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第四夜 海の向こうの知らない神

お姫さまの金の鱗の首飾りは、どんな宝石の輝きよりもきれいで、その噂は国中に広まりました。

金の鱗を持つ魚は海にいる! その話を聞いた人々はこぞって海へ出かけます。

けれども海で釣れるのは、銀の光をはじく普通の魚ばかりです。


そんなある日のこと、海の向こうの国から、王様の元へ使者がやってきました。


「こちらの国には金の魚が居るという噂を聞きました。実はあの魚は我が国の聖なる神の使いとして大切に育てられていたものなのです。お願いです。魚をお返し下さい」


さあ困ってしまいました。

あの死んでしまった金の魚が神の使いの魚だったとは!

王様は金の魚のことをどう伝えたものかと頭を抱えてしまいました。


「………ああ……使者殿。本当に申し訳ない話なのだが、実は……魚はとうに死んでしまっているのだ。宮殿の奥庭に墓がある。魚を大事に思う貴国の皆さんには本当に申し訳ない」


一国の王様が頭を下げて謝る姿は珍しいものです。

王様の心からの謝罪の証でしたが、使者は言葉もなく呆然と立ち尽くしています。

魚が死んでしまったという話がショックだったのでしょう。


「何ということだ! 死んでしまったというのか!?」


使者の声が大きく広間に響き渡りました。


「信じられない! 確かに金の魚は今も息づいているのに!」


その声が、不思議な響きを持ちました。

店を仰ぐ使者の目が光ったように、王様は感じました。


「王よ、そなたは私の魚の美しさのあまり、返すのが惜しいからと嘘をついているのであろう! さあ今すぐ魚を差し出すのだ! あの魚は私が大事に育てていたものだ!」


どうしたことでしょう。使者の体が見る見る大きくなり、神様の姿になりました。

そうです、海の向こうの国の使者とは仮の姿。本当はこの国には知られていない、海の向こうの神様だったのです。


「こちらの竜に敬意を払い、そなた王に敬意を払ってこの姿を隠していたというのに!!」


王様の知らない神はぐるりと周囲を見回しました。神の目は見えざるものをも観る力があります。


「嘘をついている王などに敬意を払う必要はない。私は私のものを取り返す!」


神様の手が壁の向こうに伸びました。

王様はびっくりしました。神様の手に握られて帰ってきたのは、なんて事でしょう、お姫さまだったのです。

あの金の鱗の首飾りがあまりにも素晴らしかったので、命を持ってしまったようなのです!


「魚は確かに返してもらったぞ」

「お父様、お母様!」


神の姿がどこかへかき消えたとき、お姫さまの姿も消えてしまいました。


大変です。

お姫さまがさらわれてしまったのです!!


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