表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
137/193

第137話 全部知っている

「行くわよ」

「きゃっ」


 回っていた岩の半分が壁に向かって勢いよく飛んで行ったわ。うわ、壁が一溜まりも無く壊れて大きな穴が開いちゃった。

 役目を終えた岩がゆっくりと戻ってきて再び回り始めている。

 この人、かなり強い? 私に同じことが出来るかな。

 壁に開いた穴から彼女と共に廊下に出る。

 幾ら鉄人形(ゴーレム)で扉が埋め尽くされているからって、強引だなぁ。でもその廊下にも鉄人形(ゴーレム)が沢山居るわ。


「邪魔よ」


 彼女が手を前に伸ばすと、風が巻き起こって鉄人形(ゴーレム)が壁際に押しやられて道が出来た。

 あ、そうだ。


「ね、貴方の名前はなんて言うの? 私は子夜(しや)時子っていうの」

「…………」


 なにも答えず、出来た道を走り始めた。

 私もモナカに手を引っ張られる形で走り始めた。

 鈴と運ぶ君もちゃんと付いてきているようね。


「教えてくれないの?」

五十三(よみ)那夜(なよ)よ」


 那夜(なよ)? 何処かで聞いたような……

 あっ、確かエイルさんのミドルネームが〝ナヨ〟だったはず。


「へぇー、私の友達にもナヨって子が居るんだ。ミドルネームだけど」

「それ、誰に……いえ。友達……なの?」

「ええ。今は訳あって離れているけどね」

「そう……なんだ」

「そうなの。彼女を探して、連れ帰らないといけないの」


 連れてこられたときに通ってきた通路の扉が壊されている。

 やったのはナームコさんね。


「探しているの?」

「そ。行き先も告げずに居なくなったから、探すのが大変!」

「だったら縁を切ってしまえばいいのよ」

「そんなこと出来ないよ」


 階段を上った先の扉は壊されていなかった。

 壁みたいにこじ開けるのかと思ったら、普通に開いた。

 お義姉ちゃん? それとも那夜(なよ)さん?


「その子の方は縁を切って出ていったんでしょ。放っておけばいいわ」

「そうもいかないわ。うちの船長代理が〝絶対連れ戻す〟ってその子の母親と約束したからね」

「船長代理?」

「そ。〝船長はエイルだから〟って。あ、エイルっていうのはその子の名前ね」

「そう。代理……なんだ」


 あれ、顔は見えないけど、声がちょっと嬉しそうな気がする。


「色々探し回って、ここが最後の希望だったんだけど……」

「だけど?」

「…………ううん。その子、ここに居るみたいなの」

「どうして……そう思うの?」

「その子の親友……私のお姉ちゃんなんだけど、お姉ちゃんがね、ここに居るって言っているんだ」

「親……友?」

「そうよ。2人はとっても仲が良いの。だから必ずここに居る」

「そうなんだ……ふっ」


 今、笑った?


「ね、五十三(よみ)さんは――」

那夜(なよ)でいいわ」

那夜(なよ)さんはどうしてモナカを連れて行くの?」

「…………」

「モナカとはどういう関係なの?」

「…………」

「モナカとは何処で知り合ったの?」

「…………別に。面白い物が搬入されたって情報があったから、盗みに来ただけよ」

「盗みに?」

「ええ。私にとって有益な検体だから連れて帰るの。だから貴方には渡さないわ」

「検体……」


 久しぶりに聞いた気がする。

 モナカのことを検体って呼ぶ人を、私は1人しか知らない。


「そう。そういう意味では私はさっきの男と同じ。貴方の敵ってとこかしら」

「敵……とは思えないわ」

「どうして?」

「だって、お義姉ちゃんが騒がないんだもの。もし本当に貴方が敵なら、絶対騒ぐはずだわ」


 本当は別の理由なんだけどね。まだアイコンが溶けたままなのよ。……溶けているのはアイコンだけだよね。


「! 貴方のお姉さん、動けるの?!」

「え? ええ」

「じゃあやっぱりあれは……はっ、モナカ? モナカ!」


 急にどうしたのかな。

 でも〝動ける〟? やっぱりモナカのことを前から知っているんだわ。そしてお姉ちゃんとの関係も。


「モナカっ!」

「動けるのはお姉ちゃんじゃなくてお義姉ちゃんなの。だからまだモナカも動けないわ」

「……お義姉ちゃん?」

「えーと、お姉ちゃんが動けなくなったときに、お義姉ちゃんが動けるようになるんだって」

「つまり、非常時に動き出すバックアップ?」

「あー、そんなこと言ってたような気がする。私には2人の違いが分からないけど」


 やっぱりそうよ。この人、全部知っているんだわ。

次回、忍法影分身

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ