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絶対零度の理想——永遠の平穏とは

 ——氷の宮殿の奥深く、蒼白い光が静かに揺らめいていた。

 ヴァルグレムは玉座に座し、閉じられた瞼の裏で世界を見ていた。

 そこには、苦しみがあった。

 争いがあった。

 嘆きがあった。

 生命とは、愚かで無秩序なものだ。

 生きることが苦しみの根源であるならば——それをなくせばいい。

 すべてを停止させ、永遠の平穏を手に入れる。

 それこそがヴァルグレムのたどり着いた唯一の解——。

 生命を氷の彫像へと変え、不変の美と静寂に包まれた世界を築くのだ。

 そこには、苦しみも、悲しみも、絶望も存在しない。

 ただ、完璧な静寂だけが広がる。

 ヴァルグレムは目を開いた。

 その氷の瞳には、確かな確信が宿っている。

「——もうすぐ、世界は完成する」

 すでに、彼の冷気は大地を覆い尽くそうとしていた。

 氷嵐は拡大を続け、着実に命を凍てつかせている。

 すべてが静止するまで、あとわずか。

 ヴァルグレムはその事実に喜びを禁じ得なかった。

 しかし——

「……来るか」

 彼の冷徹な視線が、遠くを見据える。

 感じるのは、


 竜の息吹。


 聖剣の光。


 そして、灼熱の炎。


 カイゼル、レイシュナ、ゼルガス。

 ヴァルグレムの理想を阻止しようとする者たちが、こちらに向かってきている。

「……どちらが正しい道なのか」

 ヴァルグレムは静かに立ち上がる。

 彼の目に迷いはない。

「ならば、全精力をもって迎え撃とう」

 氷嵐が吹き荒れる。

 最終決戦の刻は、すぐそこまで迫っていた——!

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