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偽善

作者: つばさ

 ダラダラとネットニュースをみる。今年はクマさんが猛威をふるってますな。コメント欄をダラダラとスクロールする。

「熊は早く駆除しろ」

「行政は何をやっている」

「これ街中じゃね? 怖い」

「もうこれ災害だろ」

「熊を殺すな」

 おっと、こんな思考回路浅いやつ本当にいるんだなー。人が死んでるのに。お前クマさんに会ってみろよ。会ってみてから物言え。案の定この人のコメント欄は荒れていた。


 ダラダラとネットニュースをみる。おお、今年も武豊勝ってるんか。なんか私の小さい頃から勝ってないか? いつまでこいつ馬乗ってんねんて。すごすぎやろ。てかウマさん痛くないのかな、あの鞭みたいなのって。ウマさんになったことないからわからんけど。


 ダラダラと夜ご飯を準備する。サラダにドレッシングをかける。秋刀魚がこちらをみている。生姜焼き、うまい。


……浅いのは私か?

 ダラダラとネットニュースをみて、時間を潰して、コメントを見下して。ウマさん痛そうとか言いながら生姜焼き食ってんじゃねえか。豚さんだって可哀想だろ。そもそもクマさん殺すなって意見も、一理あるんか? クマさんより人が偉いって誰が決めたよ。人だ。クマさんがダメで豚さんがいい理由ってなんだよ。豚さんがダメで秋刀魚さんがいい理由ってなんだよ。秋刀魚さんがダメで葉っぱさんがいい理由って…….なんだ?


 というのは誰もが通る疑問だ。多分、どこかで区切って無理矢理納得させるのが正解だ。みんな自分が納得できる線を引いて安心してる。でも今日の私はなんだかどれもしっくりこない。だって、今日私、野良猫に募金してきた。どれかを正解にしてしまったら、途端に自分の行動がごみみたいな行動だったという証明になってしまう気がする。つまり、偽善であることを確定させてしまうような、そんな気がする。うだうだ考えても仕方がない、この後も私はネットニュースを見て時間を潰す。


 今日も昨日の場所を通りかかったら、野良猫の募金活動してた。うーん、今日は、無視しよう。一旦ね、一旦。


 今日も募金活動……。猫じゃ、ない? 難民の救助活動? 私を試しているのか? 人だったら、助けるよねって言ってる? 線はここだよって誘惑してる。いや、今日の私は日本人で線を引かせていただく。見て見ぬふりをさせていただこう。そのまま通り過ぎる。そもそも私、自分の生活だってギリギリですからー。


 今日は……、今日は募金活動お休みですか……。まぁ募金したとて100円なんですけどね。今日の私のファンタメロンがなくなるだけなんですけどね。うーん、線。線かぁ。線なんてなし、なんて博愛主義したら死んじまうしなぁ、私が。考えるのめんどくなってきたな。とりあえず募金なんてしなくていいや。


 今日は、募金活動いるかな……。あ、猫、道路に死んでる。こういう時って、どうすればいいの? 行政に連絡? 正しい行動ってなんだ? みんな、見て見ぬふりで通り越していく……。まぁ、いいや、めんどいし、みんなに習って、通り過ぎよう。


 いつもの募金の場所、あ、今日は猫の募金ですか。通り過ぎようと思ったところで、お兄さんが私に声をかける。あ、イケメン。「野良猫の保護活動にご協力いただけませんか?」

 なぜ私は財布を出してるんだ? そのまま100円を彼に渡す。


 死んだ猫は無視しといて、見知らぬ猫に募金はする、特大矛盾をかます私。

 …….うーん、私って偽善者。

 でも世の中ってそんなもんか。世の中の役に立ってると言いながら虐待する看護師。子供に課金せず推しに課金する母親。お金稼いでいい気になってる父親。面接のために募金ボランティアをする大学生。そんなもんで世の中って回ってる。

 世の中も偽善でできてるらしいから、私も、もう、いいや。私は線を、自分とそれ以外、に、引いた。


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