第43話 興味ないわ
まずはランジェリーショップ。男は外で待っていると逃げ出した。情けない。
テキトーにサイズを選んで試着して確かめてから購入。こっちのが可愛いとかセクシー系がとか補正云々がと女が騒いでいたけど全部無視。最後まで不満げだったが付けるのは私よ。反論は受け付けないわ。
大体見せる相手も居ないのにそんなこと考えるだけ無駄でしょ。
貴方は見せるべき相手にその努力の結果をさっさと見せてしまいなさい。
次は外出着。どう考えても私の趣味じゃない物をガンガン勧めてくる。
「試着だけでも。お願い!」
とか言われても、してあげる義理は無いわ。次回があったら考えるだけは考えてあげる。
動きやすくてポケットが沢山……あ、そうか。今は付いてても入れるものが無いんだっけ。
とにかく! 動きやすさ重視よ。スカート?! もっての外ね。短パン?! 怪我でもしたらどうするの。
「いや、怪我とかじゃなくて……少しはお洒落しないの?」
「興味ないわ」
お洒落するような歳でも……身体年齢はお洒落したい盛りかも知れないけど……いえ、そもそもお洒落にリソースを割いた記憶が皆無だったわね。前世も今世も。
「それこそ男にモテないわよ」
「見た目に釣られるような男に興味ないわ。せめて異世界人・純元素人・アンドロイド・転生人・独立型A.I.といった、検体として役に立つくらい魅力が無いとダメね。そんな男が居たら私のところに来てほしいわ。いいえ、むしろ私から迎えに行くわよ。有象無象に時間を奪われるのは人生の無駄なの! ふんっ」
「あんた、立派なもん持ってるのに勿体ないわよ」
「立派なもの? ああ、手元が見辛くて適わないわ」
「くっ……要らないのなら私にちょうだい!」
「あげないわよ」
検体を誘惑するくらいには使えるもの。
……って、なんでそこでモナカの顔が浮かんでくるのよ。もう死んで居ないっていうのに。
今思えば死体を持ち帰って…………いや、私死体フェチじゃないし! そういうんじゃなくて、検体としてよ。検体として。
……って、私は誰に言い訳しているのよっ。はぁ。
とにかくさっさと選んでしまいましょう。これでいいわ。
「それじゃ部屋着と変わらないじゃない」
「そう? 全然違うわ」
部屋着はポケット少なめだから明確な違いが……そうか。ポケット少なめの外出着を買ったんだから大差ないか。
「そうね。変わらないのならわざわざ買う必要は無いわね」
「いいから買っておきなさいっ。はぁ……素材が勿体ない。残念美人って言われたことあるでしょ」
「無いわよ!」
研究室で素材ブレイカーと陰口を叩かれたことならあるけど。
そんなわけで部屋着を買うのはパス。
「ああ、もう! ホントにこの子は……」
トレイシーさんみたいなことを言うわね。
母さんだけだわ。そんなこと言わなかったのは。
後は日用品ね。タオル、カップ、歯ブラシ……くらいかしら。
「さ、帰りましょう」
「次は化粧品よ」
思いっきり声が被った。
「化粧品?」
「帰る?!」
また被った。
「必要無いわ」
「必要でしょ」
「仲いいな」
「「良くないわよ」」
貴方さっき仲良しアピールしていなかった? その場の勢いで態度を変えるタイプなのかしら。
それはいいとして、そもそも化粧なんかして誰に見せるのよ。
それに見せる相手も、必要も、どっちも無いわ。
「本人の意向よ。必要無いわ」
「せめてスキンケアくらい使いなさいよ」
「手荒れ? そうね。ハンドクリームくらいならあってもいいか」
いつも手荒れしていたから、見かねた母さんが寝る前に付けなさいってくれたっけ。
「洗顔石鹸と化粧水と乳液も買いなさい」
「だから化粧はしないって言っているでしょ」
「そこから?! 化粧品じゃないわよ。皮膚用化粧品っていって」
「だから――」
「最後まで聞きなさいっ!」
ぐっ、時間の無駄なのに。
本の続きでも読んでいましょう。本を開かずに誰にも見られずに自由に本が読めるって便利ね。
えーと、確か〝元素と魔素の出会いはなにをもたらすか〟だったわね。その第4章の途中だったはず。
あら? 紙の本を読んでいたはずなのに、栞が挟まっているわ。これは前世だと無かった技術ね。
気になるけど、今は本に集中しましょう。
「……ね、聞いてるの!」
「心ここに在らずって感じだぞ」
「あったま来た! 拾十、このバカ見張ってて」
「あっ、何処に行くんだよ!」
「拾十は見張ってればいいの! そこを動くな!」
「行っちまった。なんなんだよ。見張れ? 見張らなくても動きそうに無いんだが。逆にそれが困るんだよな。ここ、店の真ん前なんだぞ。那夜ちゃん、せめて入口から離れよう、な? ………………はぁ。分かってたけどね」
前提が長いわね。中々本題に入らないわ。ただ、この章で漸く触りだけ出てきたようね。具体的なことは次章かしら。
………………
…………
……
次回、男女男男女男女




