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第24話 私たちの関係性

 無人の建物に囲まれた道を走り抜ける。マンションや商用施設だろうか。一戸建てのような建物は見かけない。みんな鉄筋コンクリート製だ。

 5分ほど走ると右側の建物がなくなり、代わりに金網が張り巡らされていた。

 同じように電気でも流れているのだろう。例の看板がぶら下がっている。

 しばくするとさっき見たようなゲートが見えてきた。そのゲートへ右折して入っていく。

 今度は赤ランプが回ることなく、すんなりとバーが上がっていく。

 さっきデータベースに潜り込んで細工したからね。もう面倒なことにはならないわ。

 複合施設なのか、大きな工場が幾つも並んでいる。その1番手前の工場に入っていく。

 積み上がっている瓦礫の山にバックで着けると荷台が傾いていき、積んでいた瓦礫がガラガラと音を立てて落ちた。ここに集積してどうするのかしら。

 瓦礫を落とし終えると走りながら荷台を下げ始めた。そして同じような車が駐車してあるところに停めた。


「はい、お疲れさま」

「お疲れー」

「お、お疲れさま?」

「お! 〝お疲れさま〟言えて偉いぞー。よしよし」

「きゃははっ」


 ……これ、いつまで続ければいいのかしら。

 とにかく、必要な情報を手に入れるまで我慢ね。


「退勤処理は私がしておくから、拾十(ひろと)はその子を連れてさっさと帰りなさい」

「いいのか?」

「その子を連れて中に入るわけにはいかないでしょ」

「そうだな。悪い」

「いいって。私と拾十(ひろと)の仲じゃないか」

「そうだな」


 〝仲〟……恋人ではなさそうだけど。


「ちゃんと寮母さんに言っておくのよ」


 寮住まいなのか。面倒ね。


「えー」

「〝えー〟じゃなくて。見つかったらもっと面倒でしょ。ちゃんと〝妹〟として紹介しておきなさい」

「いや、でもさ……」

「大丈夫よ。ちゃんとゲートを通れたでしょ。そうよね、お嬢ちゃん」


 この女……私の完璧な演技がバレているっていうの? ……違うわね。やっぱりちゃんと気づいているんだわ。


「どういう意味だ?」


 男は気づいていないみたいだけど。

 とりあえず、ちょっと脅えた演技でもしておきましょう。伏し目にして男の腕にしがみ付いてっと。


「分かってるでしょうけど、兄妹は結婚できないからね。〝妹〟だって信じていいのよね」


 言いたいことは分かるけど、私には関係ない話よ。


「当たり前だろ。なんなんだよ」

「ふっ、また明日!」

「お? おう。またな」


 でもこのままじゃ癪だからちょっと反撃しましょ。


「バ、バイバイ……おばちゃん」

拾十(ひろと)! ちゃんと教育しときなさい」

「ええっ?!」


 厄介な女も居なくなったし、後はこの男をどう使うか……ね。

 まずはその寮とやらに行くのかしら。


「なんだかな。よし、行こうか」

「何処へ?」

「まずは………………そう! 服を買いに行こう」

「お洋服?」

「ああ。でも女物なんて買ったことないからな。どういうのがいいんだ?」


 作業しやすければなんだっていいわ……って言えれば楽なのよね。どうしよう。


「んー、(おんな)じの!」

「それは……困ったなー。仕方ない。店員にお任せしてみるか」


 こういうときはあの鬱陶しい店員も役に立つわね。似合ってもいないのに〝お似合いですよ〟とか、〝素敵ですね〟とか……とにかく売ろうと必死なのよね。放っといてほしいわ。

次回、移動手段

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