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携帯は魔法杖より便利です 第6部 古の都  作者: 武部恵☆美
第1章 それぞれの半年
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第8話 速記術

 なんとか30秒で描いて発動まで出来るようになった。でもそこから先が止まってしまった。たまにうまく発動しても不安定で直ぐ崩れてしまう。


「どうだ調子は」


 見れば分かるでしょ。一々聞かないでほしいわ。


「芳しくないようだな」


 でも「出来ない」なんて絶対に言わない。必ず出来るようになってやるっ。


「父さんは出来るのよ」

「出来ないと思ってるのか? 父さんは悲しいぞ」

「手本を見せてほしいだけよ」


 もしかしたら突破口が開けるかもしれないもの。


「手本か。意味無いんだが……よし、よく見ておけ」


 そう言って手をかざすと氷壁(アイスウォール)が出現した。


「魔法陣がまったく見えなかったんだけど。もう少しゆっくりやってくれない?」

「ゆっくり?! ゆっくりかー……うーん」


 そう言うと腕を組んで考え出した。


「どうしたのよ」

「いやな。ゆっくり描くと発動しないんだ」

「どういうこと?」

「まず、普通に丁寧に描くだろ」


 そう言いながら描き始めた。

 私が描くより遅い。

 消滅の魔法陣を描いているときから思っていたが、父さんの描く速度は本当に遅い。私の倍以上は掛かっているだろう。


「これは発動するんだ。しかし那夜(なよ)と同じくらいの早さで描くだろ」


 ん? なんか随分と歪んでいるような……


「な、発動しないんだ」

「かなり歪ね」


 しかも数秒で消えてしまった。魔法陣が歪だから当たり前だけど。


「父さんは素早く綺麗に描くのが苦手なんだ。でもこうやって描くと……」


 え? なんて描いているの? 歪とかじゃなくて明らかに別物だわ。


「ほいっと」


 なのに結果は同じ、きちんと氷壁(アイスウォール)が発動している。

 魔法陣は歪んでいた。刻まれた魔法文字は文字にすらなっていなかった。なのに発動した。何故??


「分からないって顔だな。今のは速記術だ」

「速記術?」

「特殊な文字を使って話を書き取ることだ」

「知っているわよ。それを使って描いたってこと?」

「そうだ。だからほら」


 今度は発動させずに描いてくれた。

 でも、ものの数秒で魔法陣は消えてしまった。


「長く維持できないんだ。今度は消える前に那夜(なよ)が発動させてみろ」

「私が?」

「ほら」


 父さんが描いたよく分からない魔法陣に魔力を込める。

 あれ、発動しない?

 と思ったら消えてしまった。


「つまり、父さんにしか発動できないんだ。突き詰めていくとこうなる」


 父さんがなにか描いたように見えたが描き終わると同時に消えてしまった。


那夜(なよ)がこれを真似ても無意味だ」


 真似ようにも一瞬過ぎてなにも見えなかった。


「正確に書くことだけが正解じゃない。描いた結果に意味を持たせることが重要なんだ。……ま、最終的には描くことに意味なんか無いがな」


 最後ポソッと変なこと言わなかった?!


「私、速記なんて知らないわよ」

「父さんも知らないから大丈夫だ」


 それを大丈夫とは言わないって知っているのかしら。


「まずは一筆書きを目指してみろ。自然と時短になる」

「一筆書き?!」

「こんな感じだ」


 うわ。魔法陣なんて原型が無いし、魔法文字も無理矢理一筆に書いてる。なのに綺麗に発動しているのはどうして。

 魔術って奥が深いわ。

次回、含まれていなかったらしい

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