第17話 最後の扉の向こう側
えーと、このパネルね。生体認証かしら。適当に突破して……よし。
「ほう。まるで最初から登録されていたみたいに開けるな」
「このくらい開けられなかったら技師は務まらないわ」
「そんなわけないだろ。那夜の基準はおかしいぞ」
「そうかしら」
基準がおかしいのは父さんの方だと思うけど。
「それじゃ行ってくるわ。どのくらいで戻ればいい?」
「そうだな……2・3日は掛かる。終わったら迎えに行くから気にするな。ああ、それから護衛にポチを連れて行きなさい」
「「「がう?!」」」
「護衛? 魔物でも居るの?」
「魔物は居ないが現地人なら居るぞ」
「生き残りが居るの?!」
「居るぞ。数万単位で生きている」
「数万……その人たちも殺すのね」
「魔素と交わっているものを連れて帰るわけにはいかないからな」
その言葉どおりなら、私も帰れないって分かっているのかしら。
それとも純粋な魔素だから問題ないとでも言うのかしら。
「それじゃ行ってくるわ」
「気をつけて行ってこい」
「「「わん!」」」
ポチは父さんに別れを告げると、ジャンプして私を踏み潰そうとしてきた。
幾ら父さんと別れたくないからってそれは悪手じゃないかしら!
と身構えたら、ポチは瞬く間に小さくなって私の肩にチョコンと舞い降りた。
「貴方、小さくなれたの?」
「「「がう!」」」
これなら目立たないわね。それにあの大きさのままだと扉すら通れなかっもの。
決して小さくはない扉。その先には下へと続く階段が延びている。かなりボロボロだけど、歩けないほどではない。そして憧れの技術がこの階段の先にある。しかも生きている人間に直接聞くことが出来る。
1歩、また1歩階段を降りていく。
初めは光が差し込んでいたが、直ぐに光が届かなくなった。明かりがほしいな。すると周囲が明るくなった。
コンクリートで固められた壁と天井。経年劣化を抑える魔法陣が埋め込まれているみたい。それでも抑えきれないほどの年月が経っているのだろう。埃が凄い。
壁に触れるとアッという間に手が汚れてしまった。パンパンと手を叩いて汚れを落とす。んー、取れない。
とりあえず気にせず先に行こう。
暫くすると小部屋に出た。その床にはまた扉がある。
上にあったものより古いわね。ここは認証じゃなくてパスワードなのか。答えを見つけるのは面倒だから無視して鍵を開ける。大真面目に入力する必要無いもの。
先に進むとさっきよりボロボロだ。補修した跡があるけど、それすら風化している。降りられなくもないけど、気を抜いたら転げ落ちそうだわ。
なんとか降りていくとまた小部屋に出た。やはり床に扉がある。
今度は魔力認証か。ま、無意味なんですけど。
扉を潜る度に足場は悪くなっていく。補修もドンドン増えていく。作り直した方がいいのではと思うほどだ。
片手では足りないくらい繰り返していくと、床ではなく壁に扉がある部屋に辿り着いた。
ここが最後? この先に桃源郷が広がっているのね。
最後の扉の鍵を開け、ゆっくりと扉を引く……ん? 開け辛いわね。引っかかるような感じで素直に開かない。
少し開いた扉の隙間からガラガラとなにかが崩れて入り込んできた。
隙間から覗いてみると、どうやら土砂で埋まっているようだ。もしかしてこの土砂を取り除かないと出られないの?!
次回、ここ掘れワンワン