ありふれた、どうしようもないおはなし。
息抜き
レポートやりたくねぇの一心で書き上げた
『どうか、背負わないようにな』
到底無理だったんだ、私には。
所詮人間、20××年くらいの化学力と私程度の頭脳なんかでは。
────死者の蘇生なんて。
意識が消えていく。そりゃそうだ。50代、医学の発展によって人生150年時代とか言われてるが肉体の全盛期はとうに過ぎ去ってる。そんななのに3徹もしてるんだ。ずっと実験かレポートかではあったけどまあそりゃあガタがくるわな。一人だし。
昔から周りよりかは比較的頭はよかった。でも学生時代のある日一度だけ、名前の記入漏れでテストが最下位になり。進学校だったためクラスメイトから嗤われ、家に帰って親に話すと親もまた私をしかり。それまで一度たりとも大きな失敗をしていなかった私にとってはそれはアイデンティティを見失う程で。
「飛び降り自殺の名所」なんて調べて、それが近所の山にあって。夜の12時、親が寝静まったころに一人家から抜け出して向かったところ……
そこには草臥れた研究者のような、目に生気を宿していない上髪もムダ毛もボーボーな男性が一人。
彼と目が合う。そのまま彼はこう言った。
「よう、嬢ちゃん。…こんな時間にだが、少し話していくか?」
常識的に考えたら完全にこの後R18な同人にありがちの絵面になりそうな状況。でも、私は何も考えずにただうなずく。
その後はふつうに拍子抜けするような、ただのお悩み相談になった。互いの悩みを聞き、それに対し持論を述べるだけ。だが「自殺の名所」で行われる会話としては割と適当ではあるだろう。そんな会話を2時間程度。
しかしそれでどうにかなるわけでもなく。結局私はそのまま飛び降り地点──ただの切り立った崖、下は岩が大量にある──に行き、「ありがとうございました、ではさようなら」と彼に言い飛び降り。
そして彼は。
「そんなに死に急いじゃだめだ、まだ若いんだから」
そういいながら私を追いかけるように飛び降り、さらに崖の側面を蹴って私に追いつきそのままお姫様抱っこ。そのまま、
「どうか、背負わないようにな」
そう聞こえた瞬間、私は衝撃に見舞われる。そして私は、眠気もあったのかそのまま意識を失った。
その後、目が覚めたら病院のベッドの上。どうやら家族が捜索願を出していたらしく、意識不明の私を警察の人が保護し病院へ。彼──全身を複雑骨折していて、もう息をしていない──のおかげで軽傷で済んだと診断された私は、一人分不相応な決意をする。
彼を生き返らせたいと。
「とはいえなぁ」
気合で医学部に入り、学生時代に論文を出し、株で儲けながらその利益を研究に注いできた人生。すべては彼を生き返らせるためだけに。そんなネガイは届かず。
もう手足の感覚も、光も音も受け取れない。が、最期心を吐き出すように。
「いまからそっちに逝くね、お兄さん」
こうして、また今日もどうしようもない話が終わる。
だって、いままで薄っぺらい日常を歩んできた傷心の少女にとってはあまりにも刺激の強すぎる出来事だったんだから。
身だしなみボロボロなお兄さんがティーン少女の脳を焼くのっていいですよね
いろいろ暗い事情があるとなお得
さて、課題やるかぁ…