【2】
「ーもう一杯」
グラスを店員に向け、アルコールを要求する。場所は行きつけのバーだった。
「何かあったの?」
友香のペースが早いので、心配したのか、女性バーテンダーが声をかけてきた。
「あったの。聞いてよ」
甘えるように言うと、友香はバーテンダーにことのしだいを話した。すると、バーテンダーは納得したように頷く。
「…なるほど。そういうわけね」
「酷いでしょ、私の彼氏」
「そうね…。でも、優しいじゃない。わざわざ電話してくれたんでしょ?」
「電話だけじゃ足りない。大輔と会いたいの」
「まるでロミオとジュリエットね」
バーテンダーが答えると、代わりのカクテルを用意してくれた。綺麗なブルー色をしていた。友香は一気に煽ると、崩れ落ちるようにつっぷす。
「会いたかったのに…」
涙をこらえるに必死だった。
ー好きなのは私だけだろうか。
大輔のことを疑いそうで、怖かった。
「深く考えないほうが良いわよ。必ず会えるんでしょ?」
空になったグラスを回収し、バーテンダーが答える。友香は答えなかった。次に会えるのはいつなのか、友香も働いているので、予定がある。また休みがかちあう日が来るのかどうか分からなかった。
「…大輔のバカ」
そう呟くと目を閉じた。