たった20年のタイムリミット。
なろうで投稿を始めてから4年と2カ月ちょっとが経ちました。書きたいことはあるけど、パソコンには向かえない駄目な作者ですが、のろのろと投稿を続けております。そして、スランプ気味なところもあるので、ここで新しい風を吹かせなければと思い立ちました!
ということで、新シリーズ始めます!
投稿頻度は未定、これからいろいろ追加予定の見切り発車なので、いつ終わるかも未定ですが、お付き合いいただければなと思います。
「長かったな…。」
物語にはいつか、終わりが来るように。
彼女の『人生』にも終わりがやってきた。
「最初は、たった20年しかない人生だったはずなのに。」
彼女は自分の生まれた世界では『20年』生きた。
しかし、そのほかの世界で生きた時間を含めると1億年は余裕で越すほど、彼女は生きたのだ。
遥か昔、彼女は自分に『人間として、20歳以下までしか生きられない』という『祝福』をかけた。
その『祝福』は『呪い』となり、彼女が人間になるたびに降りかかった。
だから、今回の人生も20歳までしか生きられない。
たった20年のタイムリミットしかない、と考えていた。
彼女はこれで最期にしようと思っていた。
だからこそ、彼女は短い20年という時間を毎日、毎分、毎秒、懸命に「人間」として、生きてきた。
彼女は目を閉じた。
流れてくるのは、今までの記憶たち。
今でも鮮明に思い出すことができる記憶の数々。
『どんなことでもいいから、悩み事が合ったら言って。相談ならのるよ!』
『驚いた?今回、貴方の手術を担当する医者は、私。』
『生きている意味?あるよ、だから、今もこうやって地面に足を付けている。』
『どんなことがあっても、変わらない未来もある。でも、それは人間の認識でしかない。』
『一番罪深いのは、私なんだろうね。』
『私は、数少ない決められた未来を、変えられる者だ。』
『多くの命を救う力があったのに、それをしなかった。』
『私は、約束を破らない。破るのはいつも『人間側』でしょ。』
『一度決めたことは、変えない主義なんだ。残念だけど、ここでお別れみたいだね。』
『また、会おう。いつか、遥か先の未来で。』
『待っているよ、どんなに時間がかかっても構わない。むしろ、死から一番遠回りしておいで。』
『さぁみんな、行こうか。私たちの時間は『永遠』だが、彼らは違うからね。』
『今回は、私も舞台に上がるとしよう。…楽しませてね、みんな。』
『何故、か…そうだな、しいて言えば、昔できた友人に言われたから、かな。』
『いいよ、いくらでも演じてあげる。正義のヒーローにだって、悪役のヴィランにだってなってあげる。だから、それ相応の結果を出してね。』
『だから、私は最初から人間には向いてなかった。』
引き出そうと思えば、いくらでも思い起こせる記憶は増えていく。
彼女は薄れていく自分の体を見るために目を開く。
辺りを見回せば、驚く人々、元々察していた人々と様々な反応が見て取れた。
やはり、人間は面白い。
だからこそ、
私は人間になりたかったのかもね。
短い命の中でどうやって生きていくかを考えるのは、見ていてとても楽しそうだ。
もう体にほとんど流れていない人間の血がそうさせるのか、それとも、彼女の親の影響なのか、それはきっと彼女にしか分からない。
「また会おう。」
こちらを見る生き物たち全員に、そう言う。
次第に体がなくなり、存在だけがその場に残った。
彼女はまだ驚きで動けない生き物たちを見てくすり、と笑ってから背を向ける。
彼女は過去を振り返らない、だから、後悔はしない。
目を覚ますと、天界にある自宅の寝室だった。
外の景色はいつも通り、ゆったりとした時間が流れている。
「終わったのか。」
ぽつりと、誰に話しかけるでもなくつぶやく声が部屋に消えていく。
すると、隣から、もぞりと動く気配がした。
「ユウ、おはようございます。戻ってきましたね。」
目をこすりながら、銀色の瞳がこちらを見る。
彼は目を見開いて、両目から透明な涙を流した。
「…お、はようございます。…私は、」
「今は、天界です。試験を達成したので、戻ってきたところですよ。」
彼女はそう言いながら、彼の目じりに溜まった水滴を指で優しく吸い取る。
彼が彼女の代わりに涙を流してくれるのは、いつものことだ。
まだ、頭の記憶が追い付いていないらしく、少しぼーっとしているユウを見て、チカはまたくすり、と笑みをこぼした。
チカの笑う姿を、焼き付けるように見るユウを無視して、チカは彼の頭を撫でる。
「記憶が混濁しているようなので、ひとつひとつ思い出していきましょう。」
「…ごめん、私が不甲斐ないばかりに。」
「そんなことはないわよ。これが初めてで、意識が戻るのが早かったんだもの。他の子たちはまだ眠りから覚めていないみたいですよ。」
チカ的には、もっと寝ていると思っていたのだから、十分早い目覚めだ。
彼女は、口角を上げた。
「ねえ、ユウ。記憶が混濁しているなら、一つずつ思い出すために私が手伝いましょうか?」
ユウは、瞬きを繰り返してから頷いて微笑みを浮かべた。
「聞かせてください、チカの生きた話…それと、私の話を。」
「ええ、もちろん。どこから話そうかな…」
それから、彼女は話し出した。
彼女があの世界で歩んだ、20年の話を。