第18話 穴掘り名人?
入るときの扉は埋もれていた。
そして多分最後の扉も埋もれているらしい。
つまり使われなくなって長いということだろう。
なんとか無理矢理扉を開けることには成功したけど、完全に埋まっているのよね。
掘るにしても道具は無いし、この狭い部屋で魔法を使って吹き飛ばそうとすれば私も無事ではないだろう。
「ポチ、ここ掘れないかな?」
「「「がう?!」」」
「がう!」
「わんわん」
「がーうがう」
なんか三つ首で話し始めちゃったわ。
出来ないのかしら。
でも耳元でわんわんがうがう騒がないでほしい。
仕方ない。石人形を作ってやらせればいいか。
えーと、材料は……
「「「がうっ!」」」
え? なになに。
肩から飛び降りて大きくなったと思ったら、頭を押しつけてきて壁際に追いやられてしまったわ。
「「「がぅ!」」」
「えーと、動くなってこと?」
「「「がう」」」
ここでジッとしていればいいのね。
するとポチは前足を使ってバリバリと扉ごと土砂を掻き始めた。
あーあ、聖遺物ごと豪快にやってくれたわね。
あの扉一つだって貴重なのに。
それに、ぺっぺっ。もー! 土が飛んでくる!
幸い怪我をするようなものは飛んできていないからいいけど。
シールドを張っておいた方がよさそうね。
確か魔法陣は地の陣で固定と硬化を付与……で、文言は〝万物から身を守る大盾となれ〟だったかしら。
魔力量は……うん、これでよし。
魔法陣が完成すると魔法の大盾が現れた。
これでどうにかなりそうね。
でも埃っぽいのは防げないか。
はぁ…………
扉の倍以上の大きさのポチが掘れば、扉なんて狭い範囲で収まるはずもなく、壁だったところも今ではただの空間になっている。
「「「わんっ!」」」
部屋の半分ほどが埋まった頃、漸く外の……中の? 光が見えてきた。
……帰るときはこの瓦礫をまた取り除かないといけないのね。
人ひとりが通れるくらいの穴が出来たところでポチは私の肩に戻ってきた。
「ありがとう」
地下だというのに穴の向こう側はかなり明るい。
穴から顔を出すと、その眩しさで思わず腕で光をさえぎってしまうほどだ。
地下なのに地上と変わらない明るさ……というか日差し。
暖かい。
天井を見上げると、青空が広がっていた。
いや、広がっているのは一方だけで、反対側は空が割れて宇宙が見えているかのようにくらい。
あっちは夜なのかな。
地上に目をやると、辺り一面瓦礫の山。
建物も崩れてボロボロ……?
ううん、自然に崩れたというよりは人為的に砕いた感じにも見える。
私が出てきた扉は地下空間の端っこに取り付けられていたようだ。
ただ、壁はきちんとコンクリートで固められているのに、扉の周りは雑に土砂で埋められている。
どう見ても自然に崩れて埋もれたのではないのは明かだ。
「誰か居るのか」
男の声だ。
人が居るというのは確かなようだ。
まさかいきなり見つかるとは思わなかった。
次回、幼女登場?!