第五夜 青い竜と青いブルゥ
お姫さまが攫われて困ってしまった王様は、竜に相談を持ちかけました。
「海の向こうの知らない神に、私の大事な姫をさらわれてしまった。金の鱗の首飾りのせいだと思うのだが一体どうしたらいいだろう」
これには竜も困ってしまいました。海の向こうの神など、竜も知らないのです。
「王よ、すまないがこの事について私から出来る助言はない。私が海へ行けと言ったばかりにこのようなことになって本当に申し訳ない」
竜の言葉に王様はびっくりしました。
だって、これが竜のせいだなんて王様はこれっぽっちも思ってなかったのですから。
「とにかく姫を取り戻す方法を考えねばならないだろう。その神が海を渡ってきたというのなら、海の向こうへ出かけてゆこう」
「なんですと!?」
「私が自ら海の向こうへ赴こうと言っているのだ。相手は名も知らぬが神の一族に連なる者。並の人間ではどうしようもあるまい」
そう言って、竜はぐーんと天高く舞い上がると、きらりと青い光を発して小さくなって、王様の前に落ちてきました。
王様はびっくりして腰を抜かしてしまいそうです。
光の落ちてきた場所には、一人の男が立っていました。
「……あ、あなたは……」
「王よ、私だ。これからは私を騎士ブルゥと呼んでくれ」
それは青い竜が変身した姿でした。
後ろでゆるく束ねられた黒く見える髪は光をはじくと青く見えます。青いマントから覗く剣はとても立派なものです。
竜……いえ、騎士ブルゥはびっくりして倒れそうになった王様を助け起こしました。
「私が今持つこの剣は聖剣で、私には使えない。この剣を震うことの出来る人間をこの旅に連れていきたいが許して貰えるか?」
「竜よ、いいや、騎士ブルゥよ、それを許すのは私ではない。行くか行かぬかはその剣を使える者が決めることだ。だがそうだな……姫を無事助けたならば、心からの礼をすることを約束しよう」
「姫は必ず助け出す」
騎士ブルゥと王様は約束の印を結んで、誓いあいました。