表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
183/193

第183話 本名

「俺たちの結論は、(りん)に協力することで決まりました」

「本気ですか」

「はい」

「そう……本当に、バカなんだから……」

「え? なんですか?」

「なんでもありません。ありがとうございます」

「いいえ。エイルのためです。那夜(なよ)さんのためではありません」

「……そうですか」

「それで、どうすればいいんですか?」


 いつの間にか(りん)は寝ていた。俺の腕の中でグッスリ寝ている。泣き疲れたのかな。体力は見た目どおりということか。


(りん)様がお目覚めになるまで待ちましょう」

「分かりました」

「それと、魔法陣の外側へ移動しよう。アトモス号だったかな。乗船させてもらえるだろうか」

「タイム、船員登録できるか?」

「乗せるの?」

「乗せないわけにはいかないだろ」

「仕方ないなぁ。オペレーター(タイム)、お願い」

〝了解〟


 オペレーター? また新しいのが出てきたのか。

 ……あれ?


「タイム、アトモス号は(すず)とルイエで動かしていたんじゃないのか?」

「んと、ルイエならエイルの……那夜(なよ)さんのところに行ったからアトモス号には居ないよ」

那夜(なよ)さんの? ルイエ、そうなのか?」


 那夜(なよ)さんに向かってそう尋ねると、那夜(なよ)さんが左手を前に出した。

 すると手首辺りから掌サイズのちょっと幼いエイル似の女の子が浮かび上がった。


「あ……はい。勝手に抜け出して済みませんでした」


 あの女の子がルイエか。ははっ、エイルの妹っぽい。


「いいよ。多分タイムも同じことをするだろうし、ルイエを止められるわけないからな」

「もう、なに言ってるの!」

「っはは」


 タイムはふくれっ面になりながらも、何処か嬉しそうだ。


「ルイエ、よかったな」

「……はい」


 ん? ちょっとうつむき加減で、笑顔も微妙に寂しそうだな。

 やっぱり本人が〝私は那夜(なよ)よ〟って言っているから素直に喜べないのかも知れない。


〝済みません。登録に関して2・3質問を宜しいでしょうか〟

「ああ、構わないよ。なんだい?」

〝登録名は本名で宜しいでしょうか?〟

「え? 分かっちゃった?」

「はい」

「うーん。じゃあ〝那夜(なよ)の父さん〟に変更しといて」

「了解」


 いいのかそれ。というか、本名分かったのか……


『なあオペレーター(タイム)

『お答えできません』

『おい、俺はまだなにも言っていないぞ』

『業務上知り得た情報は、たとえマスターといえども開示できかねます』


 チッ、先回りされてしまった。


〝それから那夜(なよ)様、宜しいですか〟

「はい、なんでしょう」

〝登録名称の変更を致しますか?〟


 名称変更! やっぱりエイルなんだな。

 ん? 父さんをちょっと見詰めたかと思ったら、ため息を()いたぞ。


中州(なかす)那夜(なよ)でお願いします」

〝了解〟


 中州(なかす)っていうのか。それが前世の名前……だよな。


五十三(よみ)じゃないじゃん!」


 タイムがなにか言っているな。五十三(よみ)


〝マスター、(りん)様は如何致しますか〟

良部(いいべ)(りん)に変えてくれ」

〝了解〟

「マスター!」

「モナカ!」

「今は(すず)じゃないんだ。またグズられても面倒だろ」

「なら、モナカも本名にしたら」

「俺は……本名を知らないんだからいいだろ。それに、タイムが変更したらどんな名前だろうと〝マスター〟になっちまうし」

〝申し訳ございません〟

「あ、いや! オペレーター(タイム)を責めたわけじゃないから。ごめん」

〝いいえ、事実ですから〟


 はぁー、失敗失敗。でもこれで登録が終わったな。


「では中州(なかす)さん、乗って下さい」

「いやいや。父さんのことは今までどおり、父さんと呼んでほしいなー」

「と、父さん……ですか?」

「お前に娘はやらーん!」

「は?」

「父さん?!」

「っはっはっは。やっぱり一度は言ってみたいじゃないか。うん、モナカ君なら問題ない。娘を、那夜(なよ)を幸せにしてやってくれ」

「父さん!」

「っはははは、はぁ」


 疲れる。


「ポチ、タマ、ハウス!」

「「「がう?!」」」

「にゃ?!」


 え、あれって白虎……虎だよな。

 タマ? 猫かよ。


「いや、お前たち乗れないだろ」

「「「がう……」」」

「にゃあ……」


 あ、消えた。

 え、ポチ? 何処に行ったんだ?

 え、あれ?


「よし、では乗せてもらおうか」

「あ……え?」

「はぁ……モナカさん、安心して下さい。ちゃんとポチも一緒に行きますから」

「本当に?」

「本当です。そうよね、父さん」

「ああ。何処に居ても直ぐ呼び出せるからな。そういう意味ではいつも一緒だ」

「そうですか。ほっ。あ、そうだ。オペレーター(タイム)、タラップを降ろしてくれ」

〝了解〟

次回、おまいう

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ