第23話 正統進化と派生進化
「なよちゃん!」
「ふっ」
絶望的な顔で叫ぶ男を監視員が嘲笑っている。
その余裕な顔もそこまでよ。
嘲笑っていた顔が段々と渋い顔になっていく。
そしてスキャナの光が消え、スキャンが終了した。スキャナーから警告音が鳴ることは無く、緑色の光が漏れて見えてくる。
「え?」
「ふんっ、問題なしか。下らん手間を取らせやがって。おい! 積み荷はどうだ」
「はっ! 特に怪しい物はありませんでした」
「む……ふむ。誤動作でもしたか。チッ、行っていいぞ」
まるで野良犬でも追い払うかのようにシッシッと手を振ってきた。何処までも失礼なヤツね。
ふっ、それも今日までよ。
車に乗り込むと、監視員がボタンを押してバーを上げた。
やっと中に入れるのね。
古の都。魔法と科学が融合する世界。でも魔法はあくまで脇役。科学が主役だ。
前世の遙か昔の文明。失われた技術がここにはある。しかも五千年という時を掛けて進化した技術が……
一体どれほどの物があるのだろう。私たちはどれだけ彼らに追い付けたのだろう。
それがこの目で見られる。こんなに嬉しいことはない。
ゲートを抜けても道と廃墟なのは変わらない。でもゲートの外よりしっかりしていて、崩れてはいない。住もうと思えば住めそうなレベルだ。
「ふぅ。一時はどうなるかと思ったよ」
「……そうね」
「なんだ? 怪訝な顔して」
「拾十はなんとも思わないの?」
「なにをだ?」
「はぁ。なんでもないわ。貴方が羨ましい」
「そうか? ふ、ふはははは」
「……バカ……」
「ん?」
「な・ん・で・も・な・い」
「?」
「納品が終わったら好きにしなさい。ああ、少なくとも服は買ってあげなさい」
「ええ?!」
「そんな格好、目立って仕方ないでしょ! それから食事も。拾十のを分けるんじゃなくてちゃんと申請しなさい」
申請?
「わーってるわーってる、わーってるから!」
「〝妹〟……なんでしょ。大事にしなさい」
「だからわーってるって……しつこいなぁ」
「拾十がそんなだからでしょ!」
「えー」
「〝えー〟じゃない!」
短い間だけど、この男の世話になるのがよさそうね。
それに、どうせ数日もすればこの2人は……ううん、2人だけじゃない。さっきのいけ好かない監視員も、この先に居る人たちも……
ダメダメ、ここで最後なんだから。ここさえ終われば…………
待っていてね、母さん。
今度こそ、間に合わせるんだ。
次回、おじちゃんとおばちゃん




