第49話 フリーパス
気になるのは食糧生産。地図を見ても畑も養鶏所も養豚所も牧場も養殖場もなにもない。あるのは生産工場だけ。
論文の〝動植物と機械の置換について〟を読んで興味を持ったからだ。
サイボーグとかの話ではなかった。もっと根幹の部分の論文だった。それを確かめるために現地を見てくることにした。
昨日食べたものが全て工場生産ということになるのだから気にならないはずがない。
ポータルを通って来たのは総合再生所。ここで材料から食糧を生産しているらしい。
地図的にはあの2人の勤め先とは別施設だが、比較的近いところにある。
外観はいかにも工場という感じだ。ここで食品が製造されている。
しかしどう見ても食品加工所で生産所には見えない。そして何故か浄水場とゴミ収集所が併設されている。論文どおりだとするなら……そういうことなのよね。
中に入るのは簡単だ。正面から堂々と入ればいい。
守衛に止められる? 入場ゲートがくぐれない?
そんな心配は空が落ちてこないか心配して夜も眠らず天を見上げて過ごすようなもの。ああ、ここは天井が落ちてくる可能性があるのか。
とにかく、そんな心配は必要無い。
守衛と軽く挨拶を交わしてゲートをくぐる。初日みたいな赤ランプは点かないわ。当然警報も鳴らない。
普段見かけない人物を見て守衛さんは訝しんだが、ゲートがなんの反応を見せないから特に動きは見せない。
いや、なにかを見たのかハッとして急に畏まって敬礼をしてきた。私には見えないウインドウでも出たのだろう。
一度全て可視化してみたら世界がウインドウまみれになったから止めたっけ。
見えないだけでウインドウは常に複数側にあるということが分かった。
とりあえず守衛に「ご苦労」とだけ声を掛けておきましょう。なんの先触れも無しにお偉いさんが来ればこうなるのも仕方がない。なにしろ私は政治家が視察に来る前の下見という体で政治家の秘書として来ているのだから。
なのでまずは浄水場……というより下水処理場といった方がいいのかしら。そこを見に行きましょう。
…………なんで守衛さんが1人付いてくるのかしら。
チラッと見ても特に反応しないのよね。ただ付いてくるだけ。立入を抑止されたら堪らないわ。
どうにかして撒けないかしら。
次回、貴重なタンパク源




