傷だらけの逃亡者たち——夜の森を駆け抜けて
レイシュナとゼルガスは、城から数十キロ離れた森の奥へと逃げていた。
ゼルガスの肩には深い傷が残り、血が止まらない。
レイシュナも疲労しきっており、今すぐ回復魔法を使うこともできなかった。
二人は、木の根元に腰を下ろした。
「……ゼルガス、大丈夫……?」
「……ああ、こんなの……大したこと……」
そう強がりを言いながらも、ゼルガスの顔色は悪かった。
彼の血がレイシュナの手を汚していく。
レイシュナは震える手でゼルガスの傷口を押さえた。
「……バカじゃないの……」
「は?」
「なんで、私をかばったのよ……!」
レイシュナの声は怒りに震えていた。
「勇者であるお前が死んだら、この世界は終わりだろ……」
ゼルガスは力なく笑った。
「……ついでに、俺は……お前以外に殺されるのは……ごめんだからな」
「……っ!」
レイシュナの胸が強く締められる。
彼はまだ、魔王としての矜持を持っている。
それなのに、そんな彼が今はこんなにもボロボロで——
「……絶対、死なせないから、どんなことをしてでも……」
レイシュナは強く誓うようにつぶやいていた。
今はただ、生き延びることが最優先だった。
いつかこの戦いに決着をつけるために——