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 「久しぶりね。」


 「そう?」

 

 頬を紅潮させながら恥ずかしそうに話す彼女に、ほとんどその

 表情を変えることの無い僕は、熱を感じることの出来ない一言

 を投げがける。

 

 「久しぶりだよ。 もう二週間も逢ってないんだから。」


 そう言って彼女は、僕の腰のあたりから背中に手を回すと、甘

 えるように額を僕の胸にうずめるように潜らせる。


 僕に逢うということは、彼女にとっては特別なことで幾つかの

 意味を持つようであったけれど、僕にとって彼女に会うことは

 それほど多くの意味を持つ事では無かった。


 「寂しくなかった?」


 僕は額を埋めたまま尋ねる彼女の頬に手を添えて、彼女の顔を

 おこすと、何も言わずに唇を重ねた。

 言葉も熱い感情の触れ合いも、僕の求めるものでは無かった。

 乱暴では無いけれど、思いやりや慈しみといった類の言葉とは

 無縁な態度で、彼女とともにベッドに倒れ込む。

 その少し強引とも思える僕の振る舞いが、かえって彼女の胸の

 中心部分を熱いもので溢れさせたのか、さっきよりもさらに顔 

 を紅潮さた彼女が僕を見つめる。

 僕はもう一度唇を重ねると、そのすぐ下にある高く隆起した膨

 らみに手をのばした。


 自分が欲した時だけ、自分には持ちえない女性特有のこの‘や

 わらかな感触’に触れるわずかな時間を得ることが、僕が彼女

 に会うことに存在す唯一の意味だった。


 ひとしきり欲求を満たすと僕らはベッドに横になり、何時もの

 ように彼女は逢えなかった時間に起きた出来事を、僕に向かっ

 て話していた。

 話の内容はどれも他愛の無いもので僕には興味をそそられるも

 のでは無かったけれど、最低限の相槌を使って彼女が喋り疲れ

 て眠るまで話を聞くことを、僕は自分自身にルールとして課し

 ていた。


 彼女が喋り疲れる前に、部屋に携帯電話の着信音が鳴り響く。

 

 「でないの?」

 

 着信音を気にする様子の無い僕に、彼女は尋ねる。


 「うん。」


 「なんで?」


 「どうせ仕事関係だし、でなくていいよ。」


 いぶかる様な表情の彼女ではあったけれど、僕の平静を保った態度

 に諦めたように「そう。」と言って話の続きを始めた。


 

 電話の相手は誰か断定は出来なくても、おおよその見当はつけるこ

 とが出来た。

 それは仕事関係などではなく、今、目の前にいるこの‘彼女’とは

 少し違った‘やわらかな感触’を持った、数人の女の子の内の一人

 であるはずだった。


 僕はこの一年の間、欲求に導かれるままに日々を過ごしていた。

 

 

 


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