第一夜 竜の湖とボート
むか~しむかしのお話です。
あるところに大きな大きな王国がありました。
王様はちょっとおっちょこちょい、王妃様はそんな王様にすかさずツッコミ入れるタイミングの人、そんな二人の間に生まれた、とっても可愛いお姫さま。
国民皆に愛される王さまの御一家です。
さて、そんな国の北の山の向こうには、大きな青い竜が住んでいました。
人々に恵みの雨をもたらす竜は、この国の人たちにとても好かれていました。竜もこの国の人たちが大好きでした。
ある日のことです。
北の山のふもと、人家も畑もない場所に、ざあざあ大雨が振りました。
竜が降らせた大雨です。
雨は一週間も二週間も振り続け、やがてそこには大きなまあるい湖が出来ました。
青い竜の作った、青い湖です。竜は毎日そこで水浴びをしていました。
そうです、これは竜のお風呂なのです。
なんでお湯じゃないのかって?
お湯にしたら、竜鍋になっちゃうからだよ。
青い竜の青い湖の噂を聞きつけた王様は、そこに自分の緑色のボートを浮かべてみたいと思いました。
ボート遊びは王侯貴族の嗜みです。早速王様は家族そろって北の山のふもとへお出かけになりました。
ようやく湖に到着して、王様がボートを浮かべようとした途端、湖の中から青い竜がざあああ! と浮かび上がってきました。
「王様、ここ北の山は私の住み家だ。そしてこの湖は私が自分のためにこしらえたものだ。あなたも自分の家である王宮で自分のためにこしらえた場所へ、自分の許しも無く他人が入るのは気に入らないだろう。そういうわけだから、ボート遊びがしたくば、国の南の海へ行くがいいだろう」
竜にそう言われて、王様は恥ずかしくなりました。
「竜よ申し訳ないことをした。確かにあなたの言う通りだ。私たちは南の海へ行くことにしよう」
というわけで、王様達は海へ出かけることになりました。
ここで、ボート遊びはやめればいいのにというツッコミを入れてはなりません。水辺の遊びは王侯貴族の嗜みなのですから!(笑)