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第186話 高い高い

 デイビーさんだけを残し、フブキも含めて全員が外に出た。そこで父さんが呆けた顔をしていた。


「どう? 本当だったでしょ」

「ああ。まるで悪夢を見ているようだ」

「夢ではありません。現実ですよ」

「そのようだな。いやはや。(りん)様のご先祖様は凄いものを作ったんだな」


 また〝大罪の娘のご先祖様〟だなんて……


「はい。私たちのご先祖様は凄いですね」


 私も最初は色々驚かされたわ。


「さて、それでは(りん)様がお目覚めになるまでお待ちするぞ」

「叩き起こせばいいんですよ」

那夜(なよ)! なんてことを言うんだ」

「ほら、いつまでモナカの腕の中で寝ているつもりですか!」

「なんだ。ただのヤキモチじゃないか」

「なにか仰りましたか?」

「イエナニモモウシテオリマセンッ! ですから火球(ファイヤーボール)をおしまい下さいっ」

「っははは。本当に親子なんだな」

「疑ってたのかい?」

「今ので何処が親子に見えるというのですか!」

那夜(なよ)?!」

「息ピッタリじゃないか。そういうのが親子ってもんなんだろ」

「だろ」

「揃っていませんっ」

「マスター……」


 そうか。モナカさんは転生する対価として、人との関わりに関しての記憶を消されたのでしたね。

 だから両親、友人はおろか、ご自分の名前まで……

 知識はあっても、それを誰に教わったのかが分からない。遊んだ記憶があっても、誰と遊んだのか分からない。誰かと暮らした記憶があっても、両親のことは覚えていらっしゃらないのでしょう。


五月蠅(うりゅさ)いのぅ」

(りん)? 目を覚ましたのか」

「うむ。うん? 何故儂はパパに抱っこさりぇておりゅのだ」


 大罪の娘の話し方が戻った? でもパパは変わらないのですね。


「覚えていないのかい?」

「覚えておりゃぬ」

(りん)様、お目覚めでございますか」

「む? ……まぁよい。ああ、どうやりゃ儂は寝ておったようだな。なにがあった」

「はっ。(すず)ちゃんの記憶と(りん)様の記憶が混ざった結果、(すず)ちゃんの記憶が色濃く出て、そちらに性格が引っ張られてしまったようです。今現在はお休みの間に最適化が行われ、(すず)ちゃんの影響が少なくなったものと推察されます。その際、忘れたい記憶が消去されたものかと存じます」

「むむ、そうか」

「抱っこされている理由はその過程で消去されたのでございましょう。如何しますか?」

「よい、話せ」

「はっ。泣いた(りん)様をモナカ君が抱っこしてあやし付け、そのままお休みになられたからでございます」

「く……そうか……あい分かった。パパよ、迷惑を掛けたな。もうよいぞ」

「ん? なんだ。抱っこされるのは恥ずかしいのか?」

「そうではない!」

「じゃあ、嫌なのか?」

「何故悲しそうな顔をすりゅ。いいから降りょせ」

「嫌じゃないんだな!」

「嬉しそうな顔をすりゅな。そういう問題ではない!」

「ははっ、いいじゃないか。そぅら、高い高ーい!」

「や、やめんかっ」

「でも、顔は〝もっと〟って言っているぞ」


 凄い笑顔でキャッキャしながら、口では嫌がっていますね。

 一体なにを見せられているのかしら。


「これは、(すず)の記憶が出ておりゅだけだ。儂の意思ではないっ」

「そぉら、飛行機だぞー。ブーン!」

「きゃははははは……って、やめんかーっ」


 一瞬、完全に(すず)ちゃんに戻っていたようですね。この調子なら、大罪の娘を追い出すことも可能なのでは?

 その隙にキューブを展開して上書きすれば、(すず)ちゃんを取り戻せるはず。


那夜(なよ)、変なことは考えるな」

「な、なにがですか?」

「きちんとした手順を踏まなければ、(りん)様の記憶が残った状態になるぞ。今の(りん)様のように」

「それはよくありませんね」

「だから時を待て」

「その時間があまりないと言っていませんでしたか」

「不完全に戻すよりはいいだろう」


 それもそうね。それで余計時間を食っていたら本末転倒だわ。2人のためにも、今は我慢しなくてはいけません。

 しかし、大罪の娘なら簡単に抜け出せると思うのですが、何故そうしないのでしょう。

 モナカ君を叩いている手も、本気で殴っているというよりは戯れ付いているようにしか見えません。

 嫌がっている振りをしている? なんのために?

次回、魔力無し

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