絶望の凍土、そして——光
「……ここまで——か」
ゼルガスの体が、冷たい氷の檻の中で——軋む。
手足の感覚はほとんどない。
隣ではカイゼルも膝をつき、白い吐息を漏らしていた。
氷獄の監視者の巨大な単眼が、不気味に光を放つ。
その視線を受けた者は、時が止まったように動けなくなる。
「チッ……」
ゼルガスは剣を握りしめようとするが、凍りついた指が思うように動かない。
ヴァルグレムの冷気に侵された戦場——そこに、彼らの勝機は見当たらなかった。
「ようやく貴様らを凍土へと葬れるな」
氷葬の騎士が冷徹な声で呟く。
「これでヴァルグレム様の憂いも消える……安らかに凍りつくがいい」
氷獄の監視者の邪眼が光を強める。
ゼルガスとカイゼルの身体が、完全に氷に包まれていく。
そして——
世界が白く閉ざされようとした、その瞬間だった。
ゴオオオォォォォッ!!!
突如、凍てつく世界に熱が生まれた。
——いや、それは、燃え盛る炎のような光。
氷すら融かすほどの、神聖な輝き——。
シュバァァァァァッ!!!
閃光が走る。
次の瞬間、氷獄の監視者の巨大な単眼が、真っ二つに裂けていた。
「……なっ!?」
氷葬の騎士が驚愕する。
斬ったのは、一筋の光の刃。
いや、燃え盛る『聖剣』だった。
「遅くなって、ごめんね」
凛とした声が響く。
氷の中から解放されたゼルガスの視界に、赤い髪をなびかせた一人の少女が映る。
勇者レイシュナ——ついに、戦場に降り立つ。




