第97話 眠気に1本
「おはよう」
寮を出ると、男が待ち構えていた。本当に連絡したのね。
2人とも暇なのかしら。休みなんだから2人で逢い引きでもしていればいいのに。
「お兄さん、おはよう」
「あんた、まだ続けるつもり?」
「ん? なにが?」
「うう、さぶっ」
分かっているわよっ!
「なんだ、風邪でも引いたのか?」
「違います」
「また腹でも出して寝てたんじゃないか?」
「寝てませんっ」
言葉通り寝ていないのよね。ふぁ、久しぶりの徹夜だからちょっと眠いわね。
確か眠気覚ましが次元収納の中に……あったあった。これ一本飲んでおきましょう。
「なに飲んでるの?」
「んぐ、んぐ、んぐ、ぷはぁ。眠気覚ましよ」
「私も欲しい」
「貴方の場合は自業自得でしょ」
「ケチ」
「はい」
「うわっとっと」
おー、落とさなかったわね。エラいエラい。
「もー、突然放り投げないでよ。落としたらどうするの」
「瓶が割れて貴方の分が無くなるだけよ。いいでしょ。落とさなかったんだから」
「そういう問題じゃ……」
「文句を言うなら返して」
「もう飲みましたー」
あっそ。
「空瓶を寄越しなさい」
ゴミは収納しておかないと。
「ゴミも一緒に入れておくの? 汚くない?」
「ちゃんと別々に保管しているから汚くないわよ」
「よかった」
「随分仲良くなったんだな」
「なってないよ」
「でしょ!」
どうやら女と見解の相違があるみたいね。
「いつ貴方と仲良くなったのかしら」
「えー、一緒の布団で寝たじゃない」
「朝まで起きていたんだから寝ていません。はい残念でした」
「ふふっ、朝まで寝かせないくらい激しかったってことよ」
「バカ言うんじゃないわよっ」
「ははっ、やっぱり仲がいいな」
「よくない!」
「でしょでしょ!」
もういい。無視して行きましょう。
「あ、待ってよ」
「置いていくわよ」
「どうせトラックで行くんだから一緒に行こうよ」
「トラックも置いていくわよ」
「分かったから、待ってってば! 拾十、早く!」
「ああ」
まったく。ただでさえ出掛けるのが遅くなったのに、これ以上のんびりしていられないのよ。
でもいいわ。最期の遊びに付き合ってあげる。最高の思い出にして逝きなさい。
次回、当たり前のこと