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竜人の王、カイゼル——旧友との再会

 ゼルガスは荒々しく噴煙を上げる活火山のふもとに立っていた。

 山肌は赤々と燃え、熔岩が流れる裂け目からは地の底の熱が漏れ出している。

 吹き上がる熱風が肌を焦がすようだったが、かつて「焦熱の征服者」と恐れられた彼にとっては懐かしい温もりでもあった。

 「……久しぶりだな、カイゼル」

 ゼルガスが呼びかけると、山頂近くの巨大な岩棚から影が舞い降りた。

 鍛え上げられた筋肉を持つ長身の男。

 赤銅色の鱗をまとい、黄金の瞳が鋭くゼルガスを見据える。

 背には漆黒の翼を広げ、尾の先がチリチリと溶岩の上で揺れている。

 竜人族の王、カイゼルその人である。

 「ほう……ゼルガス……貴様、生きていたのか」

 カイゼルは腕を組み、わずかに目を細めた。

 「先代の魔王、ヴァルグレムが復活した。お前も感じているはずだ」

 ゼルガスの言葉に、カイゼルはうなずく。

 「奴の冷気が遠くこの山まで届いた。……ありえんことだ。ゼルガス、お前が魔王として敗れその力を失ったせいで、世界の均衡が再び崩れてしまったのだ」

 「だが、俺はまだ死んではいない」

 ゼルガスは静かに、しかし力を込めて言い放つ。

 「ヴァルグレムを再び葬る——そのために、お前の力が必要だ、カイゼル」

 竜人の王はしばらく無言だった。

 しかし、やがて口元にわずかな笑みを浮かべた。

 「……いいだろう。昔から、貴様は無茶な頼みを押しつけてくる奴だった。だが、貴様の無茶な頼みはいつも俺の退屈をまぎらわしてくれる」

 そう言って、カイゼルはゼルガスの肩を軽く拳で叩いた。

 その感触はかつての魔王とは程遠く——まるでただの人間のように軽い。

 「しかし——貴様が魔王としての力を失っているのも間違いないようだ。ゼルガス、一体何があったのだ?」

 ゼルガスは眉をひそめた。

「……俺にも分からん。力は確かに消えた。だが、どこへ消えたのかまでは——」

 ゼルガスは、勇者であるレイシュナとの戦いの果て、魔王としての魔力を失ってしまったその一部始終をカイゼルに伝えた。

 カイゼルは短く息を吐くと、鋭い視線を向けた。

 「そういうことだったのか、ならば答えは簡単だ」

 「簡単だと!? では俺の魔力がどこに消えたのか、お前にわかるというのか?」

 「ああ——貴様の魔力は、勇者の聖剣に封じられている」

 思わぬ言葉に、ゼルガスの目がわずかに見開かれる。

 「……勇者——レイシュナの剣に、だと?」

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