第九夜 旅立ち
祭りの次の朝はなんだか寂しいものです。
いつものお仕事を初めるのがちょっと嫌だなって思いながら、それでもみんな毎日の日課を始めます。
けれど、レッドの家はいつもとは違っていました。
「食料はちゃんと日もちするものを選んだかい?」
「大丈夫。それより…本当に畑の方はまかせていいの?」
「お前が心配しなくったって大丈夫だよ。お父さんだって居るんだから」
「お前がいつ帰ってきても、昨日までの畑と変わりない畑にしてやるさ」
ブルゥの人捜しの理由を聞いて、一晩で旅支度を整えたレッドでした。
お城のお姫さまがさらわれたのを助けに行くだなんて大役が自分に勤まるのかどうかは判りませんでしたが、自分にできることなら何でもしたいと思ったのです。
レッドのお父さんとお母さんは、ブルゥとレッドが出会った村の外れの銀杏木のところまで見送りに行きました。
二人が手を振るのを何度も振り返りながら、レッドはブルゥと共に旅立ったのでした。
「………やっぱり、畑の面倒見るのは半分でいいって言えばよかったかなぁ」
ようやくお互いの姿が見えなくなったころ、レッドが呟いたのをブルゥはちゃんと聴いていました。
「大丈夫。家では既に助け手が二人待っている」
何のことだかレッドにはさっぱり判りませんでしたが、ブルゥの言うことはなんだか安心できる事のように思われました。
レッドのお父さんとお母さんが家に帰って出会った助け手とは一体誰のことでしょう?
実はそれは、ブルゥの力を少しだけ分けてもらった牛のまろと馬のカイなのでした。
二匹はブルゥの力のお陰で人間に変身してたくさんたくさんお手伝いをすることになったのです。
………………が、これはまた別のお話。