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第八夜 竜の剣を抜ける者

ダーチの村の中央の広場から聞こえてくる軽快な音楽に誘われて、村中の人間が集まってきます。

ダンスの輪は少しずつ広がって、いつ終わるとも知れません。


レッドとブルゥはその広場の一画で、金貨10枚を賞金に、剣を抜ける力自慢をさがしていました。


「さぁさぁお立ち会い! この不思議な剣は並の力じゃ抜けない代物だ! 我こそはという力自慢は居ないかい? 見事抜けたら金貨10枚の賞金だ!」


レッドの声に、人々が集まってきます。

見るからに力自慢や冷やかしや、それぞれ祭りの熱気に浮かれながら挑戦しますがなかなか抜けません。

金貨10枚の賞金も魅力的でしたが、それ以上に、なかなか抜けない剣への意地が村人を駆り立てて、ついにレッドとブルゥは広場の中央の舞台に連れていかれ、そこで村人全員が剣を抜くのに挑戦することになりました。


いつまでも終わらないはずのダンスを踊っていた村人も、その為の音楽を奏でていた楽人役の村人も、みんな舞台の剣を見つめています。そう、そして剣を抜くのに挑戦します。


けれども剣は、どんな力自慢が力を込めても、鞘から少しも抜ける素振りも見せません。

男も女も、大人も子供も老人すらも挑戦しました。何とか祭りまでに帰ってこれたレッドのお父さんも挑戦しましたが抜けませんでした。


「……ああ、やはりこの村にもいなかったか……」


最後の一人が挑戦した剣を受け取って、ブルゥは寂しくため息をつきました。

その時です。


「ジョウ、あんたはまだ挑戦してないんじゃなかったかい?」


レッドのお母さんです。

そう言えば、昨日はお母さんが帰ってきたので、話は最後まで済んではいませんでした。

そうです、多くの人間を試すのに一生懸命で、一番身近に居たレッドに試してもらうのを忘れてしまっていたんです。

そのことにレッド自身も気付いていなかったから大笑い。

ひとしきり笑いあって、ブルゥは剣をレッドに手渡しました。


出会ったときから妙に惹かれていました。

選ばれるのなら、こういう青年がいいと思っていました。

期待に胸が鳴ります。


レッドの右手が剣の塚にかかり、左手が鞘を取りました。

ぐっと腕に力がこもります。

見守る村の人々の喉が鳴りました。皆期待しているのです。


そして……………


「やった! レッドの奴が抜きやがった!!」

「ついにやりやがった! すげぇ! 村一番の力自慢に勝ちやがったぜ!」


レッドは見事に剣を抜くことに成功したのです!


剣は、日の光を受けて、青くきらきらと光りました。

その素晴らしさに見とれているレッドの向こうで、ブルゥは嬉しそうに微笑んでいました。


 

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