終わりなき氷の刃——戦いの果ては見えず
冷たい風が吹き荒れ、あたり一面を白い霧が覆っていた。
ゼルガスは荒い息をつきながら、大剣を振るった。
刃が氷の精霊を真っ二つに裂く。
しかし、倒した端から次の精霊が現れる。
「キリがねぇ……!」
ゼルガスの隣で、カイゼルが息を弾ませながら呟いた。
彼の鱗には、細かな氷の結晶が張り付き、冷気がじわじわと体温を奪っている。
ヴァルグレムの刺客——暴走した氷の精霊たち。
彼らは昼夜の区別なく、途切れることなく襲いかかってくる。
息つく間もなく、剣を振るい、拳を叩きつけ、魔力を燃やす。
しかし、倒しても倒しても、敵の勢いは衰えない。
「このままじゃ、こっちが削り取られる一方だな……」
カイゼルの苦しげな言葉に、ゼルガスは唇を噛んだ。
確かに、戦いはじわじわと彼らの心をすり減らしていた。
体力だけでなく、気力も持っていかれる。
敵は強いというよりも、ただただ終わりが見えない。
ゼルガスは一瞬、視線を空へと向けた。
漆黒の空、輝きを失った星々——冷たく、静かすぎる世界。
その瞬間、ふと脳裏に浮かんだのは、暖かな光のような存在だった。
レイシュナ。
彼女がいたら、この闘いは少しでも変わったのだろうか?
彼女の光は、この終わりなき戦いに差し込む希望となり得ただろうか?
(……何を考えてる)
ゼルガスは自嘲気味に笑い、再び剣を構える。
今はただ、生き延びることだけを考えろ——そう自らに言い聞かせながら。
そして、次の精霊が襲いかかってくる。
戦いはまだ、終わらない。




