第19話 そういう設定
隠れるようなところは無いし……仕方ないわね。
「こんなところでなにをしている」
薄汚れた作業着姿の男だわ。こんなところになにしに来たのかしら。
「ひっ、だ、誰ですか」
「俺はここで資源回収をしてる五十三拾十だ。お前は?」
資源回収? この辺のガラクタを集めてるってことかしら。
「私……は……那夜」
「なよちゃんか」
〝那夜ちゃん〟?!
そこまで幼く見えるのかしら。
「こんなところでなにをしてるんだ」
「ここ? ここ……は……何処?」
「ん? ここはもう使われなくなったところだ。俺たちはここから資源を回収しているんだ」
〝俺たち〟ってことは、他にも誰か居るのね。
「なよちゃんもそうなのか? 見ない顔だな。許可証はあるのか」
資源を回収するにも許可証が必要なのね。
「許可証? えっと……」
「うーん、身分証を見せてみろ」
「身分証……うう、思い出せないわ」
「思い出せない?」
「気がついたらここに居たの。ね、ここは何処なの? 貴方はなにをしているの?」
「おいおい、大丈夫か? 頭でも打ったのか?」
「頭……うっ、痛い……」
このまま記憶喪失ってことで通せないかしら。
「しょうがないな。付いてこい」
「?」
「病院に連れてってやるから」
病院もちゃんとあるのね。でも連れて行かれるのはマズいわ。
「病院……いやっ! 怖い」
「怖くないって。ほらっ」
「いやあっ!」
「「「がうるるるるるる!」」」
「うおっ! な、なんだこいつ」
あ、バカ! なに出てきているのよ。隠れていなさいよ、もう。
「三つ首の犬?! 奇形……処分されずに捨てられたのか?」
「「「ぐるるるるるる」」」
「くそっ。なよちゃん、逃げるんだ! あっち行け!」
あっ、ポチに石を投げないでよっ。当たったら痛いでしょ。
「ダメっ!」
「なよちゃん、逃げろっ。なにやってんだ」
私がポチに抱き付いたから石を投げるのを止めたわ。よかった。
「虐めちゃダメっ」
「なよちゃんっ! ……え?」
「「「くうーん。ぺろぺろぺろ」」」
「きゃははっ、くすぐったぁい」
って、いい年してなにやらせるのよ。まったく。あー恥ずかしい。
「大丈夫……なのか?」
「虐めちゃメッ!」
「う……ご、ごめん」
「「「がうっ!」」」
「ひぃっ」
「ポチ、食べちゃダメ」
「「「きゅーん」」」
「食べっ……ゴクリ」
「大丈夫だよ。ポチは優しいもん。ねーっ」
「「「わんっ!」」」
「そ、そうか……は、ははははははは。ほっ。もしかしてなよちゃんの飼い犬なのか?」
「んー、多分」
「多分なのか……しかし突然現れたように見えたけど、こんな大型犬が何処に居たんだ?」
今まで首の後ろに隠れていました……なんて言える大きさじゃないわね。
大きさに関しては自由自在なのかしら。もしかしてタマも?
次回、死体運搬?