氷葬の騎士、最後の絶技——炎と氷
「フッ……面白い」
勇者レイシュナの突然の登場にも動じることなく、氷葬の騎士は剣を構え直した。
その氷刃から、より強烈な冷気が放たれる。
「貴様らが三人揃ったのなら、むしろ都合がいい……まとめて永久の氷牢に封じてくれる!」
空間が揺れる。
瞬間、氷葬の騎士の全身から溢れ出した冷気が、戦場を覆っていく。
奥義・極寒終葬!
「——っ!」
レイシュナが咄嗟に後退する。
ゼルガスとカイゼルも警戒を強めるが、その次の瞬間——
ドォォォォォン!!!
凍てつく世界が爆発的に広がり、あらゆるものを飲み込んでいく氷葬の騎士の全魔力を解放した究極奥義が発動した。
地面も、空気も、すべてが氷嵐に侵されてすさまじい速度で凍りつき、その動きを止めていく——逃げ場はない!
「あの氷を止めなくちゃ……!」
レイシュナが剣を握りしめたその時、ゼルガスの叫びが飛んだ。
「無闇に動くな!こいつはぶつかるんじゃない、流れを読むんだ!」
レイシュナはハッとする。
ゼルガスの視線を追い、吹き荒れる氷雪の流れを観察する——そして、一瞬だけ、その切れ目を見つけた。
「……そこかッ!」
レイシュナは氷嵐の中を駆け抜け、ゼルガス、カイゼルとともに跳躍して、ギリギリで凍結の波を回避する!
着地と同時に振り返ると、氷葬の騎士が驚愕の表情を見せていた。
「なぜ、私の奥義をかわせる……!?」
「ゼルガスのおかげよ!」
レイシュナが勝ち誇ったように言い放つ。
そして、すかさず叫ぶ。
「カイゼル、あなたのブレスを貸りるわ!」
思わぬ言葉に一瞬動きを止めたカイゼルだが、すぐに意図を察してニヤリと笑う。
「なるほどな、やってみるか!」
彼の口元に、赤熱の光が宿る。
「喰らえ……赤龍咆哮!!」
灼熱の業火が放たれ、レイシュナはそれを聖剣で受け止める。
通常なら触れるだけで焼き尽くされるはずのブレスが、聖剣の力によって純粋な力へと変換されていく——。
「この熱なら……あいつの冷気を超えられる!!」
レイシュナは聖剣を振り上げ、全力で斬り放つ——
必殺・烈炎神閃!!!
ズバァァァァッ!!!
炎を纏った剣閃が氷葬の騎士を直撃する。
ヴァルグレムの力を受け継いだ氷の鎧すら、一瞬で溶かし、焼き尽くす——。
「ぐっ……貴様ら……この私が……!」
氷葬の騎士は悔しげに呻きながら、己の体が崩れ落ちていくのを感じていた。
「……ヴァルグレム様……申し訳……」
最後に呪詛の言葉を残し、彼は氷の粒となって消滅した。
——そして、戦場には、三人の勝者が立っていた。




