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新たな使命——勇者の葛藤

 扉が閉じる音が響くのと同時に、レイシュナは静かに息を吐いた。

 報復王ガルツァードとの謁見を終えたばかりの彼女の心には、未だ重苦しいものがのしかかっている。

 新たな魔王討伐の命が下された。

 それが勇者としての使命であることはわかっている。

 けれど——

「レイシュナ」

 聞き慣れた声に顔を上げると、一人の男が立っていた。

 鋼の鎧をまとい、威厳に満ちた立ち姿。

 王国騎士団長・グラディウス。

 かつてレイシュナと共に戦った相棒であり、彼女が唯一心を許せる人間の一人だった。

「……騎士団長殿」

「お前が無事でよかった。だが、あまり顔色がよくないな」

 レイシュナはかすかに微笑む。

「心配してくれてありがとう。でも、大丈夫よ」

「大丈夫な顔には見えないな」

 鋭い眼光がレイシュナを射抜く。

 それ以上取り繕おうとしても、彼には通じない。

「ガルツァード陛下から何を言われた?」

「……ヴァルグレム討伐を命じられたわ」

 短く告げると、グラディウスの表情が険しくなった。

「……やはりな。だが、お前一人ですべてを背負う必要はない」

「勇者は、使命を果たすためにいるものよ」

「その使命が、お前を追い詰めているように見えるのだがな」

 レイシュナは言葉に詰まる。

「俺から一つ、提案がある」

 グラディウスの言葉に、レイシュナは顔を上げた。

「お前の師である大賢者ズイオウ様のもとへ行け。あのお方ならば、きっと何か助言をくださるはずだ」

 大賢者ズイオウ——

 かつてレイシュナに精霊との付き合い方を教え、親代わりとなってくれた存在。

 聖剣に選ばれて勇者となった後、レイシュナは勇者としての使命に忙殺され、師のもとを訪ねることもなくなっていた。

 だが今の自分には——彼の言葉が必要かもしれない。

「……そうね。会いに行くわ」

 そう告げると、グラディウスは小さくうなずいた。

「迷いが晴れることを祈っているよ、レイシュナ」

「ええ。ありがとう、グラディウス」

 かつての相棒に見送られ、レイシュナは大賢者の庵へと向かうことを決めた——。

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