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第73話 上官自らが手本とならねばならぬ

 リック・ハリス・アダムス君、新しい部署ではくれぐれも……背中には気をつけ賜え。っふっふっふっふっ。


「そんな些細なことはいいのだよ。おい貴様等、原因ぐらいは調べが付いたんだろうな」


 んー? 返事が無いな。


「まさか今の今までなにもせずボーッとしていたのではあるまいな。どれほど時間を与えたと思っているのだ。もう一度だけ聞く。答えられるはずだよなぁ」


 この給料泥棒共め。違うというのなら、抗ってみろ。


「発生箇所は何処だ!」

「北東エリア。第408号口跡ですっ!」

「ほう。答えられるではないか。何故黙っていた。ん? まぁいい。結界が破壊された原因はなんだ!」

「何者かが侵入したと思われますっ」

「〝思われます〟?」

「か、確定は出来かねます。情報不足です」

「情報不足……そうか情報不足か。そーぅかそーぅか。なぁーるほどねぇー………………で?」


 ふん、また黙り込みやがった。

 一から十まで指示しなきゃ分からんのか、この阿呆共は。


「破壊された結界が修復している原因はなんだ!」


 ん? また返事が無いだと。

 この阿呆共め。本物の給料泥棒だったようだな。

 おっと、私としたことが一人弱々しく手を上げておったのを見逃していたようだ。


「シャキッと手を上げんか!」

「は、はいっ!」


 うむ、元気でいい返事だ。どもらなかったらパーフェクトだったぞ。


「答えろ」

「はひっ。破壊ひた者が、し、修復したと……おおお思わりぇ……ます」

「〝思われます〟?」

「何故なら……侵入を……しゃ、悟られにゃいひょうに……すすすすすする、た、ため…………です」

「貴様の意見など聞いておらぬ!」

「も、もももも申し訳、ごごごございままままましぇん!」

「だが……そうだな。それはつまり結界を修復できる、知性ある者が侵入した……そう言いたいのだな」

「そ、その……とおりで……ござ……い……」

「ああ? よく聞こえぬな」


 そんな尻つぼみで弱々しく語ってどうする。自信を持って言わぬかっ。それでは正しきことを述べていても、間違いを述べている者に負けてしまうぞ。


「私の耳はよく空耳を聞くようなのでな。そうであろう? リック・ハリス・アダムス君」

「う……いえ……そんなことは……」

「ああ、申し訳ございません。思わず話しかけてしまいました。罰をお与え下さい」


 上官である私がきちんと手本とならねばならない。

 姿勢を正し、両手指を指先まできっちりと伸ばして足の側面に合わせ、(こうべ)を垂れ、処罰を受ける。

 ふふ、なかなか見られるものではないぞ。しかと目に焼き付けておけよ。


「い、いえ……その……」

「どうされました? 私奴(わたくしめ)に罰を与えては下さらないのですか? まさか、その広い御心(みこころ)でお許しになられた……ということでございますか」

「あ……う……」

「ありがたき幸せと存じます」


 礼を述べるときもそうだ。

 相手に対し感謝を述べるのだからな。

 やはり姿勢を正し、右手を軽く握って心臓に置き、左手も軽く握ったら腰に当てる。脇腹ではなく腰だぞ。腰だというのに脇腹に当てる阿呆が居るからな。そして、(こうべ)を深々と垂れるのがよし。このときもきっちり腰から曲げるのがよし。背中を丸めるなんて言語道断だ。

 どうだ。完璧であろう。しかと目に焼き付けておくのだぞ。


「では私と同じ移民系混血種の櫻 ジェームズ拓也君、待たせてしまったな。もう一度よく聞こえるようにハッキリと答えてくれ賜え」

「知性ある者が侵入したと愚考いたしますっ!」

「ほう。どもらず大きな声で自分の考えをハッキリと言えたではないか。最初からそう答えていれば完璧だったぞ」


 そう言いながらゆっくりと近づき、肩を優しくバシバシと叩いて労ってやる。鞭ばかりでは人は付いてこぬからな。


「はいっ、ありがとうございますっ」

「つまり、天上の者がやって来た……そういうことだな」

「あ……それは……」

「では、何処から来たと? …………答えろっ!」

「いえ、天上の者だと存じますっ!」

「ふむ」


 天上の者……つまり本当の地上に生き残りが居たということか。

 或いは、別の地下で生きていた者が天上を通ってやって来たということか。

 いずれにせよ、面白くなってきたではないか。


「確かにその可能性は貴様らの腐った脳みそよりは大きい。実地調査をせねばならぬようだな。ふ、ふふ、ふふふふふ、ふはははははは、あーっはははははははは」

次回、二元中継です

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