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ホットチョコレート

舞台は「真なる終幕」と同じ空間です。


形式は詩形式で書いてあります。


カリカリカリ……

カリカリカリ……


カリカリカリ……

カリカリカリ……


パラリ


カリカリカリ……

カリカリカリ……


カリカリカリ……

カリカリカリ……


パラリ


空間に響き渡るのは

文字を紙に綴る音のみ


時折の異音は

望みを映す魔導書の

ページを捲る音


他は無音に等しく

古時計の音すらも

鳴るのを潜めるよう


文字を綴る音

ページを捲る音

二つの異音を鳴らしているのは

空間の主たる人物――

作家としての想造主


彼は物語を書き続けている

寝食すらも忘却して


幾度の物語を紡いだのか

幾度の物語を描いたのか


それは誰にも分からない


想造主のいる空間に

新たな音と

鼻孔をくすぐる良い匂いが生じた

それは、想造主の子の一人にして娘でもある

世界の傍観者ヘカテーの

足音だった


彼女の手には一つの盆

盆に乗せられているのは

二つのティーカップ

中身は溶かしたチョコに

温かいミルクで割ったもの


鼻孔をくすぐる良い匂いの正体は

ホットチョコレートだった

それは彼女が

想造主のために作ったもの

身体を暫し休めるために

気分転換をさせるために


想造主の身を案じて作ったのだ


「想造主。休憩したらどうかしら」


「ああ、ヘカテーか。そうだな、ちょうど切りがいいから休憩するか」


ヘカテーの足音と

ホットチョコレートの匂いに

気づいていた想造主は

文字の書き綴りを

切りよく終えて

休憩に入った



「ホットチョコレート……ああ、バレンタインだったか」


「いつもの紅茶が良かったかしら?」


「たまには、これでもいいか」


「疲れてる時は、甘いもので補給したほうがいいわ」


「……。それは……私が根を詰めやすいから?」


「少なくとも、自身の身体を省みようとしない人に取っては、補給するべきだわ」


「……耳が痛いとこを言うのはやめてくれ」


「それは失礼」


ヘカテーが微笑み

想造主は苦笑う


「そういえば、私の出番だけども、次はいつ来るのかしら?」


「一応予定はあるけど……」

「今、手がけているものを終えたらになるのかしらね」


「とりあえず、単独でなら二本ある。死神での補足だけど」


「そういえば、賢人もやらないといけないんじゃなかったかしら?」


「そうだった……早くやらなければ」


「ふふ、充分な休憩は取れたでしょうし、私はそろそろお暇するわね」


「ああ、ホットチョコレート、ありがとう」


「……淹れた甲斐があったということね」


ヘカテーは別れ際に

そう呟いた

その言葉は想造主に聞こえたのか

それは誰にも分からない



カリカリカリ……

カリカリカリ……


カリカリカリ……

カリカリカリ……


パラリ


カリカリカリ……

カリカリカリ……


カリカリカリ……

カリカリカリ……


パラリ


ヘカテーが去った後

想造主は再び

魔導書を開き

物語を綴り始めた


それは変わることのない有様

いくつもの物語を

孕んでしまったが故に

抱き続けるしかない

ある種の業


想造主は今も休むことなく

魔導書を通して

物語を紡ぎ続けていく――

《終》

……ホワイトデーは、書きかけのヘカテーの話にしよう。


今年は、多少は楽できそうです。


いっそ、季節・企画ものをまとめてみようか?


(個人的な企画を出しても実行に移せない悪い癖)


「約束の断片」のほう頑張ります……。


ではでは

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