第154話 手も足も首も出ない
これで偽浸食君も成仏してくれることでございましょう。
ああ、兄様……たとえどのようなお姿になられたとしても、このような不敬を働いたわたくしは許されるべきではございません。
どのような罰が相応しいでございましょうか。やはりここは兄様に罰していただくのが、正しき罰というものでございます!
「ならそこの壁に手を突いて尻を出せ」
「兄様! 罰を与えて下さるのでございますね」
「ほう。中々けしからん尻をしているな」
「兄様の温かいお手が、わたくしのけしからん尻を撫で回しているのでございます」
「無駄口を叩くな。叩いていいのは俺だけだ。そぉれ、ひとーつ!」
「ひゃん! ああ、ジンワリとした痛みと、兄様の温もりが感じられるのでございます」
「無駄口を叩くな。ふたーつ!」
「ひいっ。痛みが全身を駆け巡り、ゾクゾクするのでございます」
「みーっつ!」
「ひうっ。電流がピリリと流れるのでございます」
「よーっつ!」
「んっ。痛みよりも、喜びが湧いてきたのでございます」
「いつーつ!」
「ああっ。もっと、わたくしにお仕置きをしてほしいのでございます」
「ふむ。罰になっていないよだな」
「兄様っ、もっと、もっとわたくしの尻をぶつのでございます」
「俺様に命令するなぁーっ。パシーンッ」
「ひああっ。あ、ありがとうございますっ」
「ウムヤ、シカロワロワモラシ。ケロシラシヤ、シウロギャクマムエエウロワモラシ」
「ああっ、兄様! 左様でござ……」
「カシムカシム、ムナシケムエケムナムギャクマムサンムケムメナシナモケエナムウロワモラシ」
この男、先程浸食君の餌食にしてやったはずなのでございます。
「ロソム、エギャコカエギャマロシケシウウロケロモギャクマムラエナムウロワモラシ? ラシギャマムナムギャクムイチエモウムエウロワモラシ。ワロケロウエエメナシナムワモラシ?」
くっ、わたくしの〝鉄人形にお仕置きしていただくプレイ〟を見られてしまったのでございます。折角兄様のご尊顔をプリントした紙を鉄人形の顔に貼り付けてよりリアリティを出していたというのに、全て台無しなのでございます。
いえ、それよりもこの男……確かに浸食君が殺したはずなのでございます。何故生きていやがりやがられるのでございますか。
どちらにしても、目撃者は消す必要があるのでございます。浸食君、やっておしまうのでございますっ。
「イチムナムムウムナムウムウロワモラシ? ラエナシケロエウロラモラシ」
なっ、浸食君に浸食されないだと?!
「カシムカシムカシム! ムウムナムウロラロヤ、モカムイチロシケムエラモケエオツシイチエウムウロワモラシ。カエナラシソロシウムエウロワモラシ。ノロケシウロナモケエワモカムウムエウロワモラシ」
それどころか、逆に浸食君が食われている? そんなバカなっ。
む、これは毒素? しかもかなりの高濃度だと。
この反応……エイル様がお持ちになられておられた毒素の結晶と同じなのでございます。まさか、エイル様がこの者に手をお貸しになられたということでございますか。
どちらにしても、侵食君がお効きしないのでございますれば、鉄人形が直接やるしかないのでございます。
「はあっ!」
あら? 一発お殴り差し上げただけでございますのに、ミンチになりやがられたのでございます。幾らなんでも人として脆すぎるのでございます。こんな簡単なのでございましたら、最初からお殴り差し上げれば宜しかったのでございます。
「エケエウムヤ、エウムギャマシヤ、エケムケムヤ、シウロワモラシ?ムウムナム……ソムノムウウムウロワモラシ」
なに?! 無傷な男が隣の部屋から出てきたのでございます。
…………やはりクローンではなく、コピーでございましたか。となると厄介なのでございます。クローンと違い、コピーならば短時間で生成なさられやがるのでございましょう。コピー機を破壊しない限り、無限に沸いてきやがられそうなのでございます。
「ラエケモウケムヤ、ムワムワムエウエラモウラムウノエメソムケシケソシシオツソシシエナエギャクマロシケシウ、ソムヤ、シウロワモラシ」
隣の部屋から偽侵食君が出てきただと?! 自食して滅びたはず……まさかこの男同様にコピー体だとでも。
ならば、同様に無差別因子を……無いだと!
コピー体なら無差別因子が必ずあるはず。それが無いとはどういうことだ。この短時間で全ての細胞から因子を取り除くことなど不可能! それが可能だというのか。
「カシム! ムウムナム……イチシワムウムナモエケロシサンロラエソロシナロラエナムウロワモラシ? ラシワモウエウエラモウラムウノエメソムケシケソシシオツソシシエナエギャクマロシケシウカム。ケムウオツモウウエノロケシウロラエカムエケムナロウムメナシナムウロワモラシ。イチムオツシカムカシヤ、シエラエウナムエサンクチナロヤ、エケロイチシウロワモラシ」
来やがられるのでございますか!
……いえ、わたくしが潰した男の肉を取り込んでいやがられるのでございます。
「カシムカシム! ナシギャマエカムラロウロウムケムイチエウムウロワモラシ!」
今度はこっちに来やがられたのでございます。返り討ちにしてやるのでございます。
「はっ!」
やはりあの男同様、脆いようでございますね。後はすり潰して……なっ、飛散しやがられた偽侵食君がお集まりになって、元通りになりやがられたのでございます!
「カシムカシムカシム! ラロウウムイチロウロ、ケロシケムギャマムウムエウロワモラシ。ラムム、エケシウロワモラシ」
ふっ、幾ら触手を伸ばされようとも、全て叩き落として差し上げるのでございます。
「ラムサンムメナシナムワモラシ? ロサンムヤ、エウムウロワモラシ!」
関節の隙間から入り込みやがられたのでございますか!
内部での進行が早いのでございます。右腕を分離するのでございます。
「カシム! シワモサンロケエヤ、エカムウムラエナムウロワモラシ? カシムカシムカシム、エナシイチムワモワモケエヤ、シウロワモラシ?」
くっ、このままではコックピットまで到達されるのは確実でございます。
どうやらわたくしはここまでのようでございますね。全ての四肢と首・可動部を分離し、丸まるしか手はございません。
「カシム? イチムヤ、シケシウムメナシナムウロワモラシ? カシムカシム、イチシワムウムウロワモラシ。イチムヤ、シギャマロナロナロヤ、エケロイチシウロワモラシ!」
切り離した部位を……連絡が取れないのでございます。これでは外の状況が全く分からないのでございます。
「エヤ、エケロイチラシケエイチムギャクマムウムエウロワモラシ。イチムムエエウロワモラシ。ムウムナムケムヤ、ムモヤ、シイチロウロカムイチロシウムウエイチロウムエウロワモラシ。ウエラモウラムウノエエメソムケシケソシシオツソシシエナエギャクマロシケシウ、ウエギャマロシケシウサングチロシウロワモラシ」
兄様……どうかご無事で在られるのでございます。
次回、レア? ミディアム? ウェルダン? それともチャコール?