第一章 06.5 ―Intermezzo―
不思議の国社のお送りする夢の旅、ここで一度小休止といたしましょう。まだ出番のない役者が、舞台裏で何か囁いております。
ここで少し、間奏曲-Intermezzo-をお楽しみくださいませ。
曲名は、
「ようこそここは愛憎の王国」
「”Alice”だってさ」
「”Alice”?」
「うん」
「へえ」
「珍しい」
「そうだね、本当に珍しい」
「「二回も”Alice”に逢うなんて、」」
「あの時以来さ」
「あの時以来だよ」
「嗚あの時は」
「最悪だった」
「最悪だったよ」
「愛は惨いね」
「愛は酷いよ」
「そうだな、あのことはもう――――」
「「思い出したくもない」」
―――――――――――――独つの愛を求めた双つ。 (憎悪と愛は紙一重?)
「………ああ、お帰り。今、”Alice”が来たぞ」
「あ、やっぱり?」
「なんだ、反応が薄いな」
「そりゃあ、分かったからね」
「ふうん?」
「やっぱり、共鳴するよ。ぼくらの心臓は」
「そうか」
「愉しみだな、楽しみだなっ! ぼく、はじめてなんだ、”Alice”に逢うの」
「そういえば、そうだな」
「この国は、”Alice”なくしては存在しないから――――どうしたって、愛しちゃうよね」
「僕には、誰かを愛する気は無い」
「つまんない人生だね、帽子屋。ぼく、一度でいいから愛してみたかったんだ、人を」
「……………、」
「ん? ……眠りネズミ。なにか言ったか?」
「…………」
「よく聴こえない。なんと言ったんだ?」
「………………」
(……この国に、愛しさを生み出したのは、かみさまの失敗だな、君)
―――――――――――――アンダー・ザ・ローズのお茶会にて (あいしてるの意味を問う)
「――――……」
ぱちん、ぱちん。
「―――――――……」
はらり、ぱさり。
「――――――――――……」
じゃきん。
「………あ、」
ちょきん。
「………これで、よし」
ぱちん。はらり、はらり。ゆらり。
ちょきん、ちょきん、ぱさり。
ふわり。
「―――――――…… ?」
はらり。
「……………☓☓☓…?」
―――――――――――――薔薇しか咲かぬ庭園で (あなたが愛した花の下にて)
「―――――……!」
「アリス?」
「アリス、ねえ、アリス、アリス、アリス、」
「ああ、きてくれたの? 約束を、まもってくれたんだね? ねえ、ねえ、ねえ、」
「待ったよ、待った。十八年も! 十八年も! 十八年、嗚、なんて永いんだ! 」
『 』
「そうだね***、あのときの約束いまもおぼえていてくれるんだろう? ねえ、ほら、きこえるんだ、僕の耳に、頭に、脳に、心に、内臓に、*に、この無機の躰にさえ! 嗚呼、吁、嗚、きみのその、」
『 』
「いとしいいとしいころしたいほどいとおしい――――その声も姿も瞳も髪も、躰も心も*も*も、すべてすべていとおしいとも、ああ!」
『 』
「***で**るならね」
『 』
「さみしさなんて、感じないで」
『 』
「*を*とは呼ばないよ」
『 』
「*を知っているものは、*が存在することを肯定しないんだ」
『 』
「ちがうよ。**みたいに幼くて、何も知らない迷い子だって、*は確かなものと知っている」
『 』
「だから**は気がついたのさ」
ああ、ぼくの かわいい かわいい おひめさま!
―――――――――――――愛に満ちたこの世界で (Alice、アリス、ありす、ALICE、alice、 あ り す 、)
―――――――――――――(****、アリス!)