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禁忌の秘術、発動——その時2人は

 《時環崩壊クロノ・カタクリズム》が発動した瞬間、世界が激しく歪んだ。

 光も闇も、熱も冷気も、あらゆる存在が狂ったように加速し、渦を巻く。

 レイシュナは自分の足元すら定かでないほどの凄まじい流れに呑み込まれ、全身が引き裂かれるような感覚に襲われた。


 ——時間が暴走している。


 目を開ければ、世界が崩れ落ちていく光景が映る。

 地面が消え、空が砕け、すべてが凄まじい速度で過去と未来を行き来している。

 自分の手すら朧げになり、存在そのものが薄れ始めているのを感じた。

「ゼルガス!」

 心の中で何度も叫んだ。必死に探した。

 しかし、どこにもいない。

 ——怖い。

 ゼルガスがいない。

 自分はこのまま時の渦に呑まれて消えてしまうのか。

 恐怖と不安が限界を超え、絶望が心を支配しようとしたその瞬間——

 温かさを感じた。

 自分の身体を誰かがしっかりと抱きしめている。

 はっとして顔を上げると、そこにはゼルガスの優しい瞳があった。

 冷酷な魔王の面影はなく、ただ静かにレイシュナを見つめている。

「何があっても、一緒だ」

 彼の低く、穏やかな声が響いた。

 その言葉が、すべての恐怖をかき消した。

 レイシュナの瞳から涙が溢れる。

 これは恐怖や絶望の涙ではない。

 安心と信頼、そして愛の涙だった。

 二人は混沌と化した時の渦に包まれながらも、互いの存在だけを確かめるように強く抱きしめ合う。

 やがて、全ての境界が崩壊し、二人は光と闇の狭間へと呑み込まれていった。

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