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第36話 一口は一口よ

〝コンコン〟

「ふぁい!」


 次からは気をつけましょう。振りだけでもしておかないと。


「配給を持ってきました」

「ひふぁはへはふ」


 あら、図書館があるわ。後で行ってみましょう。

 後は……へぇ、インフラは一通り揃っているんだ。見てみたいわ。


「わっ、どうしたんですかのその顔」

「あひゃおひはははえへはひへ」


 町の地図は……あった。


「……すみません。なんて言ってるのか分かりません」

「っはは。はほふぉひはぶぇへふぁふへ」


 えーと、現在地は何処になるのかしら。


「えーと……お大事に」

「はは。はひぶぁほう」


 ここがポチが開けてくれた穴かしら。

 とすると、こう来たはずだから……


那夜(ひゃひょ)ひゃん、あひゃぼはんひひひょうは」


 で、このゲートを抜けてこの施設に車を停めたのよね。


那夜(ひゃひょ)ひゃん?」


 ダメだわ。

 ここからポータルで移動したからさっぱりだわ。

 GPSみたいな位置情報はなにかないのかしら。


那夜(ひゃひょ)ひゃーん」


 この建物の住所から割り出しましょう。


「ふぉひはひへふぇへふほ?」


 よし、建物の固有IDが分かったわ。

 となると……


那夜(ひゃひょ)ひゃん!!」

「うわあ! な、なによ!」


 突然目の前に顔を出すんじゃないわよ。

 あービックリした。


「あひゃぼふぁんぶぁひょ」


 ああ、配給が届いたのね。

 ……いつ届いたのかしら。

 私は壁に立てかけてあった机の脚を広げて部屋の真ん中に置いた。

 その上に男が2人分の食器を並べた。

 私の分は昨日と大して変わらない。

 ご飯と根菜のお味噌汁に焼き魚だ。

 男はご飯とお味噌汁は同じだが、魚ではなくコロッケだ。

 ご飯は大盛り、コロッケは2枚だからその辺が追加した品なのだろう。

 コロッケに添えられている千切りのキャベツは少し欲しいかも。

 焼き魚には大根おろししか付いてこないからな。


「いただきます」


 やはり今朝も(はらわた)が抜かれている。残念。

 無い物を嘆いても仕方がない。あるもので我慢しよう。

 お醤油をおろし大根に垂らして、焼き魚と一緒に食べる。んー、辛みが効いてていいわ。ご飯が進むわね。

 お味噌汁は、ジャガイモ、ニンジン、ダイコン、ゴボウだ。結構具だくさんね。

 そうやって舌鼓を打っていると、シャキシャキと心地いい音が聞こえてきた。どうやら男がキャベツを頬張っているらしい。その口からはだらしなく千切りのキャベツが数本垂れ下がっている。それが咀嚼と共に口の中へ吸い込まれていった。


「ひゃんば。ヒャベフばほひいほふぁ?」

「い、要らないわよ」


 迂闊だ。そんなに物欲しそうな顔をしていたのだろうか。


「えんひょふふは。ほは」

「遠慮なんか……」


 男が皿を持ってグイッと近づけてくる。

 う……し、仕方ないわね。好意を無下にするのも悪いし、ひと口頂きましょう。

 お箸で千切りをガシッと掴むと、そのまま口の中に押し込んだ。口からはみ出した千切りを箸で押し込みながらモッシャモッシャと噛み砕く。


「ははっ、ほんほうひえんひょぶぁはいは」

「ふふはひはへ。ひほふひほひほふひ」


 うわ。千切りなのに独特の苦みが無いわ。すっごく甘い。なんでサラダセットはご飯に付かないのよ。まったく。お昼はパンにしようかしら。


「ごちそうさまでした」


 食べ終わったので流しで洗おうと思ったら、男はまだ食べ終わっていなかった。しかも半分も残している。昨日はかなり早かったように思うが、朝はゆっくり食べるのだろうか。

 食器を洗い、歯磨き代わりに口をすすいで男が食べ終えるのを待つ。

 男のくせにチマチマ食べるのね。ひと口がかなり小さい。私より小さくない?

 待っている間、さっきの続きをしてしまいましょうか。

 ………………

 …………

 ……

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