魔王ヴァルグレムとの決戦──魔王VS.魔王
空は凍てつき、世界は絶望に沈んでいた。
魔王ヴァルグレムの支配する氷の大地──《絶対零度の王城》。
その最奥、巨大な氷の玉座に座するのは、絶対的支配者。
人間と魔族を等しく蹂躙し、幾つもの国を氷漬けにした《氷葬の覇王》。
ヴァルグレムは、無機質な氷の瞳で新たな侵入者を見下ろしていた。
その侵入者こそ──若きゼルガスだった。
「……なるほど。ここまで辿り着いたか」
ヴァルグレムの声は冷たい風のようだった。
低く響き、肌を刺すような威圧感がある。
「ゼルガス、と言ったか? 貴様ごときがこの王の領域に踏み入るとは……」
ゼルガスは微笑んだ。
全身に魔力をみなぎらせ、黒き炎をまとっている。
「貴様の時代は終わるんだよ、ヴァルグレム!」
「終わる? フフ……笑わせる」
ヴァルグレムは微動だにせず、手を軽く振った。
その瞬間──
ズガァァァァン!!
天井から巨大な氷の刃が降り注ぎ、ゼルガスを串刺しにしようとする。
ゼルガスは瞬時に身を翻し、黒炎の魔力で氷を砕いた。
「随分と手荒い歓迎だな」
「当然だ。貴様のような出来損ないに、この王が手加減する理由がない」
ヴァルグレムは玉座からゆっくりと立ち上がった。
その瞬間、空間が凍りついたような感覚に襲われる。
圧倒的な魔力が辺りに満ち、氷の王の威圧感がさらに強まる。
──その手に握られたのは、《氷王剣ヴェントグレイヴ》。
あらゆる生命活動を無力化し、触れるもの全てを永遠の氷へと変える魔剣。
「貴様は理解していない。私は、"調和"など求めぬ。人間も魔族も等しく価値がない。ただ、私の氷の世界だけが永遠であればよい」
ヴァルグレムが剣を振るう。
ズズズ……!!
ゼルガスの足元から一瞬で氷の波動が広がった。
避ける間もなく、地面が凍りつき、彼の足を拘束する。
ヴァルグレムが口元に冷笑を浮かべた。
「貴様はここで、氷漬けの彫像となるのだ」
「……チッ、言ってくれるな」
ゼルガスは魔力を解放し、黒炎の爆発を起こした。
凍てつく足枷を粉砕し、ヴァルグレムへと跳躍する。
「行くぞ、ヴァルグレム……!」
ゼルガスの手に宿るのは、魔王の証たる《業炎の魔剣フランベルグ・ヴァルガード》。
紅蓮の炎が燃え上がり、氷と火の衝突が始まる──。