天使
天宮さんを追って屋上を飛び出すとさっき俺に告白してきた女が居た
どうやら追い掛けなかった俺を追い掛けて来たようだった
目が合うといきなり
「さっきの女のこと好きなの?
このあたしじゃなくて!?
あんな女のどこがいいの!!」
煩い女だ
「黙れ、お前なんかにあの人の何がわかる」
そう言って通り過ぎようとする俺の制服の袖を掴んで離さない
「離せ」
俺の中で一番冷酷な表情と声が出た
普段優しいからってこんなときまで優しくない
俺は天宮さんを追いかけたい
邪魔をするなら蹴散らしてでもいく
そんな気持ちが気配からわかったのか女は泣き崩れた
無視して階段を段飛ばしでかけ降りる
急ぎすぎて足が縺れて転びそうになる
でも止まるわけにはいかない
最初に天宮さんの教室に行った
彼女の席に落ち着いた色の鞄が乗っていた。
校内には居る、でも教室じゃない
音楽室、図書室、家庭科室、カウンセリングルーム、実験室・・・
どこにも居ない
走っても走っても天宮さんは居ない
体育館の近くを通り掛かると祐が居た
「峻、汗びっしょりでどうした?」
「あ、まみ、やさん、は・・・?」
息が切れて途切れ途切れだったけど、祐は分かってくれたようだった
「さぁ・・・?
意外とおくJ「サンキュ」
祐の言葉を最後まで聞かずに俺はまた走り出した
「ハァ、ハァ・・・ハァッ」
校内を走り回り、1階から4階までの階段を駆け上がってきたせいで心臓が荒れ狂う、息も上がる
それを無視して屋上のドアノブを握り一気に開いた
ギィー
重い鉄の扉を開くと少し湿気を含んだ夏の香りと少しの潮の香りがする風が俺を一瞬包んで走り去った
空が眩しい
明るさに目が慣れて屋上を見ると
奥に小柄な影が立っていた
長い髪を風に遊ばせる小柄な影は動かなかった
あの時と同じだと頭の片隅で思った
「ごめんなさい」
「へ?」
手の甲で汗を拭いながら聞き返す
背中を向けていた天宮さんが俺を振り返った
泣いていた
そんな彼女を見ていられなくて、笑ってほしくて歩み寄り抱き締めた。
「やさしくしないで」
「なぜ?」
腕の中で泣いている小さな少女は俯きながら
「片想いでこれ以上好きになりたくないよ、だからやさしくしないで」
腕に力を込めてさらに強く抱き締める
「いや・・・」
「・・・好きです」
言ってしまってから我に返る、そうか、俺はこの人のことが好きなんだ
だからこんなにスムーズに過ぎって言えた
「ほんとう?
嘘でしょう?」
信じられないと言う顔をしている
「好きです、付き合ってください」
さっきより強く、はっきり想いが少しでも伝わるように願いを込めて言う
「誰よりも天宮 悠紀のことが好きです」
彼女が、悠紀さんが信じるまで言う
「わ、私も好きです。
白樺くん、峻くんのことが一番大好きです」
顔を赤く染め、嬉しさで泣いている悠紀はとても可愛らしく
Chu
頬にキスをした
これからずっと君を愛すると誓いを込めて
「峻って呼んで
それと悠紀って呼んでもいい?」
「うん」
まだ泣いてる
「悠紀、笑って」
目尻に涙がまだ溜まっていたけど、俺の可愛い彼女は笑った
天使のように