新しい世界の中で——始まる2人の物語
どこまでも青空が続いていた。
眼前に広がるのは、どこまでも続く草原。
風がそよぎ、見たことのない鳥たちが自由に飛び交っている。
目を覚ましたレイシュナを迎えたのは、そんな温かな陽の光が降り注ぎ、どこか懐かしささえ感じさせる世界だった。
「……ここは?」
ぽつりと呟いたレイシュナの耳に、聞き慣れた声が届いた。
「レイシュナ、目を覚ましたか」
驚いて顔を上げると、そこにはゼルガスがいた。
初めて会ったときと変わらない赤く鋭い眼差し、それでいてどこか柔らかな表情。
彼もまた、この世界にたどり着いていたのだ。
「ここはどこなんだ?」
ゼルガスの問いに、レイシュナは目の前の景色を眺めながら答える。
「おそらく……《時環崩壊》で生まれた膨大なエネルギーが、新しい世界を創り出したのよ」
確証はない。
だが、この世界が今までとは違う場所であることだけはわかる。
もう、あの戦いの爪痕はどこにもない。
——魔力の気配すら、限りなく薄い。
ふと、ゼルガスがレイシュナの頭に手を置いた。
「そうか……人間も、魔族もない。——新しい世界なんだな」
レイシュナはゼルガスを見つめた。
そうだ、もはや2人を隔てるものは何もない。
——立場も、種族も、過去の因縁も。
ゼルガスが手を差し出す。
レイシュナの金色の髪と青き瞳は、変わらぬ輝きを放っている。
レイシュナはゼルガスの手を取った。
二人は並んで歩き出す。
どこへ行くのかはわからない。
ただ、この果てしない草原の先に、彼らの新たな物語が待っているのだろう。
風が吹く。
青空の下、二人の影がゆっくりと揺れた——。
——Fin.




