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第30話 無関係

 男はベッドに座ると、隣に座るようベッドをポンポンと手で叩いた。

 仕方ないわね。男の隣に気持ち離れて座った。


「それじゃ、配給を頼もうか」

「配給?」

「それも忘れちゃったのか。基本的には全て配給なんだ」

「全部?」

「そうだ。ご飯も服も雑貨もなにもかも。資源が限られているからね」

「でもその服……」

「ああ、これは要は贅沢品。ベルと交換して手に入れることが出来る」

「ベル?」

「お金のことだよ。お金は覚えてる?」

「うん。通貨のことだよね」

「へぇ。難しい言葉を知ってるんだね」


 当たり前でしょ。記憶喪失であって子供じゃないんだから。

 でもとりあえず誇らしくしておけばいいかな。


「えっへん!」

「ははっ。ご飯も配給だから、頼めば貰える。足りなければベルを払って追加することも出来る」

「ふーん」

「とにかく頼もうか」

「うん! ……どうやって?」

「配給ウインドウを出すんだ。同じようにしてごらん」


 またあのウインドウか。

 男が出したのは当たり前だけどポータルウインドウとは別のモノね。

 あれが配給ウインドウか。つまり……


「配給ウインドウ出ろ!」


 ビンゴ! 男と同じウインドウが出たわ。


「えっ?!」

「あれ、なにか間違ってたかな?」

「あ、いや。間違ってはないんだけど……」


 煮え切らないわね。はっきり言いなさいよ、まったく。

 えーと、これが今日の配給分ね。

 しかも3種類のセットの中から選択できるのか。

 じゃあこのご飯と菜っ葉のお味噌汁と焼き魚にしましょう。

 後は確定すれば……終わりね。


「出来た!」


 って、この男は注文しないのかしら。

 子供じゃないんだからこのくらい出来て当たり前なの。そんな放心して見つめられても困る。

 年相応のことをしただけだと思うけど。

 まさか知能まで幼児の演技をしないとダメなの??

 言動だけで十分だと思ったんだけど。


「お兄さんは頼まないの?」

「あー、そうだな」


 なにを頼むのかしら。

 ああ、食パンとジャガイモのスープとハムエッグのセットね。

 食パンを2枚から4枚にして、ビールかしら。お酒を1杯追加したわ。

 それで1500ベル……高いのか安いのか分からないわね。


「1500ベル?! なんか高くなってないか?」


 知らないわよそんなこと。

 普段は食堂らしいけど、ここで頂くんだから配達料が含まれているんじゃないの?

 でもそれだと私の分も配達料が掛かるはずか。

 気にするだけ無駄ね。

 物価が高くなろうが私には関係ないし。


「なぁ那夜(なよ)ちゃん、どうしてあそこに居たのか覚えてるかい?」


 いきなりね。まさか地上から来た……なんて言えない。


「分かんない」

「そっか。分かんないか。お父さんとお母さんは?」

「居るよ」

「何処に居るんだい?」

「えっと、母さんは遠いところで、父さんはお仕事してる!」

「遠いところ……もしかして亡くなってるのかな……」


 生きているわよ!


「ごめんね」


 謝られても困るんだけど。


「え、えーと。それでお父さんは何処でお仕事してるのかな」


 地上で魔法陣を描いているわ……なんてね。


「知らなーい」

「そっかぁ。お家は何処かな」


 結界都市(ラスティス)のクラスクなんて言っても分かるはずもない。

 もしかしたら前世の住所を言えば……分かるわけないか。


「分かんなーい」

「そっかぁー。まいったなぁ」


 そんな話をしていると、扉がノックされた。


「はい!」

「配給を持ってきました」

「今開けます」


 男の声ね。食堂の人かしら。

 扉の外に立っていたのは白い割烹着を着たおじさんだった。


「やあ、こんばんは」


 どうして家主より先に私に声を掛けるのかしら。


「こんばんは」

「これが嬢ちゃんの分だ」

「ありがとう!」


 おじさんからアルマイトかしら……の皿を受け取る。

 一皿に全てが載っているのね。

 味噌汁だけボウルに入っているけど、それも皿に載せられている。

 どうせならご飯もボウルに入れてほしかったな。


「で、これがお前さんの分」

「どうも」

「…………妹さんか?」

「ああ」

「そうか。食器は階段前の台車に載せておいてくれ」

「分かった。なぁ、追加の配給なんだが、高くなる通知来てたのか?」

「そのことなんだが、やっぱりお前さんもなのか」

「俺も?」

「ああ。追加するヤツはみんな口を揃えて同じこと言ってるんだ。だが事前通知もなしに変わるなんて今までなかったからな。それにどうも女子寮の方も同じ状況らしい」

「女子寮も?!」

「さっき連絡があってな。うちの寮だけってことはないだろうから、もしかしたらプラントの方でなにかあったのかも知れない」

「それって大丈夫なのか?」

「今後配給量が減るかも知れないな」

「マジか!」

「これが食糧だけなのか。それとも全体的なのかは分からない。とにかく通知を待つしかないさ」

「そうだな」

「っと、長くなった。冷める前に食べてくれ」

「ああ」


 インフレが発生しているのね。でも事前に通知があるのが当たり前ってどういうことかしら。

 といっても、私が気にしても仕方がない。ここに住むわけじゃないんだから。


 私には関係ない……

次回、食べカス

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