性もないのに、わざわざ男を出す必要があるのかって事」
「それは好みの問題でしかないのですよ。わたしは完全に男っ気を排した世界観は余りにも嘘臭くて嫌いですけれど。だからといって百合作品から男っ気を完全に排するべきだという主義主張を否定する気はありませんが」
「つまり、あなたは創作百合にもある程度のリアリティを求めるという事? ならば、TS百合やふたなり百合についてはどう思う?」
「TS百合は自分も女の子になって他の女の子と百合百合したいという男共の願望によって生み出された概念でしかないのです。元から女であったわたしたちがそんな概念を取り入れる必要性など何処にも無いのですよ」
「それには全面的に同意。TSという概念は、私たちには無駄なものでしかない」
「ふたなり百合に関しては、わたしは女性同士の関係に男性性を持ち込む事自体が許容出来ないのです」
「……? でもさっき、完全に男っ気を排した作品は嫌いだと否定した筈」
「それは登場人物に関しての話なのです。男のいない世界などあり得ないし、そんな世界を描いた途端現実感は一気に喪失してしまいますでしょう。異性の存在が居てこそ同性愛は輝くのです。けれど、同性愛に異性的要素を持ち込むのはナンセンス」
「だから百合にふたなりという男性的要素を持ち込む事には否定的だと。そこは納得。でも、あなたのいう異性的要素には何処までが含まれるの?」
「ボーイッシュな女子はそういう個性として認めますけれど、男装は許容出来ないのです。それは自らの女性性を否定する行為ですから。と同時に、性交時の道具の使用に関してもわたしは否定的なのです。手錠や鞭などの道具に頼るとどんどん生半可なセックスでは満足出来なくなって『愛欲としてのセックス』としての側面が失われてしまいそうですし、ディルドやバイブなどを女性器に挿入する行為は男性器挿入のメタファーみたいでわたしは嫌なのですよ」
「なら、相手の女性に指を挿入されるなやも嫌?」
「何故です? 指と男性器は全く関係ないものだと思いますが。それに、指は相手の女性の一部分ですし、無機物である諸道具とは違うですよ?」
「たとえ女性の指と雖も、それを膣内に挿入する地点で、それは男性器の代替としての役割を有する。違う?」
「……むぐぐ」
「それに、ふたなり女性の男性器だって、その女性の一部である筈」
「……た、確かにそうなのだすよ」
「……まだまだ甘い」
「……くうっ」
「お主は何を悔しがっておるのじゃ……」
リヒテンシュタインさんは呆れたように言いますけれど、これは百合少女としての尊厳を賭けた闘いなのです。決して言い負かされる訳にはいかないのですよ!
「……何だか熱くなっている所申し訳ありませんが、そろそろ終わりにしてくれません? キリがなさそうなので。……結局、マトモなプレゼンは一つも無かったですけど」
クソガリ鬼畜メガネが愚痴っぽく言った所で、すすきのターンも終焉を迎えたのでした。
「……で、佳代さん」
なんやかんや(省略)終わった後、クソガリ鬼畜メガネがわたしに問いかけます。
「誰をパートナーに選ぶかは、もう決めましたか?」
「問題ないのです」
わたしの一言に、亡者3人衆がいっせいにざわつき始めました。
「佳代。私を選んでくれたら、特別にご褒美をあげるわ」
「お願いします……っ!! 佳代だけが頼りなんです……!!」
「……百合は、世界を救う」
「カオスじゃの」
「それが、この小説のコンセプトですから」
「それでは、誰をパートナーに選んだのか教えて下さい」
「了解なのです。わたしがパートナーとして選んだ子は……」
デケデケデケデケデケデケデケデケ、デーーン!!
「……なんじゃ、今のBGMは」
「第1107-B地区フィルハー鬼ー交響楽団さんの提供でお送りしました」
「儂はもうツッコミ疲れたわい……」
「で、結局誰を選んだの?!」
「当然私でしょうね?」
「ふふふ、そんなの決まっているではないですか」
わたしの満面の笑みに、亡者3人衆がゴクリと唾を飲み込みます。
「あ、あれは良からぬ事を考えてとる顔じゃの」
「いい加減黙って下さい、リヒテンシュタインさん。わたしが選んだのはーー
ーー全員、テイクアウトで」
わたしの一言に、みんな仲良くズッコけた事は言うまでもないでしょう。
お約束ですよね。