第27話 ワープポータルの危険性
ポータルは先程より賑わっていた。
なるほど。車が少ないはずだ。移動はほぼポータルを使っているのだろう。
車道を走っているのはトラックなどの輸送車両ばかりだったし、バスやタクシーもまったく見かけなかった。乗用車がごく稀にいる程度。荷物の運搬にポータルは使えないみたい。
さっきと同じポータルの建物だけど、さっき出てきたところとは違う自動ドアだ。
男がポータルウインドウを出したので、私も出すことにする。
「ポータルウインドウ出ろー!」
「っはは。口に出さなくていいんだぞ」
子供っぽさを演出しただけよ。
「そうなの? ふーん、分かったー!」
男の操作を見よう見まねでやってみる。
特に変わった操作方法ではないわね。ただのタッチパネルと同じだ。面白いことにちゃんと触った感覚がある。でも裏側とか側面からだと触れることが出来ない。
「ん? ははっ、なにしてるの?」
試しに男の画面を触ろうとしたが、触れなかった。他人は触れられないモノなのかしら。
……いや、この男は私のポータルウインドウを触って操作していたわ。なにか条件があるのかしら。
「さ、貸してごらん。なよちゃんのポータルも設定してあげるよ」
「んーん、終わってるよー」
「え? 自分でやったのか?! 見せてごらん」
「うんっ。ポータルウインドウ出ろ!」
「っはは。気に入ったのかい?」
違うわよっ。
「えーっと」
やっぱり普通に触って操作できている。あ、男の魔力の質がほんの少しだけど変わったわ。なるほどね。こうすればいいのか。
「ちゃんと出来てる……もしかして思い出したのかい?」
「んーん。おじ……お兄さんの真似をしただけだよ」
「ああ、だから行き先もちゃんと出来てたのか。なよちゃんは凄いな。えらいえらい」
あー! 頭を撫でるな! 髪が乱れる!!
「っふふふふ」
うう、顔で笑って心で泣いて……辛いわ。
男に手を引かれながら建物の奥に進んでいく。通路がかなり広く、さっきと違って大勢の人と一緒に歩いている。
奥から来る人は1人も居ない。入口と出口は完全に分離しているらしい。
部屋に出るのかと思ったが、そのまままた内臓が浮くような感覚に襲われた。すると周りに居た人たちが居なくなり、代わりに別の人が歩いていた。
利用者が少ないのか、さっきまでの混み具合が嘘のようにスカスカになった。
それにしても少ないとはいえこれだけの人が転送されてきているのに事故らず転送できるのは凄いわ。転送系で怖いのは転送先での物質干渉。よく壁や地面や石に樹木などにめり込んだ死亡事故があるけど、これだけの人がなにも気にせず安全に転送できているのは凄い。しかも駅の改札を通ったと思ったら、目的の駅の改札から出てくるみたいな感覚でよ。
前世でもここまでの移動手段は出来ていなかったわ。過去の文献にも出てきていなかったはずだから、ここで開発されたモノなのね。ああ、もっと詳しく見たいわ。何処か中枢に潜り込めるような端末はないかしら。
「どうした、そんなにキョロキョロして。珍しい物でもあったか?」
珍しいモノだらけよ。
「何処に行くの?」
「ん? お兄さんの住んでいる寮だ」
「ふーん」
そういえばそんなことを言っていたわね。
この男の部屋にそんな端末があればいいんだけど……淡い期待を持つのは止めましょう。
「ほら、ここがお兄さんが住んでる寮だぞ。お姉さんはこの隣の寮に住んでるんだ」
それってこっちが男子寮であっちが女子寮なんじゃないの? 男子寮に連れ込むつもりかしら。
次回、堂々としていましょう




