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第61話 エイルの痕跡?

 何者かが誰かなんて考えても仕方がない。行かなければ可能性はゼロだ。


「だからといって立ち止まることは出来ない。何者かがエイルって可能性もある。なら掘り起こすしかないよな!」

「スコップ出す?」

「そうだな。頼む」

「モナカくん、そんな必要無いよ」

「アニカ? なんとか出来るのか?」

「うん。泥猪(マッドボア)、頼んだよ」

「オレ、ガンバル」


 相変わらずアニカの召喚は分からない。

 なにしろ気がついたらそこに居るんだからな。

 泥猪(マッドボア)が勢いよく地面を掘り出した。

 のはいいんだが、辺りに土……というか灰を撒き散らしている。


「ちょっとは考えて掘りなさい!」


 そう言って出てきたのは鎌鼬(ワールウィンド)。風の防壁でみんなを守ってくれた。

 だから召喚されていないよな。


「ありがとう」

「ふ、ふんっ。土塗れになったら可哀想だから防いでるだけよ。あたしの主人なんだから、身だしなみくらい整えなさい!」

「あははは。そうだね」


 相変わらず素直になれないようだな。

 そんなんで修行の成果は見せてもらえるんだろうか。アニカは笑って誤魔化すだけだし……

 そんな感じで結構深くまで掘り起こすと、扉が現れた。この先に……エイルが居るのか?


「2人とも、ありがとう」

「オレ、ガンバッタ」

「大したことないわ。いちいちこんなことで礼を言わないで」


 とか言いつつかなり嬉しいみたいだな。尻尾で地面にのの字を書いていやがる。素直に頭を撫でてくらい言えばいいのに。


「アニカ」

「なんだい、モナカくん」

「ほら」


 と言って頭を撫でる仕草を見せてやる。


「ああ、そうだね。2人ともご苦労様」

「アタマ、キモチイイ!」

「きゃっ。だから、別に……そんな……はぅ……」


 ははっ、否定すら出来ないくらいにはデレられるようになったか。さっきより勢いよくのの字を書いていやがる。


「よし、開けるぞ」


 とは言ったものの、鍵穴とか入力パネルらしき物は見当たらない。あるのは……なにも無いな。本当に扉か?


「どうやって開けるんだ? 扉なんだよな」

「今開けるね」


 そう言ってタイムが扉に文字どおり潜り込んだ。数秒待っているとピッという音と共に扉が開いた。


「お待たせ」


 あまりにも短いお待たせだな。

 扉の奥を覗き込んでみるが、下の方へ階段が延びている以外、奥の方は暗くて見えない。

 とりあえず一歩踏み入ってみる。

 ……なんだろう。扉の外と中で空気が違うような感じがする。アトモス号の外と中よりも明確な違いがあるような気がする。

 時子も感じとったのか、身震いをした。


「マスター、足下を見て」

「これは……足跡?」


 うっすらと下に向かう足跡が残っている。


「うん」

「まだ新しそうね」


 もしかしてエイルか? ……ははっ。なんでもかんでもエイルだと思いた過ぎるだろ。

 でもタイムの顔が少し曇っているような気がする。

 もしかしてエイルの足跡じゃないのか? 俺にはどうなのか分からないな。


「タイム、ドローン(トンボ)で先を見てきてくれないか」

「分かった。飛ばすね」


 タイムの髪留めのトンボが羽ばたくと、スウッと暗闇の奥へと消えていった。代わりにドローン(トンボ)からの映像が目の前に現れた。モノクロではあるけど暗闇の中だとは思えないくらい鮮明な画像だ。

 壁はコンクリート? かなりひび割れているな。

 奥に行くほど足跡も鮮明になっていった。


「ね、ここ見て」

「これは手形か?」

「うん。足跡も少し荒れてるよ」


 ここでなにかあったのか? あったというほどには荒れていないか。

 更に奥へ進むと小部屋に出た。殺風景な部屋だが、床には扉があった。足跡の主はこの先へ進んでいったらしい。


「これ以上は無理みたいだな。よし、一旦戻るぞ。下に行く準備をする」

「「うん」」

「ええ」

「承知しました」


 待ってろよエイル。あいや、エイルと決まったわけじゃないけど、可能性は高い……はず。

 ただタイムがあまり嬉しそうな表情をしていなかったのが気になる。むしろ落ち込んでいるような気さえする。手形を見つけたときも信じたくないとか、気のせいだって感じに見えた。考えすぎかな。

 とにかく、見つけたら首根っこ捕まえてトレイシーさんの元に連れ帰ってやるからな。

次回、ということは……

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