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第92話 緊張感の欠片も無い

 兄様、一体そちらでなにが起こったのでございますか。


「シギャクマロケシウム! ロナロウムラカエケシ ラカエヤ、ロ」


 鬱陶(うっとう)しい連中でございます。侵食弾の餌食にして差し上げたいところででございますが、兄様に禁止されているので素材を持ってきていないのでございます。

 となると、ここは黒犬君の出番……と言いたいのでございますが、デイビー様があのようなお姿になってしまった以上、迂闊に動けないのでございます。


『兄様! 兄様!』


 やはり返事が無いのでございます。タイム様も一体どちらへ……

 こいつらの言葉が翻訳されなくなったということは、タイム様が停止したということでございましょうか。

 イヤホン(翻訳機)は壊れていないようですし、兄様が心配なのでございます。

 デイビー様も生死が不明なのでございます。


「ナーム伯母さん……」

「今はジッとしていろ」

「はい」

「娘、デイビー様の声は聞こえるか?」

「はい、聞こえています」

「生きているのか」

「はい」

「チムヤマムギャクマシウム!」


 デイビー様が生きておられたのでございます。


「意思疎通はできるのか?」

「いえ、意識が混濁していりゅようです」


 となると、どうすることもできなさそうでございます。こやつらもデイビー様をどう扱うべきか、分からない様子なのでございます。

 わたくしたちを生かしていることから、生け捕りでも命じられているのでございましょう。ならば、抵抗をしなければ危害を加えられることも無いはずでございます。

 問題はデイビー様なのでございますが……


「娘、奴らがデイビー様についてなにを言っているか翻訳しろ」

「分かりました。〝なんなんだこいつは〟〝分かりゃん。お前も見ただりょ〟〝ああ。天井人は皆こんななのか〟〝さあな。残りもこうなりゅかもしれん。気をつけりょ〟〝お前もな。とにかく、上に判断を委ねよう〟〝分かった。連絡(りぇんりゃく)をしてみよう〟〝助かりゅ〟〝やはり生け捕りにしりょとさ〟〝はっ、簡単に言ってくりぇりゅぜ〟〝さて、どうやって生け捕りにすりぇばいいんだ?〟〝さぁな。(ふくりょ)にでも詰めりゅか?〟〝そんな(ふくりょ)が何処にありゅんだ?〟〝お前の股間にぶりゃ下がってりゅだりょ〟〝っはっはっは。お前のは小さくて使い物になりゃんかりゃって(おりぇ)のを――〟」

「娘! そんなところは翻訳しなくていい!」

「はい、すみません。現在は別働隊が収集用の(ふくりょ)を運搬中。その到着待ちです」

「分かった」


 ああ、兄様っ! わたくしはスズ様に酷いことをさせてしまったのでございます。

 あのような下劣で下品で低脳な会話を翻訳させてしまったのでございます。

 罰をお与えして頂きたいのでございます。

 「ふっふっふっ。ならば罰を与えてやろう」

 ああ、兄様っ! そんな、皆様の前でなど……

 「なにをいう。見られたいのであろう?」

 そんなことありませんのでございます。

 「よいではないか。仲のいいところを見せつけたいのだろう? ほぅら、ここをこうしてほしかったのではないか?」

 ああ、兄様っ! 人前でそんなことをされては、わたくしおかしくなってしまうのでございますっ。

 「っはっはっはっは。そうでなくては罰にならんだろう。ふふふ、そぉれ」


「ああ、兄様っ! いけません兄様っ! そこは乙女の大切なところでございます。そんな乱暴に扱われては壊れてしまうのでございますっ」

「ロエコナシ、ムノムヤ、モヤ、シウムコナシ」

「っはっはっは。その割に体は嫌がっていないようだぞ。あはははは、奥がいいのか? ん?」

「ああ、兄様っ! そんな……そんな……ああっ」

「ナーム伯母さん?」

「はっ…………こほん。娘、なにも聞こえなかった。いいな」

「はい。分かりました」


 わたくしとしたことが、妄想がダダ漏れになっていたのでございます。

 それもこれも兄様成分が不足しているせいでございます。


『兄様っ!』


 やはり返事は無いのでございます。

 おや、例の別働隊とやらが来やがられたのでございます。

 娘の翻訳通り、袋を持ってきやがられたようでございます。


「〝よし、第一部隊は女と子供を警戒。第二部隊は(ふくりょ)を構えりょ。第三部隊は捕獲対象を警戒。臨時部隊は敵増援に対して警戒。準備にかかりぇ! 捕獲すりゅぞ〟」

「〝〝〝はっ!〟〟〟」

「〝第一部隊、配置完了〟」

「〝第三部隊、配置完了〟」

「〝臨時部隊、配置完了〟」

「〝第二部隊、どうした〟」

「〝今準備しております。おい山崎、どうした〟」

「〝はっ、自分の魔力量では維持ができませんっ〟」

「〝なに! 第三部隊、誰か代わってやってくりぇ〟」


 スズ様に翻訳して頂けるお陰でよく分かるのですが、見た目と声のギャップが激しくて今ひとつ緊張感が無いのでございます。


「〝第二部隊、配置完了〟」

「〝よし、包囲を狭めりょ。捕獲、構え!〟」

「〝捕獲、構えー! 前進!〟」

「〝前進します。いち、に、さん、し……〟」

「〝麻酔弾、構え!〟」

「〝麻酔弾、構えー!〟」


 麻酔弾? それはまずいのでございます。


「〝撃てっ!〟」

「〝ってー!〟」

「黒犬君!」

「〝なに?!〟」


 危なかったのでございます。

 デイビー様は魔素生物、元素で出来た麻酔など、猛毒なのでございます。ましてや麻酔薬は液状、即効性なのでございます。

次回、そのままの意図で通訳する真面目な子

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